四月大歌舞伎を21日に歌舞伎座で観てまいりました。まだ三月の南座の感想も書いてないけど(汗)、ひとまず先にこちらを。
今月は信二郎さんの錦之助襲名興行となっています。信二郎さんといえば、私が好きなのは「十二夜」の大篠左大臣。キリリとした端正な顔立ちで凄く美しい。個人的には、信二郎さん改め錦之助丈を観るなら今月より7月の「十二夜」かな~なんて思っとります。今月も良かったですけど。
今回は歌舞伎座では久々の1階席…まあ20列目の2等席だったんですが、この辺りの位置は初めて。すぐ上に2階席があって天井が低いので妙な圧迫感がありますね。視界も狭まってる感じで歌舞伎座の大きさが感じられなかったのでちょっと残念。まあ座席は3階よりも多少の余裕があるのでいいんですけどね。
『當年祝春駒』
1幕目は華やかな舞踊。歌舞伎では定番の曽我物を舞踊化したものです。
獅童君の曽我五郎は、やはりこういう荒事の役はよく似合いますね。でも花道から出て来る時、床板をドンドンと踏みならしながら出る場面はちょっと迫力不足だったような、あまりいい音が出てなかったように思えました。なんだろう。ビシッと真を打つような音じゃないんですね。何かこう音が少し抜けてるような感じで、やっぱりただ踏みならせばいい音が出るってわけでもないんですかね。ちょっと惜しかった。
曽我十郎の勘太郎君はすごく美しかったです。十郎って五郎に比べると大人しく、いつも殺気立つ五郎をまあまあまあって抑えてるだけだから、ちょっとつまらない役だよなと思ってたんですけど、品があって良かったです。あとやっぱり一斉に踊ってると目を惹きますね(*^_^*) なんか先月の北条義時といい、1月の右京といい、ここ最近は勘ちゃんが美しくて艶っぽいです。
七之助君は衣装が艶やかでしたが、ちょっとメイクがきついように思えました。舞鶴てあんな吊り上がった顔だっけ? 夜の部のおなぎのほうが美しかったなあ。
踊りで勘ちゃんの次に目を惹いたのは、歌昇さんの息子の種太郎君。坊さん姿でしたが女の子みたいに可愛くて、踊りが上手い! まだ高校生ぐらいですよね。将来が楽しみ♪
若手ばかりの配役の中で、敵役工藤祐経の歌六さんがビシッと中央で貫録たっぷりに締めていました。
残念なのはたった15分程で終わってしまうこと。短い!もっと観たい!
『頼朝の死』
「元禄忠臣蔵」でお馴染の真山青果作品ですね。この人のホンはセリフがとにかく多いです。新歌舞伎演出はあまり好きじゃないんですが(暗転が多くお囃子もないので眠くなる)、セリフが多いのであまり退屈せずに済みました。
題名のとおり、頼朝の死をめぐる話なのですが、頼朝さんは愛人に逢いに行こうとした深夜、不審者と間違えられて家来に殺されるというなんとも情けない死に方をしちゃったんですね。その事実を知らないのは息子の頼家だけ。頼家は死の真相を知りたくて、いろんな人に「なんで父上は死んだの?教えて教えて!」と聞くものの、そんな恥ずかしい死に方を誰も言えるわけもなく、母ちゃんの政子まで、「アンタこれ以上追及したら許さんよ」と薙刀を向けられる始末(笑) 頼家さんは18歳ぐらいなんですけど、最後はうえ~んと赤子のように泣いて幕。
まあようするに殿の面子とお家の面子を護ったという話なんでしょう。政子のセリフに「家は末代、人は一世」という言葉がありました。皮肉にも源氏の家はこの頼家さんでは背負えずに北条の時代へと移ってゆくのですけどね。
梅玉さんは若手の役をやっても違和感ないほど、声が若々しいですよね。去年「狐と笛吹き」を観た時も思いましたが、とても60歳とは思えません。ファザコンでちょっと頼りないウジウジ君な頼家がよくハマってました。
福助さんの小周防はとても健気で可愛らしかったです。福助さんって若い娘を演る時の声がすごく可愛いと思う。泣きの演技をするとちょっと男っぽい声が出てくるんですけど(笑)
内気な小周防を支える侍女は芝のぶちゃん。ちょっといつもと違って貫録がある雰囲気でした。セリフも多く嬉しかった~。
