今日の一貫

経営所得安定対策、早くも認定農家を苦況に

大いに警鐘を鳴らし、こうなることに苦言を呈してきたことが現実化し始めている。

集落農業の貸しはがしのことだ。
集落農業と認定農業者の競合の問題に関しては、多くの人が警鐘をならしてきた。
農水省は、土地の借り換え程度の問題と受け止め、合理化が進む一環ぐらいにしか受け止めてこなかった。
しかし、そうではなく、進行してる事態は日本の土地利用型農業経営者の駆逐がはじまったといっていい状態。

6日の夜、岩手県の農業賞をもらったことがある、北上の農業者伊藤さんが、(経営所得安定大綱)農政に起因する経営の危機を訴えてきた。
19haの貸しはがしにあって経営の危機だという連絡。
結局それは転作面積、10から12ha程に少々小さくなったが、経営の危機に変わりはない。


この経緯下記のごとく。
(以下農業経営者昆編集長からの引用)

1.伊藤氏の経営概要
18年実績 (合計面積 約25ha)
<25haの内訳>
自作地=4.5ha、小作地=7ha、転作受託=14ha(貸しはがしの対象地)
<経営作物と面積>
水稲=約4ha(うち種子3ha)
小麦=約7ha
大豆=約14ha(うち種子7ha)
小菊=約20a
椎茸 約6,000菌床

2.経過
今回の土地貸借解除通告の対象となっている14haの貸借については、3年契約の転作を前提とした貸借契約を結んでおり、19年3月31日にその期限が来る。それらの農地は、本人と地主間の相対契約であり、長い人(組合長など)では、約20年の契約期間がある。
伊藤氏に対しては今年4月に集落営農に加わらないかとの誘いを受けたが、個人経営としての実績のある同氏は、政策の行方も定かでないところから、回答を保留していた。そして、今回(10月初め)、まったくの相談も無いまま通告を受ける形となった。同氏は、集落営農組織がそうした形で相談されていることも認識していなかった。

3.集落営農の要求内容
<要求内容>
①集落営農組合に参加する組合員の農地に関し、19年3月31日以降、契約更新はしない。
②現時点で、小麦を播種した分の地割り番地を教えてほしい。収穫まで猶予する。

<集落営農のメンバー>
長⇒(建設会社社長で、奥さんは岩手県農協婦人部長)
事務局長⇒(JA北上組合長)
以下、組合員は、20名前後で、その中には、現市役所職員で元農政課長、元議員等も含まれるらしい。伊藤氏の借地に絡むのは10~12名。

4.伊藤氏が受ける経営的打撃
貸しはがしの面積は、10~12haになり、全経営耕地面積の約半分が、なくなると思われる。
そこからの農産物の販売代金や、奨励金(こんどの対策のゲタ部分?)のメリットがそっくりなくなるのではないか、と伊藤氏は言う。
農機具の償還もまだ終わってないのもあり、生活の維持すら危うくなると同氏は言っている。

5.その他
伊藤栄喜氏は岩手県農業賞まで受賞した能力ある農業経営者である。現在は夫婦二人による経営だが、二人の息子のうちどちらかは、将来においては農業経営を受け継ぐ意向がある様子。
こうした専業農家が、集落営農によって潰され、高齢者主体の兼業農家の集まりにとって代わられてしまうことは、現在の担い手に集中させようという農業政策とも矛盾する、典型的な貸しはがしケースである。

もし、集落営農という政策課題が登場しなかったとしたら、地権者と伊藤氏との相対土地貸借が続き、それによって健全な地域農業が成長しているはずだった。
当該地域にあっては、未来のある形で“和解”に導く方法はないのだろうか。
これは推測に過ぎないが、集落営農を進めようという中心人物たちとて、矛盾を感じているのではないだろうか
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