今日の一貫

種苗法改正にみる農業界の特殊性

マスコミ何社からコメントを求められたが、この話、論争になっている様だ。農家のため、農業のためといいつつ、実は結果として農業の発展を阻害してきたこれまでの農業保護論の繰り返しの感がある。

「自家増殖を認めなくなると農家は種を買わなければならない」
「ハイコストになる農家はかわいそうだ」。
「種苗法を改正すると、世界の巨大資本に日本の種は牛耳られてしまう」
こうした論調が幅を利かせ、結局改正法案の今国会での通過は見送られた。

日本で開発した植物の品種を保護し、育成権を守ることが、なぜ農家のためにならないというのか?不思議だ。
なぜメジャーに食い物にされるのか、?

現実を知っている人々にはトント理解できない主張ではないだろうか。
詳細な反論はNewsPicsで見ていただきたいものの、
こうしたロジックは既視感があり、これまで何度も繰り返されたステレオタイプのもの。

日本農業は、世界巨大資本、メジャーに席巻される(食い物にされる)。                           農業の産業化は家族経営の日本農業に打撃を与える(農業の産業化より地域政策が大事)。

ウルグアイラウンドやTPP、生産調整論議、等々、農業界では幾多の話題があったが、何度も農業のため、農家のためを語りながら実のところ農業の発展や国益を毀損してきた経緯がある。
今回もその構図といってよい。
そのため日本農業はずいぶんと割を食ってきた。
特にこの30年間、さらにいえば90年から2010年までの20年間がこうした論調が蔓延していた時代だった。そのため、この時期の農業は右肩下がりに縮小している。

今回またオオカミが出てきたかと思ったものの、種苗法に関して言えば、食糧安保を戦略的に構築しなかったために改正が遅れ、日本の知財がだだ洩れになってしまったという反省に立ってのもの。遅ればせながら、ほんの一部の品種に限って許諾権をかけるというもの。
そうしないと、日本で育種された品種が中国や韓国に無断で栽培されていることを容認し、食料安全保障にももとることになり、結果として国を売る行為をいつまでも容認することになる。その点種苗法改正に反対する人々はどう考えているのだろうか?それで農家が困るというのだが、本当とは思えない。しかもロジックも、捏造と曲解が多いのは残念なことだ。
思い込みによる論調が増えるのは、社会のためには決してよいとは思わないのだが、これまでそうした思惑による論調を好き放題やってきた農業界の伝統といえば伝統なのかもしれないが、やはりここは学者や政治家やマスコミならもっと冷静なファクトに基づいた議論が欲しいものと思った。

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