重保の歌昇さんは主君を殺してしまった嘆きが凄く良かった。今まであまり歌昇さんってどんな役をやってたかとかあまり印象になかったんですけど(スミマセン)、この芝居を観て凄くいいなあと思いました。熱演でしたね。
芝翫さんは圧巻。政子ってもちろんものすごく貫録のある人ですけど、芝翫さんの迫力はものすごかったですね。ただ黙って座ってるだけでも存在感あります。だからよけいに息子がバカ息子に見えちゃう。そして舞台には出てこないけど頼朝さんも(^^;薙刀取り出した時は笑ってしまいましたけどね。
『男女道成寺』
昼の部で一番盛り上がったのはやはりこれでしょう。道成寺は一般的な京鹿子と去年やった玉三郎さんと菊之助君の二人道成寺は観たことがありましたが、男女~は初めて。まさかこんなに笑える道成寺だとは思いませんでした。
二人道成寺と同じく、最初は二人の花子が出てくるのですが、勘三郎さんはもちろん可愛らしく娘姿が決まってますが、隣の仁左衛門さんが…女形なんてめったにやらないから、やはりどうしても違和感。でも思ってたより綺麗だったかも(笑)でも仁左衛門さんはやっぱりデカイですね~(^^;
二人より先に登場した所化さん達は可愛らしい。獅童君を先頭に、勘ちゃんに七之助君などわらわらわらわら出てきて、そのまま持って帰りたいほど可愛らしいです。で、その所化さん達に仁左衛門さんの花子が実は男だということがバレるのですが、烏帽子が脱げて頭は男髷だし、ガニマタだしそりゃバレるわ(^^; あげくに「楽屋で着替えてきます」なんてセリフまで出てくるんだから爆笑。道成寺って怨念たっぷりで迫力があるから、きらびやかな舞いでもちょっとダークな感じだと思ってたんですけど、男女版は面白すぎでした。
宣言通り、楽屋で着替えて戻ってきた仁左衛門さん(笑)は狂言師左近となり、鞠つきの舞を。でも途中で鞠がどっかいっちゃって、頭を垂れてた所化の坊主頭が鞠だと思ってバシバシついてみたり(笑) 左近は花四天を相手に立ち回りもあるので、花子がメインかと思いきや、見せ場がたっぷりありました。今年9月の錦秋公演では勘ちゃんと七之助君がこの男女道成寺をやるので、おそらく勘ちゃんが左近なんだろうけど、これは結構楽しみになりましたね。
そして花子の勘三郎さんはもうただただ見とれてました。勘三郎さんだと美しいというよりはとにかく可愛らしい。獅童君と勘ちゃんに手を引かれて出てきて、恥じらいを見せる場面なんかは、「鏡獅子」の弥生ちゃんのようで本当に可愛かった(*^_^*)今回は勘三郎さんならではの演出ということで、「手踊り」もあるのですが、やっぱり手の動きが美しい! ごまかしがきかない踊りでこれだけ見せられるのは凄いですね。手が本当に女性の手に見えるんですよ。
仁左衛門さんと二人で並んで踊る場面が少なかったけど、二人揃うとやっぱり華やか♪ お二人の「華」というのは本当に凄いなと思いました。どっちも負けてないし、背景の桜にも負けてません。
短かったけど、勘ちゃんと七之助君で踊る場面もあったし、花傘踊りではやっぱり種太郎君は目を惹いたし、全体的にとにかく飽きさせず面白く、とても美しい舞踊でした。
『菊畑』
やっと今月の主役である信二郎さん改め錦之助さんの登場です。襲名公演ってなかなか当人は出て来ないんですよね(^^;
桜のあとは菊という、一気に半年ぐらい季節が先に行ってしまいましたが、舞台上に埋め尽くされた菊の花もなかなか綺麗でした。牛若丸と鬼一法眼という、これまた鎌倉物(正確にはまだ鎌倉じゃないけど)。歌舞伎ではこの時代の作品が本当に多いですね。錦之助さんの他には富十郎さんと吉右衛門さん、それからお兄さんの時蔵さんと襲名公演を彩る豪華俳優陣でした。息子の隼人君も居たし。
錦之助さんの牛若丸は美しかったです。若い役も似合いますね。細くて美しくて、時蔵さんのように女形もすごく似合いそうなんだけど、ほとんどやらないですよね。インタビューでも女形は苦手だと言ってたし残念。
