増える「尿路結石」
働き盛りの男性に多い尿路結石。夜遅くまでの飲食は要注意だ (本文とは関係ありません)(写真:産経新聞)
突然の激痛で気づくことが多い尿路結石。患者は40年前の3倍に上り、男性は働き盛りの世代に、女性は50代以降にそれぞれ多い疾患だ。以前に比べ、治療の選択肢が増え、結石の大きさによっては日帰り治療も可能となっている。患者増加は食事の欧米化が関連しているとされ、予防や再発防止に食生活の改善などが重要だ。(平沢裕子)
◆男性は7人に1人
尿路結石は、腎臓から尿道までの尿路に結石ができる病気。石ができる場所によって血尿や激しい痛みなどの症状が現れるが、石が大きくても無症状の人もいる。10万人当たりの患者数が、昭和40年の44人から平成17年は134人と3倍に増加。男性は30~50代、女性は50代以降に多い。男性は7人に1人、女性は15人に1人が生涯のうちにそれぞれ一度はかかるとされる。
国際医療福祉大三田病院泌尿器科の荒川孝部長は「CT(コンピューター断層撮影装置)検査など診断技術の向上もあり、単純に比較はできないが、特にこの10年で患者が急増している。背景に食事の欧米化があるが、働き盛りの男性は肉食や飲酒量が多いことも関係しているのではないか」と指摘する。
石の成分は、シュウ酸カルシウムやリン酸カルシウム、尿酸など。動物性タンパク質や脂肪、塩分、糖分を取り過ぎると結石ができやすいとされ、尿酸値を上げるプリン体の多い食生活も問題だ。
治療は、結石の場所と大きさによって異なる。11年ぶりに改訂された「尿路結石症診療ガイドライン」(金原出版)によると、結石の大きさが10ミリ未満の場合、体の外から結石に衝撃波を照射するESWL(体外衝撃波結石破砕術)という方法が勧められる。石を細かく砕いて自然に石を排出させる方法で、麻酔がいらず、外来治療が可能だ。
10ミリを超える場合、ESWLに加え、膀胱(ぼうこう)側から内視鏡を尿管に挿入し、レーザーで結石を破砕する経尿道的結石破砕術という方法が推奨される。これは麻酔が必要で入院での治療となる。
◆メタボの前触れ?
結石が大きい場合、かつては開腹手術しか治療法がなかった。それだけに、体への負担が少ない治療法の普及は患者にとってメリットだが、一方で再発予防への取り組みが軽んじられてきたとの声もある。治療した患者の約半数が5年以内に再発しているためだ。
「尿路結石は生活習慣と関連している。再発は、石が出たことに安心して治療前と同じ生活習慣を続けることによるともいえる。再発防止に食生活の改善など生活習慣の見直しは不可欠」と荒川部長は話す。
30代など若い世代の尿路結石の発症は、将来、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を発症する警鐘ともいわれ、再発予防にしっかり取り組むことが求められる。
尿路結石を放置すると、最悪の場合、腎臓摘出もありうる。健康診断などで結石を指摘された人は痛みがなくても1度医療機関で受診し、腎機能の状態をチェックすると安心だ。
◆水分摂取は1日2リットル以上
再発予防に有効とされるのは水分摂取。ガイドラインでは、食事以外に1日2リットル以上の水分を取るように勧めている。肉ばかりの偏った食事はやめ、塩分は控えめに。夕食は、就寝時間の4時間前に食べ終えるように工夫する。プリン体の多い食品も食べ過ぎない。
シュウ酸の多い食事や飲料の取り過ぎも問題。ただ、シュウ酸の多いホウレンソウやタケノコなどの野菜は、ゆでることでシュウ酸が減る。毎食食べるのでなければ気にする必要はない。お茶や紅茶、コーヒーもシュウ酸が多い。カルシウムと一緒に摂取すると、腸内でシュウ酸とカルシウムが結合し便として排出されるので、低脂肪乳と合わせて飲むのがおすすめだ。