前回投稿が2019年7月なので約5年ぶりの投稿になるでしょうか。
以前の記事は読むに耐えないものばかりですが、敢えて放置いたします。
(5/2一部改訂)
5月1日、北海道新聞に「急激な円安 国民の苦境 放置できぬ」と題した社説が掲載されました。4月29日に1ドル=160円に達したことを受けてのものです。
この社説が気になったため、今朝から何度も読み直しました。実質賃金が30年間下がり続けている所に、急激な円安で物価高に拍車がかかっているため、この社説の着眼点自体はまともなものといえます。数字だけ見ると1990年以来の円安ですが、アメリカ合衆国と日本を当時と今で比較すると、物価の差が大きく拡大していることを指摘し、円の購買力は当時の半分程度述べるなど、単純な為替レート以上に円が弱いことが指摘されている点は良いと思います。
ただ、問題は、急激な円安の原因をアベノミクスが招いたとしか書かない所、結論を
まずは政府が円安を容認せず、対策を本格化させることが重要だ
としか書けていない点にあります。アベノミクスのせいだと言うなら、どの政策が円安を招いたのかを書き、具体的な結論を書いていただきたかった。更に言うなら、円安にもメリット・デメリットがある点も述べていただきたい。過去の日本は円高で不況になる傾向があり、円安は悪いことではなかったのですから。尤も、今回の円安の原因をアベノミクスに押し付けるのは筋違いであることは指摘しておかなければなりません。アベノミクスが始まってから何年経っているでしょうか。1ドル=160円まで円安が進んだ直接の原因は、現在の政策、経済状況にあると言った方が筋が通っています。
誤解を招かないように断っておきますが、私は何も、アベノミクスが素晴らしい政策だったと考えている訳ではありません。寧ろ、アベノミクスが失敗に終わった原因を今も取り除いていないことが、急な円安の一因になっていると考えています。なぜなら、日米の経済力の差が金利差に表れているのであり、経済成長していない上に他国の戦争に首を突っ込もうとしている国に投資をしようと考える人はいないからです。つまり日銀総裁の発言、岸田首相の訪米中の演説は、世界からは、「今後も日本経済を成長させるつもりはない」「アメリカの戦争にはどこまでもついていく」と受け取られているのです。
さて、アベノミクスが失敗に終わった原因はどこにあるのでしょうか。これに答えるために、難しいことを考える必要はありません。30年間、経済が停滞しているのは何故かを調べればわかります。それは、金融緩和はしたものの、庶民にお金が回らなかったからにほかなりません。ネットでよく見かけるトリクルダウンが起こらず、一番上のグラスが無限に大きくなる絵、そのものです。コロナで消費が落ち込み、戦争が始まって物価高。これでもお金が回るようにしないので、当然経済は落ち込んだままです。
経済停滞の原因を取り除かず、加速する方向に向かったため、アベノミクスの矢はあらぬ方向へ飛んでいきました。安倍政権は三党合意に基づき、内需が回復していない所に消費税増税をやってしまいました。そのため、デフレ不況から脱することはできませんでした。日本は企業の設備投資が過剰になっていると言われています。つまり、必要なのは企業にお金を貸す前に需要を喚起することでした。この30年で貧困世帯には更にお金が回らなくなり、1億総中流と言われた中間層も中の下くらいまで落ちました。現在の貯蓄ゼロ世帯は約3割。中でも氷河期世代がひどいようで、40代、50代の貯蓄ゼロ世帯の割合は30代より高くなっています。教育にお金がかかることも、この傾向に拍車をかけていることでしょう。
これらのことから真に効果のある対策が見えてきます。お金のない所にお金を回せば良いのです。消費税は廃止。法人税、所得税は累進性を高める。社会保険料は減免する。財源が足りなくなる分は国債を発行。これらをやらないと日本経済の復活は難しいと考えられます。岸田内閣の行う所得税減税は、遅い、わかりにくい、ケチくさい、のダメ三拍子が揃っています。その上、この先は子育て負担増、防衛増税が待っていますので、1回限りの所得税減税を行っても、何の効果もないことは火を見るより明らかです。いつまで経っても庶民からはお金を搾り取るだけ。これでは、今後も経済の回復は見込めず、急な円安や円高の度にダメージを受けるだけでしょう。
国債発行について、突っ込まれる前に予め書いておきます。現在の日本は管理通貨制度を採用しています。この制度のもとでは、国債は政府が通過を発行した記録と考えます。日本政府が発行した国債を国内の金融機関が購入している限り、返さなければならない借金ではありません。アベノミクスの際に国債を大量に発行、つまり通貨を発行したけど経済が思うように拡大しなかったのは、使い道を誤ったからです。
最後に。道新は、マイナス金利終了のときにも「日銀の異次元緩和終了 脱デフレ効果あったのか」と題した社説を掲載しました。その社説は
巨大災害の対策費や社会保障費は十分に確保せねばならない。政府は財政健全化と両立させる道筋を探るべきだ。
と結ばれていて、道新は緊縮財政派であることがわかります。なぜなら、緊縮財政でなければ国家財政は黒字にならないからです。しかし、誰かの黒字は他の誰かの赤字。つまり、国家の黒字は民間の赤字になります。民間が赤字ならば、貧困は拡大する一方です。不景気の時には財政規律を考えず、積極財政により必要な所にお金を供給する、という当たり前の所に立ち返ってほしいものです。
このブログを道新の中の人が読むとは思えませんが、(放置していたからほとんどPVないし・・・)書かずにはいられなかったので、書きました。