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一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

日米で連動する株高、中東沈静化で待機資金流入 死角は強い米雇用統計と金利上昇

2025-06-30 15:14:33 | 経済

 米国と日本で株価が上昇して高値圏での取引が続いている。中東情勢の鎮静化で待機資金がどっと流れ込んできたが、死角があるとすれば、米長期金利の上昇による米株の下落とそれを受けた海外勢の日本株売りが活発化するというシナリオだろう。そのケースのトリガーを引く可能性があるとすれば、7月3日発表の6月米雇用統計で想定外に米長期金利が上がり出すという展開だ。

 反対に予想を超えて米雇用統計が弱いと米利下げの前倒し観測が台頭し、米株の大幅な上昇と日本株への資金流入が連動し、日経平均株価が4万1000円台に上昇することも十分にありえるだろう。ただ、その際はドル/円が143円前半へとドル安・円高にシフトすることになり、円高が急進展した場合は日本株の急上昇を冷ます役割を果たすことになるとみられる。

 

 <オプション絡みの踏み上げ相場、日経平均が一時700円超の上昇場面も>

 30日の日経平均株価は前週末比336円60銭(0.84%)高の4万0487円39銭と5日続伸した。この日の市場では、米ハイテク株の業績拡大が株価上昇につながると目されているソフトバンクグループや、アドバンテスト、東京エレクトロンなど日経平均株価の押し上げ寄与度が高い銘柄への選好度が前週に続いて強かった。

 また、コールオプションを売っていた参加者が買い戻しを強いられているとの声も上がり、市場では「踏み上げ相場」的な色彩も強くなり、前週末比で700円超の上昇になる場面もあった。

 ただ、上値では久々の高値圏での取引ということで利益確定の売りが午後に目立ち、次第に水準を切り下げていった。

 

 <日本株高の起点はS&Pとナスダックの史上最高値更新>

 この強気相場に影響を与えたのが、前週末27日NY市場における米株高だった。S&Pとナスダックは終値で過去最高を更新した。

 複数の市場筋によると、イスラエルと米国、イランとの間で停戦が成立し、6月の戦闘開始以来、待機を強いられてきたリスク選好のマネーが米株式市場などに流入。出遅れが目立っていた日本株にもマネー流入が波及し、30日もその流れが継続していたという。

 

 <米財政赤字の拡大懸念を消す利下げ観測の盛り上がり>

 世界の金融・資本市場は今、中東情勢の劇的な緊張緩和を受けて「リスクオン」へと大きな潮流の変化を見せているが、もし、死角があるとすれば、それは米長期金利の上昇を起点にした米株下落への流れだろう。

 米議会予算局(CBO)は、米上院共和党が提出した税制・歳出法案が成立すれば、米国の財政赤字は今後10年間で約3兆3000億ドル(約477兆円)増えるとの試算を示している。

 しかし、10年米国債利回り(長期金利)は27日のNY市場で3.2ベーシスポイント(bp)上昇の4.284%となったものの、週間では8.6bp低下し、3週連続の低下を記録している。それはなぜか──。

 市場には米連邦準備理事会(FRB)が9月には利下げし、その幅も50bpになるのではないかとの観測が高まっているからだ。

 

 <強い米雇用統計なら、米長期金利上昇起点に日米株価は反落へ>

 したがってこの米利下げへの市場の思惑が崩れると、根底にある米財政赤字への懸念がマーケットの表層へと押し出され、米長期金利が上昇を始め、米株下落へとつながり、それが日本株反落へと波及する可能性が高まる。

 そのトリガーを引く可能性があるのが、7月3日の6月米雇用統計だ。市場は非農業部門の雇用者増が12万人と予想。失業率は前月の4.2%から4.3%に悪化するとみている。

 もし、非農業部門の雇用者増が数万人と10万人を割り込んだり、失業率が4.4%と悪化した場合には7月利下げの市場期待が盛り上がり、米株を押し上げてそれが日本株の上昇に連動すると「前のめり」に期待する市場参加者が増えている。

 ところが、市場予想を上回って6月米雇用統計のデータが強くなるとどうなるのか。マーケットの米利下げ観測は急速に弱まり、米債市場の注目点は「大きくて美しい法案」と呼ばれているトランプ減税の恒久化などを盛り込んだ減税・歳出法案によってもたらされる米財政悪化にシフトするだろう。

 足元では市場に無視されているCBOの試算だが、10年間で米財政赤字が3兆3000億ドルも増加するというシナリオの現実味が増せば、米長期金利が4.2%台で推移することは不可能になり、どこまで上昇するかに焦点が当たることになる。

 

 <米株下落が日本株に波及する構図、マネーが逆回転するリスク>

 米株は米長期金利の低位安定という支援材料を失うと、頼みの半導体関連株が打撃を受け、株価上昇の推進力が失われる構図に市場の関心が集中しそうだ。

 足元で展開されているマネーフローと反対の動きが表面化し、日本株から海外勢のマネーが流出し、指数寄与度の高い銘柄の下落率が大きくなるという現象が発生すると予想する。

 

 <弱い雇用統計、円高進展するなら日米株高にギャップ発生か>

 反対に6月米雇用統計のデータが弱ければ、米利下げ期待を背景に米株の上昇に拍車がかかり、半導体株の上昇がさらに継続する公算が大きくなると予想する。その結果、日本の半導体関連株がさらに買われるという現象が起きるのではないか。

 しかし、見落としてはいけないポイントもある。米利下げ観測の高まりでドル/円がドル安・円高方向にシフトすることだ。足元の143円後半から2円程度の幅で円高が進むこともありえるだろう。

 ドル指数は30日のアジア市場取引時間帯に96ポイント台まで下落しており、その大きな要因は米利下げ観測の盛り上がりと指摘されている。6月雇用統計の予想比下ブレは、ドル指数の一段の下落と対円での円高現象を生み出すとみられる。

 円高が自動車各社の株価に下押し圧力として作用するため、このケースでは米株と日本株との間に上昇率格差を生じさせることになるとみている。

 いずれにしても、6月米雇用統計は通常の金曜から木曜に発表日が前倒しされるだけでなく、市場の潮目を変える可能性があるファクターとして一段と注目度が上がりそうだ。


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