劇中では襲名口上もありました。演じてる途中に不意に役から離れて素に戻り、口上の場面になるのが面白いです。こんなの歌舞伎ぐらいでしかやらないんじゃないでしょうか。
富十郎さんは足を痛めてるようでしたが、貫録たっぷり。ただ富十郎さんの後ろに控えてる落ち着かない黒子の一人がすごく気になりました。どうやら富十郎さんの息子の大ちゃんが務めてたみたいなんですけど、あっちへフラフラこっちへフラフラ(^^;もう一人の黒子さんが彼のお守り役のようでしたが、黒子が黒子に袖引っ張られてるのは初めて観ました。70でできた子だから富十郎さんも凄く甘やかしてるのかなあ? 他の子役が小さいながらも皆きっちり務めていただけに、黒子なのに目立ってしまってるのはいかがなものかと、ちょっと思いました(黒いから逆に目立つというのもありますね)。しかももう公演も終盤だというのにあの状況だったということは、このひと月ずっとあの状態のまま…だったんでしょうね。舞台に乗せるなら、もう少し落ち着けるようになってからでも良かったのでは?とちょっと思いました。
昼の部はこれで終わりですが、夕食を食べた後、夜の部の最後の演目「魚屋宗五郎」を幕見してきました。土曜だし、今月最後の週末だから混むかなと思ってたけど、なんとかギリギリ座れてホッ。4階なので終始双眼鏡での鑑賞となりましたが、とても面白かったです。
でも序盤は宗五郎の妹が殺されてしまい、皆がそれを嘆いてる葬儀の場面ですからすごく暗いんですよ。しかし妹の同僚のおなぎが持ってきた弔い酒を、ずっと禁酒していた宗五郎が、今夜だけは飲まなきゃやってられねえ、と禁を破って一杯だけ飲んだ途端、大好きなお酒なだけにもうやめられなくなって、周りが止めるのも聞かず、どんどん飲んでしまい、ついには角樽が空っぽ(笑) 急性アル中で死ぬよ~と思いましたが、そのまま宗五郎は酔った勢いで、妹を殺した殿様の家に殴り込みに行くというとにかく破天荒なお話。
勘三郎さんの宗五郎は酔っていく様がリアルで素晴らしかったですね。どんどん目が据わっていって怖いんだけど美味そうに飲むんですよ。着物もはだけ、おみ足全開、ふんどしも全開の酔っ払い親父…とても昼の可愛らしい花子と同じ人とは思えませんでした(笑)
宗五郎の妻、おはまは時蔵さん。これまた昼の「菊畑」の皆鶴姫と同じ人とは思えないぐらい、庶民的なおかみさん姿なんですけど、時蔵さんもこういう役上手いですね。去年の團菊祭で観た「権三と助十」のおかみさん役で、菊五郎さんにど突かれて、ドリフのコントのように派手に転びまくってた姿に、こんな役もやっちゃうのかと圧倒されたんですが(笑)、今回も勘三郎さんに吹っ飛ばされつつ頑張ってました。
勘太郎君の三吉は今回が初役。姿形は去年の「決闘!高田馬場」の又八を思い出しました。勘ちゃんの声は4階でもすごく聞き取りやすい声なんですね。小さく呟いてるような声ですら、ちゃんと聞こえてきます。いい声だなと思いました。他の人が芝居をしている間も勘ちゃんを双眼鏡で覗いたりしてたのですが、ただ隅に座ってるだけでも、きちんと三吉として芝居してるんですよね。当たり前のことだけど、ものすごく自然でした。いずれはこの酔っ払い親父の役も演るんだろうなあ(笑)
七之助君のおなぎは綺麗でしたね~♪ おかしかったのは最初は妹が殺された真相を伝えに来てくれたので、宗五郎に手厚く歓迎されてたのに、酔っぱらった宗五郎には「おたふく!」とか言われちゃって(笑) 申し訳なさそうに「お酒じゃなくお菓子を持ってくれば良かった」というセリフには大笑いしました。
殿様の屋敷に殴り込んでからは笑いの中にも涙あり…でした。酔いの覚めた宗五郎が空の妹に向かって語りかける様は泣けましたし、無礼者が来たにも関わらず、宗五郎をかばってくれた我當さんの家老の寛大っぷりも良かった。それから最後に頭を下げた錦之助さんの殿様も。この人が頭を下げちゃあ許しちゃうんだろうなと納得。最後は大団円で、襲名興行の最後の幕としてとても相応しい演目だったと思いました。
来月は團菊祭です。夜の部の萬次郎さんの「女暫」と三津五郎さんの「三つ面子守」が楽しみ~♪
