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ラン ― 美しく,種類の多い,ものまね上手な花 ~聖書

2020年12月09日 | 日記

ラン ― 美しく,種類の多い,ものまね上手な花

『ええっ! これを私に? まあ,なんてきれいなランでしょう』。
結婚式とか送別会,または二人でゆっくり食事をする時にせよ,こうした答えが返ってきて,あなたの喜びはきっと増すことでしょう。
ランを贈れば,すばらしいことが起きる』という,あるラン栽培家グループの説も一理あるようです。

ランのどこに人を引き付ける魅力があるのでしょうか。ランは素人でも栽培できるものですか。

ランにこれほどの人気が集まっている理由のひとつは,種類が3万5,000種に上り,「顕花植物中最大の科を成していて,地球上の花のほぼ7分の1がこれに属している」ことにあります。
大半の種は熱帯に自生していますが,一部は北極圏にも見られます。砂ばくに育つ種類もわずかながらあります。
それらはいずれも着生ランで,サボテンの上でしか育ちません。純粋に水生のランもあります。花が完全に地中に埋もれていて,陽の光を受けることが決してない,変わったランも2種類あります。

このように変化に富んでいるので,大きさや形も様々であることが想像できるでしょう。実際,そのとおりなのです。
あるランは花の直径がわずか2㍉しかなく,ラン全体が指ぬきの中にすっぽり入ってしまいます。そうかと思うと,端から端まで38㌢もある大きな花を付けるランもあります。

あなたはどんな色や形が好きですか。ランは種類が豊富ですから,きっと好みに合ったものがあるでしょう。色は,赤やオレンジ,黄,緑から,紫,茶,白,淡いブルーまであって,様々です。

形について言えば,ランはものまねの上手な芸術家です。婦人用スリッパ,ガ,チョウやハチ,パンジー,凧,さらには飛ぶ鳥に似た形の花まであります。
オーストラリア人が“ビーディー”と呼ぶランの花はひげ面の山男を思わせます。ペルーに生えている別のランは,花の中央に笑顔の小人がいるように見えます。
それとも,鳴き騒ぐ4頭のロバの群れを思わせる花のほうが好きでしょうか。ものまねは形だけにとどまりません。

花粉を運んでもらおうと,香りまで偽造工作に用いられます。地中海地方に見られるあるランは,雌のハチに似た形をしており,何も知らない雄を引き付けるため,ハチに似たにおいまで放ちます。
ハエに花粉を媒介してもらうランも何種類かあって,それらはハエを引き付けるために腐敗物や糞に似たいやなにおいを放ちます。
敵のこん虫を装って雄のハチを引き付けるランもあります。

ハチは,自分の繩張りから敵を追い払おうとしてやって来て,花から花粉を運んで行くのです。あるランなど,まさに完ぺきにカモフラージしているため,雄バチが近寄って来て花と実際に交尾しようとします。
こうしてハチが花と接触する結果,花粉はハチに付着して運ばれて行くことになります。

つるべ状の唇弁のある大きな花を付けるランが虫に花粉を運ばせる方法は実に独創的です。花の香りに引かれてやって来たミツバチが唇弁にとまり,においのもとを拾い上げようとします。
においのもとをうしろ脚に移そうとしている間に,ミツバチは液体のいっぱい入ったつるべの中に落ち込みます。壁をよじ登ろうとするのですが,険しい上にろう質であるため,はい出ることができません。
最後にミツバチは別の出口を捜すようになり,つるべからずい柱に通じる細い管を見つけます。このずい柱に花粉の塊があるのです。ミツバチはなんとかはい上がることができますが,首のところに花粉を付けています。
ミツバチはその花粉を今度は次の花に運んで行きます。こうした相互依存の関係には実にすばらしい知恵が認められます。

 

ランの生活環

その生活環は他の顕花植物の場合と変わりません。虫に運ばれた花粉が雌しべの柱頭に付着します。やがて花粉は生長を始め,子房に向かって伸びていきます。6週間ほどで花粉管が子房に入り,精子が卵と結合します。
受精卵は生長して細胞の塊になり,それがやがて胚になります。この細胞の塊は乾いた外皮に包まれていますが,非常に軽いため,種子は風によって非常に遠くに運ばれます。
こうした種子の中にはまるでほこりのような細かいものもあります。

事実,「植物学」という本には「Cynoches属のランの子房一つの中には377万粒の種子が含まれており……その種子が30万粒あっても1㌘に満たない」と記されています。
ランにはこのように沢山の種子ができるのに,どうしてもっと増えないのでしょうか。ランの種子の発芽には特定の菌類が必要だからです。ところが,それらの菌類は必ずあるわけではないので,
ごく一部の種子しか発芽しません。

この問題を克服するために,注目すべき増殖法が最近行なわれるようになりました。
“分裂組織”培養(英語では“meristem”cultureと言うが,これは“分裂可能な”という意味のギリシャ語に由来する)と呼ばれるこの方法は,特に数の少ない変わった交配種の栽培に用いられています。
胚の生長細胞を取り,それを栄養液の中で培養し,幾度も増殖させるのです。そして望む時に,細胞を分離して別々のフラスコに移します。細胞はその中で増殖を続け,それが取られた元のランと同じ苗に生長します。
栽培家は,これによってランの値段を大幅に下げることができるようになり,同時に,季節によって需要の多い人気のある特定のランを多数出荷できるようにもなりました。

興味深いことに,温帯に見られるランのほとんどは地面に生えていますが,熱帯のランは土壌が全くない所に生えています。しかし,熱帯のランは,一般に言われているような寄生植物ではありません。
着生植物,つまり親木や岩などに支えてもらっているだけで,そこから養分を吸い取ることはありません。

興味をそそられる,これらの美しい,ものまねの名人を幾つか栽培してみたいと思いますか。うれしいことに,ランは栽培しやすい植物の一つです。
その栽培法には特別の秘訣があるわけではありません。ですから,自分の住んでいる土地の気候や環境によく合うランを幾つか見つけることができるでしょう。
図書館で本を借りたり,地元のラン栽培家グループを通して,それらのランの習性や栽培に必要な事柄,病気などについて学ぶことができます。

今日,ランの切り花の販売は大きな収益を上げる商売となっています。しかし,装飾に使われないランが少なくとも一つあります。
中南米の一部地域を征服したスペイン人の残した記録には,メキシコのアステカ族はランの種の殻を少量飲み物に加えていたことが記されています。
人工香料の使われていないバニラ・アイスクリームを食べる人は,バニラと呼ばれるラン,Vanilla planifoliaから採られるエッセンスの香りを楽しむのです。

ランは,栽培するにせよ,花を服に着けて飾るにせよ,食用にするにせよ,これを変化に富むものにしてくださった創造者の寛大さをわたしたちに思い起こさせてくれます。
詩編作者が次のように語っているとおりです。
「神(ヤハウェ,エホバ)よ,あなたのみ業は何と多いのでしょう。そのすべてをあなたは知恵をもって造られました。地はあなたの産物で満ちています」
(詩編 104:24)

 

                  

 


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