今日の一貫

1千万トンの国際コメ市場を見据えた戦略的農業の展開を 

先に、日本の農業は「生産促進政策」を取るべきだ、、と書いた。

これは、基本計画の農業経営の状況から出した結論。

ただ世界食糧需給構造からも、国内農業生産は拡大すべきと思う。
何度も言うが、我が国の食糧安全保障の基本的考えは、①国内農業を基本とし、②海外からの輸入の安定をはかり、③備蓄を併用するというモノ。

今おきてる世界食糧危機は、発がアメリカのバイオエタノール政策。
これアメリカの農業政策の一環。
WTOでは、今アメリカの補助金がやり玉に。
これを下げることが、WTOモダリテイの確立の前提。
とすれば、補助金削減に対応した政策が何か必要になる。洋の東西を問わず政治家が考える最も手っ取り早い手法が農産物価格を高めること。
ただ、日本の三流政治家とちょっと違うのはここから。
市場原理で、合理的に農産物価格を高めるには、どうするか、、とブッシュさん考えた。
デントコーンの価格をあげるには、新規需要創造すればいいと、どこぞのマーケッターが考えそうなことを考えた。そこで登場したのがバイオエタノール。
我が国の政治家さん、今頃になってコメの新規需要創造などと言い始めてるが、、いかんせん戦略性もないし、実行力もない。ここがアメリカと日本の違い。

新規需要が見込まれれば農家はデントコーンを作る。価格が上がれば、作付けシフトが起こるのは、農産物では特に顕著。
小麦より、大豆より、綿花より、トウモロコシが儲かるのだ。
となると生産縮小した農産物は供給不足に陥る。
そこにサブプライムからの投機資金も流れ込んだというのだが、、

他方、コメだ。
コメの国際市場規模は、1千万トンぐらい。
国際市場としては非常に小さい市場。
供給量の変化が価格の変化に結びつきやすい。
だから私は、コメの輸入制限をWTOで議論するなら、輸出制限も同時に規制すべきと主張してきたが、(これに関しては、08年4月末、我が国政府はやっとスイスと共同提案したようだが、議論にはなってないようだ)、しかしそれでも、国内のコメは100%自給だから、それほど深刻なモノではなかった。

そのせいか、我が国はこの1千万トンの国際市場には見向きもしなかった。

しかし、我が国のアジアでの位置や貢献の仕方を考えたら、この市場にアクセスすべきだろう。日本が世界のコメをコントロールできる状態にしておくことは、我が国にとってはもとより、アジア全体の食糧確保にとってもメリットが大きいと考えられる。
我が国の一国需給主義は放棄すべきではないか。


国際市場に参加できない大きな理由は、我が国の稲作の高コスト構造にあるとされている。
しかし、これも「言われている」であって、、誰かが「意図的に言ってるだけ」の様な気もする。構造を変えればいいのだ。

生産者価格で、日本のコメはトン当たり25万円。
これに、8倍の関税をかけないとやっていけないと言うのが日本政府の考え。
たしかにトン当たり3万円ぐらいの、B級タイ米とは8倍近い開きがある。
しかし、日本の主食となりうるアメリカや中国のコメは、高騰まえでトン14万円程度。
ということは、我が国のコメは、国内市場では100%関税で充分競争力があるということだ。

しかも日本の市場はと見れば、14万円でもエサにしか使わない。食用にはしない。ましてや、タイ米は04年に緊急輸入しても、ほとんどの人が食べなかった。タイの人に失礼だ、、などというお門違いの意見も飛び交った。3万で入ってきても誰も食べないのだ。

ただ、このトン3万円は重要な指標。
もともと、国際穀物相場は、デントコーン、大豆、小麦等1万円から3万円の間。
それが、トン300ドル平均のタイ輸出米が、、実に1000ドルにまで高騰しているのが今。10万円だ。
これなら、我が国のコメも、国際市場に参加資格が出てくる。

この価格、構造的なモノか、1次的なモノか。
1千万トンの国際市場、6割がタイ、インド、ベトナムの供給。それぞれ、33%、16%、13%。それがインド・ベトナム、カンボジア、エジプトが禁輸してしまったのだから値上がりするはず。

インドや中国の経済成長によって、農業の後退と、食糧消費の増大。中国の胃袋や、インドの胃袋を満足させるには、確かに、コメの供給は傾向的に足りなくなるのだろう。

そこにもってきて、バイオエタノールによる、食料やエサ用デントや大豆小麦の供給縮小。
どうやら構造的なモノと考えても良さそうだ。4-5年は続くかも。


そう、この4-5年を射程に入れて、国際コメ市場に戦略的に打って出る、、これが今後の我が国農政の一つの選択肢ではないか。1千万トン国際コメ市場を射程に入れた戦略的な農業の展開である。世界各地で、日本人のコントロールによる、食糧生産の拡大戦略だ。

そう考えると、我が国にとっての課題が見えてくる。
なにより、国際コメ市場を目標にした商品作りが必至。
商品、価格、ターゲット、等々、考えなければならないことは多い。


①様々なバリエーションを持ったコメの増産(インディカ、コメ粉、飼料用稲、さらには、味の良い品質追求のコメ、)。またコメ関連の商品開発。米を食べる出エーションの拡大。もちろん高級米も生産。
生産調整政策は失政だ
②内外価格差の縮小努力。エサ米はコスト半分にはすぐにでもなる。インディカはどうか?
③「メード・バイ・ジャパニーズ」のさらなる推進。
④日本に、世界をリードする、シカゴ相場のようなコメ市場を立ち上げること。東京穀物商品取引所のコメ先物をつぶしたのは、失政だ。


ところで、②だが、エサ米は収量倍ならコストはすぐにでも半分になると書いたが、現在の農地で、2分の1から5分の1のコストで作れる条件はあちこちにある。現在の農業のスタイルから脱却できない、あるいはイメージできないのが問題なのだ。地主は1万円地代をもらったら後は自由に使わせること。

国内農業は、農業経営者を中心とした構造改革をさらに推進する必要がある。
農家だけで農業経営者が不足するなら会社などを入れるべきだ。
会社参入にはもはや日本農業新聞ですら反対していない?。
補助金をこれら戦略的農業の実現にこそ使うべき。
これに逆を向いている現農政は転換させる必要がある。
昨年末以降の動きは歴史に汚点を残す失政だろう。

現農政はポピュリズムに陥っている。
食糧危機だから、財政措置をして、国内農業を強化する、、言う。
論調は似て否なるモノ。
心は、、、、「兼業農家を含めた、、農家への補助」。
単なるバラマキに終わってしまう。
農業=茹で蛙のまま。
これでは何も変わらない。
農家もそんなモノ望んではいない。
兼業農家を守れの大合唱だが、、、兼業農家も守って欲しいとは思っていない。彼らはもっと矜持がある。
我が国の食料安保の基本方針、「国内農業を基本とする」、の中身が問われているのだ。

コミュニティを維持するための稲作を作ろうというのではない。
  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「農政 農業問題」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2023年
2022年
人気記事