今月は信二郎さんの錦之助襲名興行となっています。信二郎さんといえば、私が好きなのは「十二夜」の大篠左大臣。キリリとした端正な顔立ちで凄く美しい。個人的には、信二郎さん改め錦之助丈を観るなら今月より7月の「十二夜」かな~なんて思っとります。今月も良かったですけど。
今回は歌舞伎座では久々の1階席…まあ20列目の2等席だったんですが、この辺りの位置は初めて。すぐ上に2階席があって天井が低いので妙な圧迫感がありますね。視界も狭まってる感じで歌舞伎座の大きさが感じられなかったのでちょっと残念。まあ座席は3階よりも多少の余裕があるのでいいんですけどね。
『當年祝春駒』
1幕目は華やかな舞踊。歌舞伎では定番の曽我物を舞踊化したものです。
獅童君の曽我五郎は、やはりこういう荒事の役はよく似合いますね。でも花道から出て来る時、床板をドンドンと踏みならしながら出る場面はちょっと迫力不足だったような、あまりいい音が出てなかったように思えました。なんだろう。ビシッと真を打つような音じゃないんですね。何かこう音が少し抜けてるような感じで、やっぱりただ踏みならせばいい音が出るってわけでもないんですかね。ちょっと惜しかった。
曽我十郎の勘太郎君はすごく美しかったです。十郎って五郎に比べると大人しく、いつも殺気立つ五郎をまあまあまあって抑えてるだけだから、ちょっとつまらない役だよなと思ってたんですけど、品があって良かったです。あとやっぱり一斉に踊ってると目を惹きますね(*^_^*) なんか先月の北条義時といい、1月の右京といい、ここ最近は勘ちゃんが美しくて艶っぽいです。
七之助君は衣装が艶やかでしたが、ちょっとメイクがきついように思えました。舞鶴てあんな吊り上がった顔だっけ? 夜の部のおなぎのほうが美しかったなあ。
踊りで勘ちゃんの次に目を惹いたのは、歌昇さんの息子の種太郎君。坊さん姿でしたが女の子みたいに可愛くて、踊りが上手い! まだ高校生ぐらいですよね。将来が楽しみ♪
若手ばかりの配役の中で、敵役工藤祐経の歌六さんがビシッと中央で貫録たっぷりに締めていました。
残念なのはたった15分程で終わってしまうこと。短い!もっと観たい!
『頼朝の死』
「元禄忠臣蔵」でお馴染の真山青果作品ですね。この人のホンはセリフがとにかく多いです。新歌舞伎演出はあまり好きじゃないんですが(暗転が多くお囃子もないので眠くなる)、セリフが多いのであまり退屈せずに済みました。
題名のとおり、頼朝の死をめぐる話なのですが、頼朝さんは愛人に逢いに行こうとした深夜、不審者と間違えられて家来に殺されるというなんとも情けない死に方をしちゃったんですね。その事実を知らないのは息子の頼家だけ。頼家は死の真相を知りたくて、いろんな人に「なんで父上は死んだの?教えて教えて!」と聞くものの、そんな恥ずかしい死に方を誰も言えるわけもなく、母ちゃんの政子まで、「アンタこれ以上追及したら許さんよ」と薙刀を向けられる始末(笑) 頼家さんは18歳ぐらいなんですけど、最後はうえ~んと赤子のように泣いて幕。
まあようするに殿の面子とお家の面子を護ったという話なんでしょう。政子のセリフに「家は末代、人は一世」という言葉がありました。皮肉にも源氏の家はこの頼家さんでは背負えずに北条の時代へと移ってゆくのですけどね。
梅玉さんは若手の役をやっても違和感ないほど、声が若々しいですよね。去年「狐と笛吹き」を観た時も思いましたが、とても60歳とは思えません。ファザコンでちょっと頼りないウジウジ君な頼家がよくハマってました。
福助さんの小周防はとても健気で可愛らしかったです。福助さんって若い娘を演る時の声がすごく可愛いと思う。泣きの演技をするとちょっと男っぽい声が出てくるんですけど(笑)
内気な小周防を支える侍女は芝のぶちゃん。ちょっといつもと違って貫録がある雰囲気でした。セリフも多く嬉しかった~。
重保の歌昇さんは主君を殺してしまった嘆きが凄く良かった。今まであまり歌昇さんってどんな役をやってたかとかあまり印象になかったんですけど(スミマセン)、この芝居を観て凄くいいなあと思いました。熱演でしたね。
