武士道の系譜/奈良本辰也/1975/中公文庫
タイトルにつられて読んでみたものの、読み始めた直後は、著者の意図が見抜けず、何が主題なのか、書いてあることの必然性がさっぱりわからなくななった。読みやすいとか、ためになったとする書評を読み、久々に読み手としての勉強不足、教養不足を痛感させられた。
すべてを解く鍵は、「武士の戦場での美」、この一点にある。
ここをきちんと理解すれば、著者の意図の全貌が見えてくる。
著者は、戦記物の本にて描かれる武士の服装の美しさに驚嘆しつつ、その服装の描写が精細を極めていると分析、死のいでたちとしての最高の晴れ姿、いさぎよく散るなどの言葉で絶賛している。
「おわりに」おいては、作家三島由紀夫の死について言及、著者は、武士道に通じた三島の自決を強く意識、さらに、三島が、著者の本の推薦文を書いた事実を紹介している。そのうえで、三島の自決について、武士道精神の極限において演ずる美の演出を念頭においたもの、革命や明治維新については狂気がもたらしたものと結論づけた。
なお、巻末にて、この本の解説者邦光史郎は、著者をお洒落な人であると紹介している。発刊時期が、三島由紀夫自決直後であり、三島ファンなら必読書となる。
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