バンマスの独り言 (igakun-bass)

趣味と実践の音楽以外に日々感じる喜びや怒り、感動を記録するためのブログです。コメント大歓迎です!

桜、 満開に寄せて

2015年03月31日 | 日常
桜の樹の下には

梶井基次郎


桜の樹の下には屍体が埋まっている!
これは信じていいことなんだよ。何故なぜって、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。


 (中略)


いったいどんな樹の花でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、あたりの空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。それは、よく廻った独楽こまが完全な静止に澄むように、また、音楽の上手な演奏がきまってなにかの幻覚を伴うように、灼熱した生殖の幻覚させる後光のようなものだ。それは人の心をうたずにはおかない、不思議な、生き生きとした、美しさだ。

しかし、昨日、一昨日、俺の心をひどく陰気にしたものもそれなのだ。俺にはその美しさがなにか信じられないもののような気がした。俺は反対に不安になり、憂鬱になり、空虚な気持になった。しかし、俺はいまやっとわかった。

おまえ、この爛漫と咲き乱れている桜の樹の下へ、一つ一つ屍体が埋まっていると想像してみるがいい。何が俺をそんなに不安にしていたかがおまえには納得がいくだろう。

馬のような屍体、犬猫のような屍体、そして人間のような屍体、屍体はみな腐爛ふらんしてウジが湧き、堪たまらなく臭い。それでいて水晶のような液をたらたらとたらしている。桜の根はどんらんな蛸(たこ)のように、それを抱きかかえ、いそぎんちゃくの食糸のような毛根をあつめて、その液体を吸っている。

何があんな花弁を作り、何があんなしべを作っているのか、俺は毛根の吸いあげる水晶のような液が、静かな行列を作って、維管束のなかを夢のようにあがってゆくのが見えるようだ。 (略)




3月は本当にいろいろなことがあって忙しかったのですが、ついに「年度末」ということと共に終わっていきます。
おりしも、東京地方は桜が満開を迎えています。
あの黒っぽい茶色の樹皮のトーンに対して驚くほど対照的な鮮やかで明朗な花の色。いいですね、日本の桜!

NY時代にはワシントンのポトマック河畔の桜祭りに毎回おじゃまして異国での日本的な美に故郷を想ったものでしたが、たとえどの地で見ようともこの植物には特別なオーラがあると思っています。

そこで今回は冒頭に梶井のこの名作を抜粋で掲載させてもらいました。
おそらく過去にもこのブログでこの作品を桜の季節にからめて引用し、駄文を書かせてもらっているはずですが、この作品に出合った高校生のころ、担任で国語教師だった恩師が教室の窓越しに(きっと)ぼんやりとした顔で校庭の桜を見ていた僕に「これを読め」と言って貸してくれた梶井基次郎の本こそが僕の本格的読書の始まりとなったことを懐かしく思い出します。

桜の周囲の華やかさというマクロ的な全体像とその足の下の土中のグロテスクなミクロ的視点との同時進行がこの作品のリズムを作っていますね。

桜を見るといつも決まってこの作品を読み返す僕です。



新年を迎えた1月、数十年ぶりに一度も「蠟梅(ろうばい)」の香りを嗅ぎませんでした。その後に続いた「沈丁花」の香りさえ十分に楽しめないまま梅~桃~桜~コブシと花々が咲きましたが、悲しいかな気分上々の花見はどの花にもできなかったことを悔やんでいます。香りの花は毎月いろいろありますが好きな香りの一つである藤の花~クチナシの花の登場を前に、最近フリージアの香りを玄関の花瓶で楽しみました。これはなんだかとても気分がよかったです。

花の香りを楽しむ余裕がない時期をこのところずっと送ってきました。そしてこの時期はブログの更新もしなかった時期と重なっています。
今、外は暖かい気温がもたらすちょっとゆるんだ雰囲気が感じられます。花粉症の人にはNGかもしれませんが、実にいい季節の到来です。
みなさんはいかがお過ごしでしょう?

毎日毎日、ニュースや新聞を見ては阿倍ちゃん政権の強引さや外交的に微妙さが際立ってきた我が国の存在感、政府と沖縄県とのせめぎあい、中国主導のアジアの開発銀行への参加問題、ISの勢力拡大、話題に出なくなったエボラの危険、五輪欲しさに世界にウソをついたフクシマの「アンダーコントロール」問題・・・こんなんでいいの?という気持ちは日々大きくなっています。
今は特に沖縄県と政府のもめごとについて一言いいたいですね。

日本人と日本人が一体誰のためにもめているの?と。 オスプレイが上空から高みの見物です!

桜を見物しているわけではないのが御愛嬌!

ではこのへんで。
次回は最近 ヘビロテ中 の音楽の話など書きたいです。

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