芝翫さんは圧巻。政子ってもちろんものすごく貫録のある人ですけど、芝翫さんの迫力はものすごかったですね。ただ黙って座ってるだけでも存在感あります。だからよけいに息子がバカ息子に見えちゃう。そして舞台には出てこないけど頼朝さんも(^^;薙刀取り出した時は笑ってしまいましたけどね。
『男女道成寺』
昼の部で一番盛り上がったのはやはりこれでしょう。道成寺は一般的な京鹿子と去年やった玉三郎さんと菊之助君の二人道成寺は観たことがありましたが、男女~は初めて。まさかこんなに笑える道成寺だとは思いませんでした。
二人道成寺と同じく、最初は二人の花子が出てくるのですが、勘三郎さんはもちろん可愛らしく娘姿が決まってますが、隣の仁左衛門さんが…女形なんてめったにやらないから、やはりどうしても違和感。でも思ってたより綺麗だったかも(笑)でも仁左衛門さんはやっぱりデカイですね~(^^;
二人より先に登場した所化さん達は可愛らしい。獅童君を先頭に、勘ちゃんに七之助君などわらわらわらわら出てきて、そのまま持って帰りたいほど可愛らしいです。で、その所化さん達に仁左衛門さんの花子が実は男だということがバレるのですが、烏帽子が脱げて頭は男髷だし、ガニマタだしそりゃバレるわ(^^; あげくに「楽屋で着替えてきます」なんてセリフまで出てくるんだから爆笑。道成寺って怨念たっぷりで迫力があるから、きらびやかな舞いでもちょっとダークな感じだと思ってたんですけど、男女版は面白すぎでした。
宣言通り、楽屋で着替えて戻ってきた仁左衛門さん(笑)は狂言師左近となり、鞠つきの舞を。でも途中で鞠がどっかいっちゃって、頭を垂れてた所化の坊主頭が鞠だと思ってバシバシついてみたり(笑) 左近は花四天を相手に立ち回りもあるので、花子がメインかと思いきや、見せ場がたっぷりありました。今年9月の錦秋公演では勘ちゃんと七之助君がこの男女道成寺をやるので、おそらく勘ちゃんが左近なんだろうけど、これは結構楽しみになりましたね。
そして花子の勘三郎さんはもうただただ見とれてました。勘三郎さんだと美しいというよりはとにかく可愛らしい。獅童君と勘ちゃんに手を引かれて出てきて、恥じらいを見せる場面なんかは、「鏡獅子」の弥生ちゃんのようで本当に可愛かった(*^_^*)今回は勘三郎さんならではの演出ということで、「手踊り」もあるのですが、やっぱり手の動きが美しい! ごまかしがきかない踊りでこれだけ見せられるのは凄いですね。手が本当に女性の手に見えるんですよ。
仁左衛門さんと二人で並んで踊る場面が少なかったけど、二人揃うとやっぱり華やか♪ お二人の「華」というのは本当に凄いなと思いました。どっちも負けてないし、背景の桜にも負けてません。
短かったけど、勘ちゃんと七之助君で踊る場面もあったし、花傘踊りではやっぱり種太郎君は目を惹いたし、全体的にとにかく飽きさせず面白く、とても美しい舞踊でした。
『菊畑』
やっと今月の主役である信二郎さん改め錦之助さんの登場です。襲名公演ってなかなか当人は出て来ないんですよね(^^;
桜のあとは菊という、一気に半年ぐらい季節が先に行ってしまいましたが、舞台上に埋め尽くされた菊の花もなかなか綺麗でした。牛若丸と鬼一法眼という、これまた鎌倉物(正確にはまだ鎌倉じゃないけど)。歌舞伎ではこの時代の作品が本当に多いですね。錦之助さんの他には富十郎さんと吉右衛門さん、それからお兄さんの時蔵さんと襲名公演を彩る豪華俳優陣でした。息子の隼人君も居たし。
錦之助さんの牛若丸は美しかったです。若い役も似合いますね。細くて美しくて、時蔵さんのように女形もすごく似合いそうなんだけど、ほとんどやらないですよね。インタビューでも女形は苦手だと言ってたし残念。
劇中では襲名口上もありました。演じてる途中に不意に役から離れて素に戻り、口上の場面になるのが面白いです。こんなの歌舞伎ぐらいでしかやらないんじゃないでしょうか。
