バンマスの独り言 (igakun-bass)

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Live from Madison Square Garden   クラプトン&ウインウッド

2009年06月15日 | アルバム・レビュー
引き続き音楽の話をしよう。

富と名声に安住してしまったミュージシャンの音楽なんか、安心して聴けるというくらいのメリットしか感じない僕のような偏屈な音楽ファンには今のクラプトンというギタリストは毒にも薬にもならないな、という存在だったのだ。

2001年の12月、もうこれで彼の大規模なワールド・ツアーは最後かも?、という話題付きでクラプトン一行が来日し、僕はたまたまその東京公演をブドーカンで観た。
中央に絨毯らしきものを敷いて、椅子も用意しのんびりとギターを弾くこの男に物足りなさ100%で耳をそばだてた。同じくすっかり角が取れてひたすらリズムキープに専念しているかのようなスティーヴ・ガッドのほんわかドラミングと手慣れたハイトーンのアドリブと地味なフレーズがやたらと印象的だったネイザン・イーストのベースが心地よいのかクラプトンはすっかりオジサン・プレーヤーに<成り下がって>いた!

それでも僕はもうコイツを日本では見られないのかも、という思いがあったので双眼鏡を片手に丹念にその音楽を聴いていた。
あの名曲「レイラ」は前半にアコギで、終りにストラトで、という二段がまえで客を沸かす。客がこの曲を聴きたがっていることは先刻承知している彼らはもったいぶった動きとともに愛想笑いで弾き倒す。
ブドーカン・ベイビーは総立ちだ。
おっと、この表現は正確じゃないな。たぶん99%が立っていた、と言うべきだ。
僕は座っていたし、実際こんな手抜き(それだって普通の人が聞いたら相当にすごい演奏だろう)で立ってしまうほど僕は<盲目のファン>でもなかった。

もうこれで来日が最後だと言うから聴きに行ったという低レベルの「昔からのリスナー≒ファン」の一人なのだから少し冷めた目で観ていたのだった。
ただ「クラプトン引退」とまで報じられたこの2001年のワールドツアーを最後に、「ティアーズ・イン・ヘブン」や「チェンジ・ザ・ワールド」などの'90年代のヒット曲は生では聞き納めとなったようだ。
しかし「これが最後のツアー!」といったキャッチは全く噴飯もので、本人曰く「最後と言えば客がたくさん来てくれると思った」などと本音ともジョークともつかない発言をしているようにその後もたびたび日本公演は行われてきた。腹が立つ話だがダマされた方が悪いのかも・・・?

ただしそれらのコンサートが「集金ツアー」だったらごめんだ。クラプトンはそこまで腐ってはいないと思うが、じっさい日本をカモにしているミュージシャンは何人もいるのでね。

クラプトンの80年代~90年あたりは全く好きになれない、そういうリスナーの僕は、冒頭で書いたようにその名声と完成されたギターテクニックが災いして毎回テキトーな音楽を奏でるギタリストの彼に失望していたのだ。
確かに音楽のツボを心得ている彼のギターに具体的な欠陥は無い。
でも彼のギターには明らかに真剣さ=仕事人としてのプライドが欠けていた。
簡単にいえば「もっと真剣にギターを弾けよ!」という感じだった。

数年前彼は(どういう立場で参加したのかは不勉強だが)「クロスロード・ミュージック・フェスティバル」を主催?した。
多くの参加ミュージシャンが口々に「このステージに呼んでくれて、エリックありがとう!」と言っていた。
その時そのライブ・ビデオを観賞していて思った。
この人は多くのミュージシャンを一つの気持ちにさせるフィクサーとしての力が人一倍あるんだろうな、と。

歳をとった彼はすでにそういったプロデューサー的仕事がふさわしくなってきている、と思うのだ。
だから彼のギターに昔のようなソウルを感じられなかったのではないだろうか?

