健康のために笑おう!
気持ちの良い笑いには,その日一日を明るくする以上の効能がある。
日本のある医師たちによると,笑いは,乱れていた神経系,内分泌系,免疫系のバランスを正常に向かわせ,
心拍数や呼吸を穏やかにし,リウマチの症状を一時的にせよ和らげる。
笑うと交感神経が働いて筋肉の血流が増え,脳の働きが活発になる。
おなかを抱えて笑うことは,筋肉の運動にもなる。朝日新聞に載せられたあるテストによると,笑っている人の腹筋は,「腹筋運動なみの動きを示した」。
大阪の精神科医,田中迪生医師は,笑いがもたらす積極的な影響を高く評価している。
田中医師によると,笑いは「よく効いて副作用のない薬のようなもの」だという。
笑い ― やっぱり万能薬!
「4週間にわたり毎日少しの時間コメディーを見たり聞いたりすると,うつ病の症状がかなり緩和する」と伝えているのは,ロンドンのインディペンデント紙。
「コメディアンによる治療用テープを毎日30分間聞くように指示された患者の中には病気が治った人もおり,それ以外の人も症状の程度が半減した」。
米国で行なわれた100件余りの研究は,ユーモアによる笑いに効用があることを示している。
うつ病の人だけでなく,アレルギーや高血圧の人,免疫系の弱っている人,またがんや関節リウマチの人にも,効果が出ている。
昔から笑いは健康によいとされてきたが,どうしてなのかははっきりしていない。
しかし,心理療法士のエド・ダンクルブラウ博士は,注意すべき点も挙げている。
それは,こきおろすような皮肉たっぷりのユーモアは避けること,そしてふざけすぎないようにすることである。
そうしないと,患者は自分の問題を真剣に受け止めてもらっていないと感じることがある。
笑い:心身両面に益がある
これは新しい考えではありません。
今から3,000年前にソロモン王は,『喜んでいる心は良薬である』と書きました。(箴言 17:22)
ローペ・デ・ベガという17世紀のスペインの作家も同様に,「ユーモアを発揮できれば,人はもっと健康でいられるだろう」と書いています。
しかし,ストレスに満ちた今の世の中で,ユーモアは発揮されずにしまい込まれていることが多いように思えます。
わたしたちの時代は,科学技術の最盛期ではありますが,ユーモアの衰退期でもあるようです。
「笑いの術」(スペイン語)と題する本は,現代社会において「ホモ・サピエンス[人類]はホモ・デジタリスに取って代わられてしまった」ようだと述べています。
つまり,コンピューターなどのデジタル媒体が,ほほえみや身振りや笑顔といった意思伝達手段に取って代わっていると思える時があるのです。
ユーモアのセンスがあれば,病気であっても考えや感情や行動の面で前向きになれます。
がんと緩和医療の専門家であるハイメ・サンス‐オルティス博士の最近の記事によれば,
ユーモアは「コミュニケーションを促進し,免疫力を高め,痛みを和らげ,不安を鎮め,感情や筋肉の緊張をほぐし,創造性や希望を生じさせる」ということです。
ユーモアのセンスは非常に有用
ユーモアのセンスが治療に効果的なのはなぜでしょうか。それがあれば,たとえ思わしくない状況に面しても積極的に対処できるからです。
「毎日の生活にユーモアと笑いを取り入れるなら,活力を維持し,疲労を軽減し,自分を哀れむ気持ちを払いのけることができる」とサンス‐オルティスは言います。
言うまでもなく,何がほほえみや笑いを誘うかは,人によっても文化によっても違います。
サンス‐オルティスは,「何を美しいと見るかが人によって違うように,何を愉快と感じるかは人それぞれである」と述べています。
しかし,生い立ちや受けた教育がどうであれ,大抵の人にとってユーモアは意思の疎通を図る効果的な手段であり,高まった緊張や不安を解きほぐすのに役立ちます。
では,ユーモアのセンスがそれほど有用なのであれば,それを培うにはどうすればよいでしょうか。
まずできることは,問題や病気ばかりに注意を向けるのをやめて,生活の一こま一こまの明るい面を楽しむようにすることです。
さらに,道理にかなった考え方をするように努力し,歪んだ,あるいは理屈に合わない考えを退けます。
そのような考えに陥ると,苦しい状況を一層つらく感じるようになるだけです。物事に対して別の見方ができるようになれば,それによってもユーモアのセンスは向上します。
常に笑ったりほほえんだりしている必要はありませんが,自分が置かれている状況の愉快な面を見つけるなら,対処しやすいでしょう。
「ユーモアがあれば,心配事から一時的に注意をそらすことになるし,問題に対して新しい見方ができる。……そして新たな選択肢をもって対処することが可能になる」とサンス‐オルティスは述べています。
もちろん,ユーモアのセンスがあるからといって,人生におけるあらゆる苦境を首尾よく乗り越えられるわけではありません。
しかし,より平衡の取れた積極的な仕方で問題に立ち向かうのに,ユーモアのセンスが役立つことは少なくないのです。
コンチーもこう語っています。
「病気は決して楽しいことではありませんが,ユーモアのセンスは保つよう努力する必要があります。
私は自分の人生を,いろいろな野菜が植わっている菜園のようなものだと考えています。野菜の一つ,それが不幸にも私の病気です。
でも,それが隅っこから広がってほかのものを覆ってしまわないようにしています。もちろん,がんに勝ったとは言えませんが,それでも生活を楽しんでいます。そのことがとても大切です」。