バンマスの独り言 (igakun-bass)

趣味と実践の音楽以外に日々感じる喜びや怒り、感動を記録するためのブログです。コメント大歓迎です!

この曲が好き! vol. 17  「エイリアンズ 」 キリンジ

2009年06月09日 | この曲が好き!
今まで聴いてきた膨大な量の音楽の中でも特に大好きでかつ思い出深く、そして自分の音楽スタイルやライフ・スタイルに少なからず影響を与えた曲を一曲づつ紹介していくシリーズの17回目。

キリンジ   「エイリアンズ」(2000年) シングル・カット


忘れもしない2000年10月、何の前触れもなく突然AMラジオから流れ出たこの豊潤でベルヴェットの感触にも似た極上のサウンドがその時の僕の全身の動きを止めた。
ちょうど時間は月明かりが煌々とした夜だった。

流れ出た歌詞
・・・遥か空にボーイング  音もなく 公団の屋根の上・・・

出だしのたったこれだけで、初めて聴いた僕は即、白旗を揚げてしまった。
まとわりつくようなバックの柔らかなサウンドに生ギターの弦の音が生々しい。
そこにべたっとしたボーカルが常識をはるかに超えた情景描写で満たされたファンタジックな歌詞を乗せていく。
時にはむせかえるようなエロティシズムすら感じ取れる歌の中の主人公の醸し出す閉塞感。
なんという極上のJ-POPなのだろうか!

彼らの楽曲のクオリティの高さやメロディの素晴らしさは今までも絶賛してきたのだが、それに対して反対の意見を言う人の多くは彼らの歌詞の難解さ(もしくはすでに独断的な世界に固執している学問の一ジャンルのように)に苦言を呈していることが多い。

若いミュージシャンでちょっとアタマのイイ連中が作る歌のひねくれ具合はただ単に奇をてらったような言葉の語呂合わせや羅列で終わることがままあるのだが、キリンジ(この作品は弟の作詞作曲)のこの歌詞は誰も予想出来ない程ユニークで変態っぽい視点から物事を捉えることから生じるセンスの非凡さだと思える。

この『エイリアンズ』も月明かりの下での物憂い男女の生態が都会の街の風景描写の独自性をまとって、それこそSF映画のような香りがゆっくりと流れているような幻覚にとらわれるような言葉の選別が顕著である。

この曲はある種の快感(オーガズム)や陽気な絶望感を聴く者に与える。
あくまでもやわらかなサウンドは幻覚を見ているかのような情景を見事に下支えしている。
この作品が発表されてから9年(本日現在)という月日が流れたが、いまだにこの曲を超えるような豊潤なJ-POPサウンドは聴いたことがない。
このような超傑作が一部のファンの中だけで絶賛を浴びているだけというのが残念でならない。しかもカラオケにもないのだから!

当時TVでこの曲が流れたとき冒頭の「ボーイング」が「飛行機」と変えられて歌われていたか、歌詞カードが変更されていたかように記憶する。
どうしてこのような姑息なことをやるのか理解に苦しむけれど、昔は「ポルシェ」を「車」に変えさせられた百恵ちゃんもいたな。





エイリアンズ    堀込 泰行 (キリンジ)


遥か空にボーイング 音もなく
公団の屋根の上 どこへ行く

誰かの不機嫌も 寝静まる夜さ
バイパスの澄んだ空気と 僕の町

泣かないでくれ ダーリン ほら 月明かりが
長い夜に寝付けない二人の額を撫でて

まるで僕らはエイリアンズ 禁断の実 ほおばっては
月の裏を夢見て
キミが好きだよ エイリアン
この星のこの僻地で
魔法をかけてみせるさ いいかい

どこかで不揃いな 遠吠え
仮面のようなスポーツカーが 火を吐いた

笑っておくれ ダーリン ほら 素晴らしい夜に
僕の短所をジョークにしても眉をひそめないで

そうさ僕らはエイリアンズ 街灯に沿って歩けば
ごらん 新世界のようさ
キミが好きだよ エイリアン
無い物ねだりもキスで 魔法のように解けるさ いつか

踊ろうよ さぁ ダーリン ラストダンスを
暗いニュースが日の出とともに町に降る前に

まるで僕らはエイリアンズ 禁断の実 ほおばっては
月の裏を夢見て
キミを愛してる エイリアン
この星の僻地の僕らに
魔法をかけてみせるさ
大好きさエイリアン わかるかい



歌詞を見てもらえれば分ると思うが、やはりどうしても難解ではある。
しかし情景描写という観点でみると、誰もが何となくその空気感を理解できてしまうのがすごいところだ。