でも・・・だ。
ここからか本題なのだが、今月初めになにげなく期待半分で買ったクラプトンの新作アルバムの中の一曲のプレイが今さんざん書いたような富と名声に裏打ちされたギタリストのゆるい演奏とは全く違うイメージで、僕に「どうだこれが本来のオレだ!」と言わんばかりに攻め込んできた。そして久々に彼の音楽に僕はノックアウトされたのだ。

その新作アルバムが「ライブ・フロム・マジソン・スクエア・ガーデン:エリック・クラプトン&スティーヴ・ウインウッド」(2009)だ。



そして驚かされた一曲というのががオーティス・ラッシュの名曲「Double Trouble」のカヴァーだった。
もろマイナー・ブルースの典型みたいな曲調にクラプトンは果敢にも攻撃&激情型のギターで静かに聴いていた僕の心をぐぐっとえぐってきた。

「お~、やっと職人魂が復活したか!」

これが僕のストレートな印象だった。実に久しぶりに彼の「本気」を聴いたような気分だ。クラプトンは立派な仕事をした。こういう姿勢を片時も忘れてほしくないと思うが、それでは彼の身が持たないかな?
もちろんウインウッドの控え目ながら熱いハモンドも涙ものだ!
昔ながらのレスリー・スピーカーが揺れる、揺れる。なんとも温かなサポートだ。

さらにジミの「Little Wing」や「Voodoo Chile」など絶賛したい演奏が続く。
特にこの「Little Wing」のハモンドが素晴らしい。これぞウインウッドの素晴らしさだと思う。少し遅めのテンポでゆったりとしたECのギターがまた涙を誘う。
数あるこの曲の最高の演奏の一つに決定だ。

他には今ボナマッサで聴いている「Had to cry today」やデイブ・メイソンの名演もある「Pearly Queen」などのブラインド・フェイス時代の曲も懐古趣味にならずに光輝く。
クラプトンの職人魂はこのNYのMSG(マジソンスクエアー)で復活したのか?

長年の「指ぐせ」的な弾き方を押さえて、それこそ「宿便」がすべて出て行ってさっぱりした心境でいるかのよう。
曲によっては手放しで誉められない出来の曲もあるが、それでも今書いた数曲を聴けただけでもうれしい気持ちになった。

総じて、いい意味での白人ブルースが光輝いているアルバムである。
こういうクラプトンなら・・・また観に行ってもいいかなとさえ思った。



DISC 1

1. Had to Cry Today
2. Low Down
3. Them Changes
4. Forever Man
5. Sleeping in the Ground
6. Presence of the Lord
7. Glad
8. Well All Right
9. Double Trouble
10. Pearly Queen
11. Tell the Truth
12. No Face, No Name, No Number

DISC 2

1. After Midnight
2. Split Decision
3. Rambling on My Mind
4. Georgia on My Mind
5. Little Wing
6. Voodoo Chile
7. Can't Find My Way Home
8. Dear Mr. Fantasy
9. Cocaine

Guitar/Vocals: Eric Clapton
Guitar/Vocals/Keyboards: Steve Winwood
Bass: Willie Weeks
Keyboards: Chris Stainton
Drums: Ian Thomas




次回は・・・世の中に大異変が起きなければ・・・また引き続いてあるアルバムの話をしようと思う。こんどはアフリカン・ロックのバンドが登場だ。

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4 コメント

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な~るほど。。。 (yoko)
2009-06-17 02:17:49
集金ツァー。。。おもしろい!何て言うかな。。昔のcreamのビデオと今のクラプトンて見比べると私にとっては別の人にみえてしまうんですよね。。そりゃ素晴らしいアーティストだと思います。ここまで当たり前のように定期的に(一説には彼はK-1が好きで、それに合わせて来日してるとか)日本に来ると、もうベンチャーズと同じ域に入ってるように感じますな。
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余計な心配ですが (igakun@発行人)
2009-06-17 15:57:06
>yoko さま

確かにすごいミュージシャンだとは思うんですけどね・・・何と言うか・・・もう少しペースを自分回帰に向けるべきじゃないかなと。

偉大な過去とヒットしたたくさんの曲があるんだから、それらを大事にして「あっ、またクラプトン来てる(来日)の?」なんて安売りしないで。

このままじゃ、安っぽい出稼ぎギタリストで終わっちゃいますよぉ。
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ありがとうございます! (yoko)
2009-06-21 04:24:34
バンマス!お気使い有難うございます!今ゆっくり聞かせて頂きました。やっぱり何ていうか・・クラプトンて落ち着いて聞いてられるんだな、と感じますね。自分にとって当たり前のように自分の中に住んでいるんだなと。。。。なんちゅうか。。基本なんですよねぇ。
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いえいえ (igakun@発行人)
2009-06-21 06:26:49
>Yoko さま

お店に彼のポスターが貼ってあったものですから・・・なんでも勉強だ、と思って。
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