富十郎さんは足を痛めてるようでしたが、貫録たっぷり。ただ富十郎さんの後ろに控えてる落ち着かない黒子の一人がすごく気になりました。どうやら富十郎さんの息子の大ちゃんが務めてたみたいなんですけど、あっちへフラフラこっちへフラフラ(^^;もう一人の黒子さんが彼のお守り役のようでしたが、黒子が黒子に袖引っ張られてるのは初めて観ました。70でできた子だから富十郎さんも凄く甘やかしてるのかなあ? 他の子役が小さいながらも皆きっちり務めていただけに、黒子なのに目立ってしまってるのはいかがなものかと、ちょっと思いました(黒いから逆に目立つというのもありますね)。しかももう公演も終盤だというのにあの状況だったということは、このひと月ずっとあの状態のまま…だったんでしょうね。舞台に乗せるなら、もう少し落ち着けるようになってからでも良かったのでは?とちょっと思いました。
昼の部はこれで終わりですが、夕食を食べた後、夜の部の最後の演目「魚屋宗五郎」を幕見してきました。土曜だし、今月最後の週末だから混むかなと思ってたけど、なんとかギリギリ座れてホッ。4階なので終始双眼鏡での鑑賞となりましたが、とても面白かったです。
でも序盤は宗五郎の妹が殺されてしまい、皆がそれを嘆いてる葬儀の場面ですからすごく暗いんですよ。しかし妹の同僚のおなぎが持ってきた弔い酒を、ずっと禁酒していた宗五郎が、今夜だけは飲まなきゃやってられねえ、と禁を破って一杯だけ飲んだ途端、大好きなお酒なだけにもうやめられなくなって、周りが止めるのも聞かず、どんどん飲んでしまい、ついには角樽が空っぽ(笑) 急性アル中で死ぬよ~と思いましたが、そのまま宗五郎は酔った勢いで、妹を殺した殿様の家に殴り込みに行くというとにかく破天荒なお話。
勘三郎さんの宗五郎は酔っていく様がリアルで素晴らしかったですね。どんどん目が据わっていって怖いんだけど美味そうに飲むんですよ。着物もはだけ、おみ足全開、ふんどしも全開の酔っ払い親父…とても昼の可愛らしい花子と同じ人とは思えませんでした(笑)
宗五郎の妻、おはまは時蔵さん。これまた昼の「菊畑」の皆鶴姫と同じ人とは思えないぐらい、庶民的なおかみさん姿なんですけど、時蔵さんもこういう役上手いですね。去年の團菊祭で観た「権三と助十」のおかみさん役で、菊五郎さんにど突かれて、ドリフのコントのように派手に転びまくってた姿に、こんな役もやっちゃうのかと圧倒されたんですが(笑)、今回も勘三郎さんに吹っ飛ばされつつ頑張ってました。
勘太郎君の三吉は今回が初役。姿形は去年の「決闘!高田馬場」の又八を思い出しました。勘ちゃんの声は4階でもすごく聞き取りやすい声なんですね。小さく呟いてるような声ですら、ちゃんと聞こえてきます。いい声だなと思いました。他の人が芝居をしている間も勘ちゃんを双眼鏡で覗いたりしてたのですが、ただ隅に座ってるだけでも、きちんと三吉として芝居してるんですよね。当たり前のことだけど、ものすごく自然でした。いずれはこの酔っ払い親父の役も演るんだろうなあ(笑)
七之助君のおなぎは綺麗でしたね~♪ おかしかったのは最初は妹が殺された真相を伝えに来てくれたので、宗五郎に手厚く歓迎されてたのに、酔っぱらった宗五郎には「おたふく!」とか言われちゃって(笑) 申し訳なさそうに「お酒じゃなくお菓子を持ってくれば良かった」というセリフには大笑いしました。
殿様の屋敷に殴り込んでからは笑いの中にも涙あり…でした。酔いの覚めた宗五郎が空の妹に向かって語りかける様は泣けましたし、無礼者が来たにも関わらず、宗五郎をかばってくれた我當さんの家老の寛大っぷりも良かった。それから最後に頭を下げた錦之助さんの殿様も。この人が頭を下げちゃあ許しちゃうんだろうなと納得。最後は大団円で、襲名興行の最後の幕としてとても相応しい演目だったと思いました。
来月は團菊祭です。夜の部の萬次郎さんの「女暫」と三津五郎さんの「三つ面子守」が楽しみ~♪
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