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時効期間満了前の時効の援用は?

2005年11月03日 | 民法(総則)
 時効期間満了前に、債務者が債権者に対して、誤って債務の時効を援用(民法145条)したことは、“債務の承認”(同法147条3号)になるのでしょうか?
 
 ここで、時効とは、「一定期間継続し平穏に成立している事実状態を維持するために、その事実状態に即した権利関係を確定させる制度」(『コンサイス法律用語辞典』三省堂、2003年12月20日発行)です。
 また、時効の援用とは、「時効によって利益を受ける者が、時効の利益を受ける意思を表示すること」(同書)です。

 私見は、まず、時効の援用としては無効です。なぜなら、時効の援用という法律効果を生じさせるには、まず、第一に、時効を援用したこと。第二に、時効期間が経過したことの二つの要件が必要です。ここでは、時効期間が経過していませんので、時効の援用としては、無効です。

 次に債務の承認にもなりません。なぜなら、債務者には、まず第一に、債務を承認する意思がなく、第二には、その行為によって債権者は、債務者が債務を支払ってもらえると理解するようなことはないからです。

 ただし、債権者に債務を承認する意思の表示ではありませんが、債権者に債権の存在を気づかせ、債務者に対して債権を“請求”(同法147条1号)するきっかけを与えることになりますから、あまり実益のない議論です。
 ただ、次回に書きます「意思表示とは何か?」を考えるにはあたって、おもしろい題材だと思うのです。
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