野田前総理と安倍新総理の党首討論での約束でもあるので、自民党は、定数削減と選挙制度見直しに向けて統括本部を設置し、1月の通常国会で議論することにしているという。
議員や識者の中には、「小選挙区では大量の議員が一挙に入れ替わり、政治が不安定になる。議員が代わっては、政治主導も発揮しにくく、外交力も弱まる。だから、中選挙区制を復活すべきだ」との意見もあるようだ。
しかし、このような議論は、小選挙区制を採用した理由を忘れている。小選挙区制の利点は、政治の選択すべき争点を集約化し、その争点で勝った政党が安定多数を取って、その政策を実施しやすくなることだった。
中選挙区制では、同じ政党から何人もの議員が出馬する。これは党首の力を弱める。小選挙区制だからこそ、一つの政党からは一人の候補者しか出馬できず、最終的に公認権を持つ党首の力が強まる。またここで政策を集約できる。
何人も出馬するのでは、政党と言いながら政策が集約できない。また、同じ政党の議員が、当然ながら同じ政策を唱えるのでは、選挙民としてどちらに投票したら良いか分からなくなる。結果として、選挙民の政策への関心が低下し、議員の選挙民に対するサービス競争で選挙の勝敗が決まるようになってしまう。
■中選挙区制の復活より「一票の格差是正」を
政策は官僚任せで、政治が何も選択しなくてもよいのなら、それでもよいが、そうはいかないから小選挙区にしたということではなかったか。90年代以降、日本経済は停滞し、国際的地位も低下し、中国の台頭は著しいという状況にある。政治が何も選択しなくてよいという状況にはない。
小選挙区制は、投票率のわずかな変化が議席の大きな差異を生む。それが大きすぎるというのではあれば、比例の議席を増やすという手もある。議員が変わりすぎるというのであれば、選挙民には不評だった、小選挙区の候補が比例で復活する制度も悪くないことになる。
今回の選挙でも、不明確ながらも政策の争点があった。自民党が金融政策を焦点にして選挙を戦ったこともその一つだ。これまで、政治家は、財政政策には関心があったが、金融政策には関心がなかった。
財政政策とは地元に橋や道路やホールを作ることだが、金融政策の効果は、じわじわと効いて景気がよくなったり、悪くなったりするものだ。今までの自民党の政治家は、それがどのように効くのか良くわからないので、日銀官僚に任せておけということだった。ではなぜ今回、安倍総理は金融政策に焦点を当てたのか。
それは総理が、金融政策の効果は強力で、その失敗によって、自民党は政権から追放されたと考えるようになったからだ。1990年代からの長い経済停滞が、国民の自民党離れを招いたと考えたからである。
中選挙区制であれば、このような争点が明確になっただろうか。自民党の中にも、特に有力議員を中心として、金融政策は日銀官僚に任せておけばよいという人も多かった。そのような議員が、別々に自分の考えを述べていたら、選挙後も一貫した政策をとりにくくなっただろう。
ただし、今回の争点、金融政策は、政策の集約としてはさほど困難なテーマではなかったといえる。抵抗勢力となった日銀の政治力など大したことはないからだ。今後の日本は、もっと強力な抵抗勢力に打ち克って、国の進路を決めていかなければならない。
台頭する中国、少子高齢化、国を開くより規制や保護で守ってくれという産業、それらに抗して、日本は、開かれた国となるべきである。そのためにも、小選挙区制の、政策の争点を作り、総理のリーダーシップを強める力を生かしていくべきだ。選挙制度改革であれば、中選挙区制の復活より、一票の格差の是正に力を入れるべきである。
もっとも、総理が誰であれ、小選挙区制が総理のリーダーシップを高めるということを認識した総理が中選挙区制に戻すはずはない。小選挙区制に反対していた小泉純一郎元総理が、小選挙区制の利点をもっとも利用した総理となったのだから。原田 泰(早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員)
中選挙区制と言うのは、1選挙区から多数の立候補者が出て、複数の議員が当選する仕組みで、ついこの前までそう言う仕組みでした。
自民党が強かった時代、例えば3人区であれば、1人はベテランの大物と呼ばれる議員で、もう一人は同じ自民党の若手あるいは中堅、もう一人は他の政党・・と言った感じだったように記憶しています。
中選挙区だと大きな変化は起こり難いので、今回のような民主党の大勝、続いての自民党の大勝と言った、劇的な政権交代はありえません。
小選挙区が駄目だという理由は、その辺にあるのでしょうが、しかし、政権交代により国民の目に見える形となったものはたくさんあります。その功罪は色々でしょうが、しかしそれも重要な事です。
