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蹄病を理解するー11 馬への白癬菌の感染経路

2020年03月09日 | 裸蹄管理

 人間の爪水虫の場合、爪への寄生は皮膚の水虫を放置した結果、と言われています。いきなり爪に白癬菌が住み着く可能性はかなり低い。皮膚の水虫からじわじわと爪に移行する。直に埋め込む可能性があるとすれば、やはり爪切り等々直に爪に触る道具でしょう。こういう道具を消毒もせんと共有すれば、シイタケ栽培と同じ、原木に菌を植え込むように、爪に白癬菌を植え込む結果になるわけです。

 馬や牛の場合、そういう効果を発揮しているのは、間違いなく削蹄師の皆さんが使っている道具でしょうね。だから、いきなり爪に白癬菌がたかってしまう。従来蹄病の原因が「よく分からん」と言われていたのには、それなりの根拠があります。まさか、削蹄や装蹄が蹄病の元だなんて!という思い込み(というか、社会常識がない、馬業界のヘンさ加減とも申しましょうか。または、特殊技能の持ち主である装蹄師や削蹄師さんに「ケチ」をつけているようで悪い、という忖度か)、人間のような「皮膚爪に移行」という従来の寄生拡大コースを取っていないのでピンとこない、試料を取ってもコンタミネーションばかりで、真菌はありそう、しかしそれが病原体と断定できない、というこの辺が理由でしょう。そのせいでモタモタしていたわけ。

 しかし、白癬菌感染のせいだよ~~、と断定すると、その結果起こる蹄病はこの図のようになるんです。

 

 この図には、元来別々の疾患と考えられてきている蹄病がほぼすべて網羅されてますが、成り立ちは全て同じです。

白癬菌が削蹄や装蹄によって蹄に刷り込まれる 
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白癬菌がケラチンを食い荒らしながら蹄に侵入し、微細な穴をつくる
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その穴に別の細菌が入り込んで二次感染を起こす

というパターン。蹄底だったら「挫跖」。被覆層と保護層の間なら「蟻道」。保護層と蹄真皮の間なら「白線病」。蹄叉なら「蹄叉腐乱」。蟻道が繋までいっちゃったら「蹄膿瘍」。白線病が蹄全体に広がってきて「蹄葉炎」。細菌は真菌よりうんと小さいので、白癬菌がこしらえた空洞に簡単に入り込めるんですね。

 こうやって整理すると、非常に分かりやすい。証拠?こないだの真菌培養が一番ですが、更にというなら、蹄の切片を電顕で調べてほしいんです。ぜひ、大学にお願いしたい。卒論なんか、どうでしょう?大発見になりますよ。もう一つ、臨床家としての最大の証拠は

「抗真菌剤の経口投与による治療でちゃんと改善して、今やほぼ治った」

に尽きます。こっちは臨床家でありまして、研究者じゃないもんで、治ればOK。更に言うなら、症例数を増やしたくてしょうがないんですけども。治療に「偶然」はありません。「奇跡」もない。目論見が当たった、だけ。

 前回の動画でぴょんぴょん障碍飛越をしているのが、治った馬です。去年の6月ごろはもう蹄葉炎だ、このままだと蹄が脱落して安楽死だぞとかなんとか馬の先生に脅されたんですがね、なんの治療の指針も出してこないもんだから、呆れて自分で治療方針を立てて抗真菌剤で治療した結果がこれ。

 ところで、蹄の脱落ですが、これは、人間の爪水虫でも起こることです。爪全体が白癬菌に侵されてしまうと、それに対する免疫反応の結果として脱落が生じる。勿論馬の場合は、こんなことが起きてしまえば命に係わるわけですが。

参考:白癬の予防とガイドラインに基づく治療方法~感染症とリハビリ~ 



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