
注目されていた初回の日米関税協議は、トランプ米大統領が冒頭の50分間にわたって参加するという「異例」の展開になったが、市場が驚愕するような強硬な対日要求が表面化することなく、17日の東京市場では参加者から安堵の声が漏れた。だが、表面上の小康とは裏腹に米国ペースで早めの決着となる可能性が高いと筆者は予想する。関税交渉においてできるだけ早く目に見える「成果」を得たいトランプ大統領にとって、日本は格好のターゲットと映っているのではないか。石破茂首相の訪米が早期に固まれば、その時が日米間の大筋決着が近いことを示すシグナルになる、と予想する。
<初回はトランプ大統領参加という異例の展開>
内外メディアの報道を要約すると、16日午後にワシントンで開催された関税をめぐる日米協議は、冒頭、赤沢亮正経済財政・再生相がホワイトハウスで約50分間にわたってトランプ大統領と直接、話し合う場が持たれた。
その後、ベッセント財務長官らとの閣僚協議は当初、米財務省内で開催される予定だったが、そのままホワイトハウス内の別室でラトニック米商務長官、米通商代表部(USTR)のグリア代表も同席して75分間行われた。
<「為替は出なかった」との発言、円安材料に>
赤沢再生相はこの日の協議で、自動車や鉄鋼・アルミニウム製品への関税措置は遺憾として早期撤回を要請。「為替については出なかった」と述べたという。
この赤沢氏の発言が報道されると、ドル/円は141円台から142円後半まで急速にドル高・円安が進展する場面があった。
<為替は加藤ーベッセント会談で協議へ>
筆者は、このマーケットの値動きの背景にある思惑は、表層の情報に一喜一憂した可能性があると指摘したい。為替問題は今月23-24日にワシントンで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中銀総裁会議に出席のため訪米する加藤勝信財務相とベッセント長官との日米財務相会談で、別途、協議を進めるとの下交渉が事前に行われていた可能性が高いと推理する。したがって日米協議で為替問題がテーブルから下げられたと見ないほうが良いと考える。
<「大きな進展」とトランプ大統領、自動車関税実施で日本の立場はかつてないほど不利に>
現段階で日米交渉に関して断片的な情報が表に出てきているが、その中で日米首脳の対照的な発言に注目したい。1つはトランプ大統領が赤沢担当相との会談後、自身のSNSに「大きな進展!」と投稿したことだ。対照的に石破首相が初協議を受けて「日米間では依然として立場には隔たりがある」と述べた。
過去の日米構造協議などでも同様だったが、米側は高い要求をいきなり突き付け、日本側は対応が難しいと応じつつ、妥協案を探る手法を繰り返してきた。
これまでの日米協議と異なっているのは、世界における日本の経済的な地位が低下し、国際競争力を維持できる製品が少なくなっている中で、「虎の子」の自動車に25%の関税をかけると言われて、交渉上の立場がかつてないほど日本に不利に働いている点だ。
<早期の原則合意目指す米側>
この先の交渉がどのような日程で進行するのか、という部分で一部の市場関係者は過度に楽観していると再度、指摘したい。90日間の相互関税の上乗せ部分の停止で、日本の交渉でも90日間を目いっぱいに活用してじっくり交渉できる、もしくはするべきだとの主張が多い。しかし、米側が早期の決着を目指しているのは、今月10日の当欄で指摘した通りだ。
より具体的なイメージを提供しているのが、ベッセント財務長官のインタビュー内容だ。ベッセント氏は15日に米ヤフーファイナンスのインタビューに応じ、早期に「原則合意」に至ることは可能との見解を示していた。
<初回協議で米側が要求メニュー提示か>
また、交渉課題として、規制や税制などの「非関税障壁」、為替操作、政府補助金を挙げていた。
筆者は、その3つが米側の優先順位の高いテーマであり、そこにトランプ大統領が強調したであろう交渉テーマも加わって、米側の「要求メニュー」が提示された、というのが今回の協議の実態ではないか、と予想する。
<日米間の原則合意で左右される石破首相の訪米時期>
日本側の説明では、今回の閣僚協議で、1)可能な限り早期に合意し、首脳間で発表できるよう目指す、2)次回の協議を4月中に実施する方向で調整する、3)閣僚レベルに加えて事務レベルでも協議を継続する──の点で一致を見たという。
これらの点を勘案すると、G20財務相・中銀総裁会議がワシントンで開催される23、24日に近い日程で赤沢氏が訪米して2回目の協議が行われ、それほど時間をおかずに石破首相が訪米し、原則合意に達して日米共同声明が発表される、という展開が想定できる。
その中に自動車関税と相互関税の税率の引き下げ幅が明示され、日本側の対応内容も同時に列挙されるという展開になるのではないか。
