
20日投開票の参院選は自民、公明の連立与党が衆院に続いて過半数割れし、国民民主、参政の両党躍進が話題をさらっているが、比例代表の得票率をみると、さらに大きな変化が起きていることが分かった。自民は1位だったものの、2位の国民、3位の参政を合わせた得票数を下回り、立憲民主党は4位に後退した。
政界の一部では石破茂首相の続投宣言は「民意」に反しており、野党は内閣不信任案を出すとの観測もあるが、今の勢いでは立憲民主が次の衆院選で敗北する可能性が大きく、不信任案の提出にはブレーキがかかったのではないか。一方で、国民民主と参政の躍進は財政拡張の声を一段と大きくすることになり、野党側の出方が次の大きな焦点として浮上してきた。
<比例は自・国・参・立の順、公明・共産の後退目立つ>
今回の参院選における比例代表の獲得得票は、1位が自民の1280万8306人(得票率21.64%)、2位が国民民主で762万0492人(同12.88%)、3位が参政の742万5053人(12.55%)、4位が立憲民主の739万7456人(同12.50%)となっている。
以下、公明党が521万0569人(同8.80%)、日本維新の会が437万5926人(同7.39%)、れいわ新選組が387万9914人(同6.56%)、日本保守党が298万2093人(5.04%)、日本共産党が286万4378人(4.84%)となっている。
<自民は前回衆院選から177万票減、立民は416万票減らす>
2024年10月の前回衆院選における比例代表の得票と比較すると、自民は1458万2690票から177万4384票、立民は1156万4221票から416万6765票減少した。立民は獲得議席が改選前の22議席から横ばいで、一部では「立民スルー」と呼ばれていたが、比例での獲得票を見ると大敗北であり「立民ブルー」と言ってもよい惨状と言える。
対照的に国民は前回衆院選の617万2434票から144万8058票上積みし、参政は187万0347票から一気に555万4706票増やした。
<崩れた自民優位の構図、国・参合計を233万票下回る>
このような獲得票数の変化は、日本の政界で「大地殻変動」が始まったことを意味すると指摘したい。2021年10月の前々回衆院選では自民が1991万4883票を獲得していたが、今回の参院選ではそこから710万票超も減らし、圧倒的な第一党という地位を失った。
国民と参政の得票数を合計すると1504万5545票となり、自民を223万票も上回った。22年衆院選で国民は259万3396人にとどまり、参政は参加していなかったことを見れば、今回の参院選で起きた大きなうねりの規模が理解できるはずだ。
<自民と立民は早期の衆院選に及び腰か、内閣不信任案の提出可能性は低下>
上記の結果から何が予想されるのか──。1つ目は立民の地盤沈下が激しいため、早期に内閣不信任案を提出して可決され、石破首相が衆院解散を決断した場合に立民が衆院で大幅に議席を減らす可能性が出てきたということだ。したがって早期の内閣不信任案の提出は可能性が低下したということだろう。
2つ目は、自民党サイドからみても衆院解散のメリットが大幅に低下したことだ。野党の衆院選準備の遅れに乗じて早期解散で過半数を回復できるという思惑が参院選前にはあったとみられるが、今のままでは衆院での国民、参政の躍進を許すことになるとの見方に変わったと思われる。
<当面の焦点にガソリン暫定税率の廃止法案浮上も>
立民が内閣不信任案の提出を見送って存在感を示すには、消費税率の引き下げ法案やガソリンの暫定税率廃止法案を出すなどの個別政策におけるカードを切るほかないだろう。
ただ、消費税をめぐっては全体の廃止や食品の税率をゼロ%にするなど野党の主張はバラバラで、野党第一党の立民がどのような法案を出してくるのかが大きなポイントの1つになる。
調整に時間がかかるようなら、ガソリンの暫定税率をゼロにする法案を先に出し、早期に衆参で可決するという選択肢を立民が採ることもありそうだ。
<中長期的には財政拡張の色彩強まる公算大>
短期的には上記で見てきたような展開になるとしても、年末の26年度予算案編成に向けて国民や参政の財政拡張食の強い政策が与野党の調整の過程で現実味を帯びる展開が予想される。その際にマーケットがどのように反応するのかということも今年後半の「景色」を大きく変える可能性がある。
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