たとえば、


「公団の屋根の上」 

「バイパスの澄んだ空気」

「月明かりが長い夜に寝付けない二人の額を撫でて」

「仮面のようなスポーツカーが 火を吐いた」

「暗いニュースが日の出とともに町に降る前に」


などのフレーズは吟味のし甲斐がある。非常に象徴的でしかもなんとなく理解できる、といった言葉だ。


それではいつものようにこの曲の動画を紹介させてもらうので、どうか聞き込んでもらいたい。

この曲はJ-POPが到達した一つの奇跡である。



YOUTUBEでぜひどうぞ!(以前の貼り付け動画は削除されたため、この新しいものに変更しました)



(2012.12.30. 改訂)

最新の画像もっと見る

17 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (はち)
2012-12-26 20:33:26
昨日、初めてエイリアンズという歌を聴いて
すごい歌だな~と思い、誰の歌なのか調べてたら
こちらに辿り着きました。はじめまして。
歌詞がとても素敵でよかったです。
返信する
はじめまして! (バンマス@発行人)
2012-12-27 21:03:37
>はち さま

ご訪問、ありがとうございました。

発表からだいぶ時が流れた楽曲ですが、初めてお聞きになってその歌詞に興味を持たれたのですね。うれしいです。
とてもファンタスティックな内容で、素敵ですよね。
返信する
はじめまして (かこ)
2012-12-29 22:44:19
はじめまして。
私も、最近『エイリアンズ』を聴いて気になったので調べていると
このページにたどり着きました。

不思議な歌詞と空気感ですが、すごくいい曲ですね。


どういう所がいいのか、うまくいい表せなかったのですが
このページを読んで本当に共感してしまい、ついつい書き込んでしまいました。



素敵です。


返信する
うっとり。。 (ねこっち)
2012-12-30 13:13:06
こんにちは

とても素敵な歌ですね。
聴いていて気持ちがうっとり、心地いいです。
返信する
はじめまして! (バンマス@発行人)
2012-12-30 14:30:15
>かこ さま

ご訪問、ありがとうございます。

歌詞のすごさ、サウンドの豊潤さに共感していただいて本当にうれしいです。

「エイリアン」で検索してこちらに来られる方は日に50人ほどいらっしゃるようです。

でもコメントをいただけることはあまりなく、今回はありがたく読ませていただきました。

同時に当初貼り付けていた画像がNGになっていましたので、今回、別の動画を張り付けました。

今後もどうぞよろしくお願いいたします。

返信する
おおっ! (バンマス@発行人)
2012-12-30 14:36:38
>ねこっち さま

うっとりしちゃいましたか。

今回、古い記事にもかかわらず、みなさんにコメントをいただいたので記事に新しい画像を張り付け直しました。これは極上のライブ・パフォーマンスです!

この兄弟はコンビを解消するようですね。
残念です。

ねこっちさん、良い年末年始をお迎えくださいね。
本年頂いたいくつものコメントに感謝しつつ、来年もどうぞよろしくお願いします。

ありがとうございます。
返信する
ありがとうございます (ねこっち)
2012-12-30 15:07:32
解散してしまうんですか。。。
残念ですね。。

この曲、本当に素敵ですね。。。

来年もブログに遊びにきます☆
こちらこそ、いつも温かい気持ちをありがとうございます。

返信する
が そして ありがとうございます (Marc)
2013-01-01 18:12:23
こんにちは、年末のTVで小田さんがカバーされているエイリアンズを聞いて、「あっ、この曲に何か記憶が有る、何だろう」と思い調べていました。
キリンジさんの楽曲は少し合わない様な気がして..自分では聞くことが無かった事が今となっては残念です(弟さんが脱退されてしまうのですね)。
そこで、バンマス様のブログにたどり着けて幸せでした、的確なコメントと歌詞をありがとうございます。
この曲は、本当に情景描写がそのまま耳を鳴らして吹きすぎてゆく風のように感じられる素晴らしい曲ですね。
遠い昔、夜の道を彼女とタンデムで流しながら、漠然と思った未来の不確定さを、心の中で感じることができる曲です。大切な曲の1つになりました。
返信する
これからもどうぞよろしく (バンマス@発行人)
2013-01-03 15:52:59
>Marc さま

はじめまして!
コメント、ありがとうございます。

この「エイリアンズ」は近年におけるJ-POPの奇跡だと思います。

豊潤で伸びやかなサウンドといい、ぶっ飛んだ表現ながらその的確な情景描写といい、最初に聞いた時はう~ん!とうなってしまいました。

Marcさんがこの曲と出会った時の心の中をちょっとだけ教えてもらいました。
共感します。

ありがとうございました。
返信する
はじめまして! (ゆう)
2013-01-07 00:46:31
「エイリアンズ」素敵な曲ですよね。

どこか懐かしさを感じる様な
歌詞とメロディーライン・・
そして、素敵な歌声。
何故かホロッときます。
歌詞の表現力、素晴らしいですね。
こんなにも想像を掻き立てられる
曲にはなかなか出会えません。
爽やかでもあり、官能的でもあり・・
こんな素敵なデュオが解散されるのは
本当に残念に思いますが、
これからもキリンジさんの素敵な曲に
触れたいと思います。


返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。