したがって石破首相の訪米日程が固まったと内外メディアのどこかがスクープした時点で、日米関税協議は原則合意に達したと判断できると予想する。
当面は、来週と予想される日米協議の第2ラウンドに注目が集まりそうだ。
<初回はトランプ大統領参加という異例の展開>
内外メディアの報道を要約すると、16日午後にワシントンで開催された関税をめぐる日米協議は、冒頭、赤沢亮正経済財政・再生相がホワイトハウスで約50分間にわたってトランプ大統領と直接、話し合う場が持たれた。
その後、ベッセント財務長官らとの閣僚協議は当初、米財務省内で開催される予定だったが、そのままホワイトハウス内の別室でラトニック米商務長官、米通商代表部(USTR)のグリア代表も同席して75分間行われた。
<「為替は出なかった」との発言、円安材料に>
赤沢再生相はこの日の協議で、自動車や鉄鋼・アルミニウム製品への関税措置は遺憾として早期撤回を要請。「為替については出なかった」と述べたという。
この赤沢氏の発言が報道されると、ドル/円は141円台から142円後半まで急速にドル高・円安が進展する場面があった。
<為替は加藤ーベッセント会談で協議へ>
筆者は、このマーケットの値動きの背景にある思惑は、表層の情報に一喜一憂した可能性があると指摘したい。為替問題は今月23-24日にワシントンで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中銀総裁会議に出席のため訪米する加藤勝信財務相とベッセント長官との日米財務相会談で、別途、協議を進めるとの下交渉が事前に行われていた可能性が高いと推理する。したがって日米協議で為替問題がテーブルから下げられたと見ないほうが良いと考える。
<「大きな進展」とトランプ大統領、自動車関税実施で日本の立場はかつてないほど不利に>
現段階で日米交渉に関して断片的な情報が表に出てきているが、その中で日米首脳の対照的な発言に注目したい。1つはトランプ大統領が赤沢担当相との会談後、自身のSNSに「大きな進展!」と投稿したことだ。対照的に石破首相が初協議を受けて「日米間では依然として立場には隔たりがある」と述べた。
過去の日米構造協議などでも同様だったが、米側は高い要求をいきなり突き付け、日本側は対応が難しいと応じつつ、妥協案を探る手法を繰り返してきた。
これまでの日米協議と異なっているのは、世界における日本の経済的な地位が低下し、国際競争力を維持できる製品が少なくなっている中で、「虎の子」の自動車に25%の関税をかけると言われて、交渉上の立場がかつてないほど日本に不利に働いている点だ。
<早期の原則合意目指す米側>
この先の交渉がどのような日程で進行するのか、という部分で一部の市場関係者は過度に楽観していると再度、指摘したい。90日間の相互関税の上乗せ部分の停止で、日本の交渉でも90日間を目いっぱいに活用してじっくり交渉できる、もしくはするべきだとの主張が多い。しかし、米側が早期の決着を目指しているのは、今月10日の当欄で指摘した通りだ。
より具体的なイメージを提供しているのが、ベッセント財務長官のインタビュー内容だ。ベッセント氏は15日に米ヤフーファイナンスのインタビューに応じ、早期に「原則合意」に至ることは可能との見解を示していた。
<初回協議で米側が要求メニュー提示か>
また、交渉課題として、規制や税制などの「非関税障壁」、為替操作、政府補助金を挙げていた。
筆者は、その3つが米側の優先順位の高いテーマであり、そこにトランプ大統領が強調したであろう交渉テーマも加わって、米側の「要求メニュー」が提示された、というのが今回の協議の実態ではないか、と予想する。
<日米間の原則合意で左右される石破首相の訪米時期>
日本側の説明では、今回の閣僚協議で、1)可能な限り早期に合意し、首脳間で発表できるよう目指す、2)次回の協議を4月中に実施する方向で調整する、3)閣僚レベルに加えて事務レベルでも協議を継続する──の点で一致を見たという。
これらの点を勘案すると、G20財務相・中銀総裁会議がワシントンで開催される23、24日に近い日程で赤沢氏が訪米して2回目の協議が行われ、それほど時間をおかずに石破首相が訪米し、原則合意に達して日米共同声明が発表される、という展開が想定できる。
その中に自動車関税と相互関税の税率の引き下げ幅が明示され、日本側の対応内容も同時に列挙されるという展開になるのではないか。
したがって石破首相の訪米日程が固まったと内外メディアのどこかがスクープした時点で、日米関税協議は原則合意に達したと判断できると予想する。
当面は、来週と予想される日米協議の第2ラウンドに注目が集まりそうだ。
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