議員や識者の中には、「小選挙区では大量の議員が一挙に入れ替わり、政治が不安定になる。議員が代わっては、政治主導も発揮しにくく、外交力も弱まる。だから、中選挙区制を復活すべきだ」との意見もあるようだ。
しかし、このような議論は、小選挙区制を採用した理由を忘れている。小選挙区制の利点は、政治の選択すべき争点を集約化し、その争点で勝った政党が安定多数を取って、その政策を実施しやすくなることだった。
中選挙区制では、同じ政党から何人もの議員が出馬する。これは党首の力を弱める。小選挙区制だからこそ、一つの政党からは一人の候補者しか出馬できず、最終的に公認権を持つ党首の力が強まる。またここで政策を集約できる。
何人も出馬するのでは、政党と言いながら政策が集約できない。また、同じ政党の議員が、当然ながら同じ政策を唱えるのでは、選挙民としてどちらに投票したら良いか分からなくなる。結果として、選挙民の政策への関心が低下し、議員の選挙民に対するサービス競争で選挙の勝敗が決まるようになってしまう。
■中選挙区制の復活より「一票の格差是正」を
政策は官僚任せで、政治が何も選択しなくてもよいのなら、それでもよいが、そうはいかないから小選挙区にしたということではなかったか。90年代以降、日本経済は停滞し、国際的地位も低下し、中国の台頭は著しいという状況にある。政治が何も選択しなくてよいという状況にはない。
小選挙区制は、投票率のわずかな変化が議席の大きな差異を生む。それが大きすぎるというのではあれば、比例の議席を増やすという手もある。議員が変わりすぎるというのであれば、選挙民には不評だった、小選挙区の候補が比例で復活する制度も悪くないことになる。
今回の選挙でも、不明確ながらも政策の争点があった。自民党が金融政策を焦点にして選挙を戦ったこともその一つだ。これまで、政治家は、財政政策には関心があったが、金融政策には関心がなかった。
財政政策とは地元に橋や道路やホールを作ることだが、金融政策の効果は、じわじわと効いて景気がよくなったり、悪くなったりするものだ。今までの自民党の政治家は、それがどのように効くのか良くわからないので、日銀官僚に任せておけということだった。ではなぜ今回、安倍総理は金融政策に焦点を当てたのか。
それは総理が、金融政策の効果は強力で、その失敗によって、自民党は政権から追放されたと考えるようになったからだ。1990年代からの長い経済停滞が、国民の自民党離れを招いたと考えたからである。
中選挙区制であれば、このような争点が明確になっただろうか。自民党の中にも、特に有力議員を中心として、金融政策は日銀官僚に任せておけばよいという人も多かった。そのような議員が、別々に自分の考えを述べていたら、選挙後も一貫した政策をとりにくくなっただろう。
ただし、今回の争点、金融政策は、政策の集約としてはさほど困難なテーマではなかったといえる。抵抗勢力となった日銀の政治力など大したことはないからだ。今後の日本は、もっと強力な抵抗勢力に打ち克って、国の進路を決めていかなければならない。
台頭する中国、少子高齢化、国を開くより規制や保護で守ってくれという産業、それらに抗して、日本は、開かれた国となるべきである。そのためにも、小選挙区制の、政策の争点を作り、総理のリーダーシップを強める力を生かしていくべきだ。選挙制度改革であれば、中選挙区制の復活より、一票の格差の是正に力を入れるべきである。
もっとも、総理が誰であれ、小選挙区制が総理のリーダーシップを高めるということを認識した総理が中選挙区制に戻すはずはない。小選挙区制に反対していた小泉純一郎元総理が、小選挙区制の利点をもっとも利用した総理となったのだから。原田 泰(早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員)
中選挙区制と言うのは、1選挙区から多数の立候補者が出て、複数の議員が当選する仕組みで、ついこの前までそう言う仕組みでした。
自民党が強かった時代、例えば3人区であれば、1人はベテランの大物と呼ばれる議員で、もう一人は同じ自民党の若手あるいは中堅、もう一人は他の政党・・と言った感じだったように記憶しています。
中選挙区だと大きな変化は起こり難いので、今回のような民主党の大勝、続いての自民党の大勝と言った、劇的な政権交代はありえません。
小選挙区が駄目だという理由は、その辺にあるのでしょうが、しかし、政権交代により国民の目に見える形となったものはたくさんあります。その功罪は色々でしょうが、しかしそれも重要な事です。
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