
27日の日経平均株価は終値で今年1月7日以来となる4万円を回復し、前日比566円21銭(1.43%)高の4万0150円79銭と年初来高値を更新して取引を終えた。半導体関連銘柄の上昇が目立ったが、筆者が注目したのはトヨタ株の上昇だ。米国が自動車関税を25%上乗せする中、5月の対米輸出は前年比プラス23%と大幅に伸び、トヨタ単体の販売台数は前年比で2ケタ増となったことなどが注目された。
週明けは7月1日に日銀短観、3日に6月米雇用統計、4日の米独立記念日までに米減税・歳出法案が米上院で可決されているのかどうかなどイベントが目白押しとなっているが、マーケットはリスクオン心理が優勢となり、日本株についても楽観的な見方が多くなってきた。ショート筋の買い戻しが続くようなら日経平均株価が一段高になる余地もありそうだ。
<自動車関税25%上乗せの中、トヨタの対米輸出が23%増 自動車各社で明暗も>
この日も海外勢の買いが目立ったが、オプション取引に絡む国内勢のショート筋の損失覚悟の買い戻し(ロスカット)などが相場を押し上げたとの見方が多かった。
銘柄別では、26日のNY市場でナスダックが一時、史上最高値を更新した流れを受けて東京エレクトロンなどの半導体関連株の上昇が目立ったほか、ソフトバンクグループなど指数寄与度の高い銘柄の上げ幅も大きかった。
その中で筆者が指摘したいのはトヨタ株の上昇だ。7営業日ぶりに反発して前日比2.87%高の2527円で引けたが、トランプ米大統領による自動車関税の25%上乗せが続く中での5月の堅調な販売実績に対し、市場の注目が集まった。
これから公表される米国市場における各社の販売実績ではっきりするが、25%の自動車関税上乗せにもかかわらずトヨタが米市場でシェアを拡大させている可能性があり、同社製品の安全性への信頼感や厚い内部留保をバックにした価格政策で他社よりも優位に立っている可能性がある。
北米自動車市場において、仮にトヨタのシェアが拡大しているなら、自動車関税の賦課の下で同じ日本勢や欧州勢などよりも有利に販売競争を展開していると想定できる。今後、自動車各社の株価変動ではっきりと明暗が分かれるのではないか。
<6月米雇用統計、失業率が4.4%に悪化なら利下げ観測台頭も>
一方、来週のイベントをみると、7月3日発表の6月米雇用統計の結果が市場の行方を大きく左右しそうだ。市場の予想は非農業部門雇用者が12-13万人増、失業率が4.3%となっているが、失業率が4.4%に悪化していた場合、米連邦準備理事会(FRB)の利下げが前倒しになる可能性が意識され、ドル/円が足元の144円台からドル安・円高方向に進む可能性がある。
ただ、米株は米利下げの前倒し観測を好感するため、そのケースでも米株は高値圏でさらに上がる展開も考えられる。
<米減税歳出法案、週末に上院で採決できるのか>
市場が米雇用統計と並んで注目しているのは、トランプ減税の恒久化などを含む減税・歳出法案の米上院での採決だ。トランプ大統領と議会共和党の幹部は、7月4日の米独立記念日までに同法案の上院通過と下院での再可決を目指しており、27日ないし28日までで上院で採決し、可決することを狙っている。
しかし、米共和党の上院議員の中には同法案の財源確保のため、低所得者向け医療支援「メディケイド」の関連歳出が削られ過ぎていると反発する動きがあり、可決のメドは立っていない。仮に27、28日に可決できなければ、7月4日までの同法案の成立は難しくなり、そのまま米連邦議会が休暇に入れば、トランプ政権は窮地に立つことになる。
<目白押しのイベント、市場の見方は楽観的>
ところが、市場関係者の多くはトランプ大統領が共和党の上院議員を強く説得している状況を見て、最終的には7月4日までに同法案が成立すると楽観的にみている。
7月9日の相互関税の上乗せ部分の凍結期限である7月9日をめぐっても、上乗せ凍結期間を2-3カ月間延長して交渉を継続するとの観測が市場に広がっており、ここでもショックが発生するリスクは低いとみられている。
このため週明けの米国市場や日本を含めたその他の市場でも、今週に引き続きリスクオン心理が優勢な中で株価上昇の思惑が広がりやすい地合いが継続するとの見通しが多数派を形成している。
<日銀短観悪化は織り込み済みか、円高でも日本株が買われる理由>
日本国内では、7月1日に日銀短観が公表される。トランプ関税の影響を受けて製造業の業況判断DIが悪化しそうだとの予想が多くなっているが、これはすでにマーケットに織り込まれており、株価押し下げの要因として新たな材料になるとの声は少ない。
このようにみると、日本株にも大きな下押し材料は見当たらず、米欧株に比べて出遅れが目立つ日本株に海外勢の買いが継続する公算が大きいと予想する。
一方、ドル/円はFRBの利下げに関する市場の観測が次第に強まる傾向にあり、足元では9月利下げについて0.25%利下げは100%、0.50%利下げが32%も織り込まれており、ドル安・円高の圧力がかかりやすくなっている。
つまり、日本株はドル/円が円高方向にややシフトしても、株高を維持するという関係に変化しつつあるということだ。
週明けは多様な変数が存在する中で、価格変動率が想定外に高くなるかもしれない。
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