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ただの映画好き日記

観た映画と読んだ本の自分用メモ。

楽園のカンヴァス / 原田マハ 著

2013-01-20 | 本 女性作家


  楽園のカンヴァス
 
  原田 マハ 著     新潮社 / 2012.1


  ニューヨーク近代美術館(MoMA)の学芸員ティム・ブラウンは、
  スイスの大邸宅でありえない絵を目にしていた。
  ルソーの名作『夢』とほとんど同じ構図、同じタッチ。
  持ち主の富豪は真贋を正しく判定した者に作品を譲ると告げる。
  好敵手(ライバル)は日本人研究者、早川織絵。リミットは七日間――。
  カンヴァスに塗り籠められた真実に迫る渾身の長編!
  





いやぁ~、面白かったです!
最後は自分でも驚きましたが、結構泣きました。
ティムの情熱があまりにも眩しくて、ルソーに捧げた人生もさることながら、15年以上もルソーを介して織絵と繋がっていのかな~と思えて、そのルソーの存在に感動しました。

最初は、絵画といえば、『山田かまち水彩デッサン美術館』にしか行ったことのない、絵画には全く興味のない私がどこまでついていけるんだろう?と思いましたが、数々の謎たちに惹き付けられてルソーやピカソに無知でも面白さが十分伝わってきました。
逆に何も知らないからこそ、これが本当だったら?と素直に物語に入っていけたのかなとも思います。
バイラーが所有する『夢をみた』ではなく、MoMAにある『夢』の下にブルー・ピカソがあったとしたら?と考えたらワクワクしますが、こういうことは既に調査・研究されていてある程度の事情を知っていたらきっと面白さはないだろうなと思います。
知らないからこそ入り込める面白さがあり、しかも、わざと簡単に描いているというか、あまり専門ぶっていないところもよかったと思います。
いかに読みやすく、いかに入り込みやすくを考え、ルソーに興味を持ってもらうために解りやすく書いたのかもしれないと感じられ、登場人物の情熱と更に著者の情熱も感じられると思います。

実は、インターポールのジュリエットがバイラーの孫娘だった…という設定は、少女漫画的なチープな設定だと思いました(ついでに言えば、織絵の娘の存在も、織絵のイメージとちょっと違うな~と)。
でも、その後に続くんですね、孫娘という存在の大きさが!
それが判った時には、いやはや、先程チープだなんて思ってしまい申し訳ない…と心から思いました(笑)。

でも、ふと思ったことがあったのですが、ヤドヴィガがルソーのモデルになった日、ルソーとヤドヴィガは一つになった…という下りがあり、その後、今まで妊娠できなかったヤドヴィガが妊娠したので、きっと、ルソーの子供かな?と下世話なことを思ったのですが、ここをハッキリして欲しかったかな~と思います。
となると、ジュリエットはルソーの孫ということになりますしね。
そこをハッキリさせないのがロマンチックなんでしょうけど…。

物語『夢をみた』の作者は、『夢』『夢をみた』のヤドヴィガ・バイラーであることが判明し、ヤドヴィガの夫であるジョゼフがバイラーだったのには驚きました(きっかけとはいえ貴重な本に涙を落とすのはどうかと思いますが…)。
生存しているバイラーの95歳という年齢がルソーの存在が本当に近代だったんだな~と感じさせられ(当たり前ですが)、バイラーがただの美術の蒐集家ではなくルソーが売れない頃からその才能を愛して止まない貴重な存在だったと判り、バイラーに人間味を感じられたことがとてもよかったと思いました。

そして、そして、物語『夢をみた』の各章の末尾に書かれていたキャピタル…。
P-I-A-S-S-0 残る一文字は、ピカソの「C」? いやいや、ティムが言うように情熱の「P」かもしれないけれど、その前に、ヤドヴィガがどうしてそんな暗号を残す必要があったのか?と、ヤドヴィガにこのような小細工を考えつくかな?と、ちょっと疑問というか、瞬時に現実に引き戻されてしまった残念な謎だったかなと思います。
最後は盛り上がり過ぎてちょっと欲張り過ぎちゃったかな?ここは答えを出してしまった方がいいかもしれませんね。

この暗号的なものには若干、残念さを感じましたが、全体としてとても面白いお話だったと思います。
美術という馴染みのない世界だったり、ルソーやピカソという芸術家の存在を垣間みれたことはとても新鮮でした。
物語『夢をみた』で仕掛けた謎もとても興味深かったです。

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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おすすめ (shin)
2013-02-14 08:42:57
はじめまして。
私もこの本を読んで面白かったので、職場の同僚に貸しました。その同僚は、少し前にMOMAに行ってきたところだったのですが、「夢」を見てないそうです。非常に残念がってました。
izumiさんは「映画好き」とのことなので、同じ原田マハさん著作の「キネマの神様」も是非読んでみてください。
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shinさんへ (izumi)
2013-02-15 21:11:41
はじめまして!
ご来訪、コメント、ありがとうございます。
面白かったですね!
せっかくMoMAに行かれたのに残念ですね~。
このお話を読んでから実際に目にしたらワクワクするでしょうね。
おすすめ、ありがとうございます。
ぜひぜひ読んでみたいと思います。
ありがとうございました。
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