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一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

トランプ大統領の円安批判、日銀の利上げパスに関心集まる展開も 

2025-03-04 13:47:17 | 経済

 トランプ米大統領が3日、日本の円安を批判する発言を行って日本政府や市場に衝撃が走った。林芳正官房長官や加藤勝信財務相は日本が通貨安政策を取っていないと反論したが、トランプ大統領が関税の引き上げにも言及しているため、日本側が反論以外に何もしなければ、自動車を含めた対米輸出品に関税が賦課される可能性が出てきた。

 筆者は、石破茂政権が日銀に対して利上げを要請する可能性が浮上してきたと指摘したい。今年1月の全国消費者物価指数(CPI)は総合で前年比4.0%まで上昇しており、物価上昇が消費を抑制する構図が鮮明になりつつある。物価の上振れリスクが高まってきたと日銀が判断すれば、利上げを本格的に検討する時期は大幅に前倒しされると予想する。結果としてトランプ大統領の発言が日銀の利上げ判断にも影響を及ぼすことになるのかどうか、市場の注目点が日銀の利上げパスに集まる展開もありそうだ。

 

 <トランプ氏の円安批判、身構える日本政府>

 トランプ大統領は3日、暗号資産についての米国の戦略に関して演説した後、記者団の質問に答え、円安を批判した。ブルームバーグによると、日本が円を押し下げて、中国が元を押し下げれば「われわれは極めて不当に不利な立場に置かれる」と指摘。中国の習近平国家主席や「日本の首脳」に電話し、米国にとって不公平であることを理由に、「通貨を押し下げ続けることはできないと話した」とし、ラトニック商務長官に対し「関税率をやや引き上げなければならなくなるだろうと、私から言う必要が生じる」と語った。

 石破首相は4日午後の衆院財務金融委員会で、トランプ氏と電話で協議したかとの質問に対し「そのような事実はない」と語った。

 加藤財務相は同日の閣議後会見で「日本は通貨安対策は取っていない」と説明。2022年9月と10月、24年4月から7月にかけて合計で24兆5000億円超のドル売り・円買い介入を実施しており「介入を見ていただければ、そのことはご理解いただけるのではないか」とも述べた。

 さらに林官房長官も同日の会見で「日本はいわゆる通貨安政策はとっていない」と反論した。

 

 <円の実質実効レート、73年以来の低水準>

 だが、通貨安政策は取っていないと反論だけしても、トランプ大統領と米政権の閣僚や有力スタッフが納得しなければ、事態は改善しないどころか、日本からの対米輸出品に関税が賦課される事態を招くことになりかねない。

 円の実質実効為替レートは、1973年2月の変動相場制への移行以来となる低水準で推移している。また、トランプ1.0のころのドル/円は115円前後で推移する時間帯が長かったが、足元では150円を挟む水準かそれを上回っている。

 

 <日銀の政策金利、CPIとGDPの水準に見合っているのか>

 さらにトランプ政権から見れば、日本のコアCPI(生鮮食品を除く総合)が3年以上も2%を上回り、直近の国内総生産(GDP)が前期比・年率2.8%の成長率となっているにもかかわらず、日本の政策金利が0.5%と実質では大幅なマイナスの水準であることが「円安の要因」と映っているようだ。

 日本政府と日銀からすれば、長いデフレからようやく脱却しつつある中で、急激な利上げの実施は国内景気の腰折れにつながるため、早期に政策金利を実質ゼロ%に引き上げることはできない、と判断しているに違ない。

 

 <対米自動車輸出、関税上乗せなら日本経済に大きな打撃>

 しかし、日本政府からみれば、日銀の慎重な利上げ姿勢によって、日本の対米輸出の30%を占める自動車輸出に関税が上乗せされると、非常に心配なシナリオが現実化しかねない。

 自動車業界の収益が大幅に下押しされ、すそ野の広い業界だけにマイナスのインパクトが大きくなり、大幅な賃上げー消費拡大ー収益拡大ー設備投資拡大というプラスの循環が一転してマイナスの循環に転落しかねないという大きな懸念がある。

 筆者は、かつて前例がないことながら、トランプ関税の対日実行を回避するという観点から、政府が日銀に早期の利上げを要請する可能性が相応にあると予想する。

 

 <物価上振れリスク、拡大の兆しなら利上げ検討も>

 一方、日銀にとっても1月全国CPIの総合が前年比プラス4.0%まで上昇したことは、2つの点で気がかりではないか、とみる。

 1つ目は、消費者の節約志向が一段と強まり、消費が賃上げに見合った増加をともなわず、停滞基調を強めれば、国内景気の足かせになりかねないという点だ。実際、1月CPIでは年間15回以上購入する「頻繁に購入する品目」が前年比プラス6.2%という大幅な上昇になっており、消費者の実感として物価高が切実になっている。

 2つ目は、円安が進展して輸入物価を起点にした食品価格の上昇が加速すれば、物価全体の上振れリスクが高まって日本経済にとってマイナスの作用が目立つという点だ。

 したがって物価上振れの懸念が高まれば、マーケットの想定を大幅に上回って早期の利上げ検討があってもおかしくないと筆者は考える。そこに政府からの利上げ要請が加われば、利上げへの流れが加速するのは自然とも言える。

 

 <円安進展のマグマ溜まる、注目される5日の内田日銀副総裁の講演と会見>

 一方、明日5日の内田眞一副総裁の講演や会見で、日銀の利上げ判断が依然として慎重であり、市場の多数派が想定している次の利上げまで「6カ月」のインターバルがあるとの見方が肯定的に捉えられた場合、足元の外為市場でドル高・円安が進展する可能性が高まると予想する。

 というのも、シカゴIММ通貨先物ポジションの円を見ると、足元で買い越しが9万5980枚とその前の週から58.5%増となっており、もし、日銀が利上げに慎重と見れば、このポジションが取り崩されて急速なドル高・円安が発生しやすい環境にあるからだ。

 仮に大幅に円安となった場合、トランプ大統領が対日関税の賦課に言及するという展開は容易に想定できる。

 日米首脳会談でリスクが低下していたとみられていたトランプ大統領による「円安批判」が公然と始まったことで、日銀の今年の利上げパスが大きな焦点として浮上する構図になったと指摘したい。

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