BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

夢の揺り籠 第1話

2024年09月30日 | 腐滅の刃 現代転生昼ドラ風ハーレクインパラレル二次創作小説「夢の揺り籠」
「鬼滅の刃」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。


炭治郎が女性として転生している設定です、苦手な方はご注意ください。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。

「お姉ちゃん、本当に行くの?」
「うん。炭彦の事を頼むな、禰豆子。」
すぐ帰るからと、竈門炭子は泣き喚く息子を妹に預けようとしたが、炭彦は激しい癇癪を起こし、炭子は彼と共にある場所へと向かった。
そこは、寺だった。
読経が本堂内に響く中、炭子は炭彦の手をひきながら、弔問客の列に並んだ。
「ねぇ、まだ?」
「まだだよ、もうすぐ終わるからね。」
愚図る炭彦を宥めながら、炭子は遺族に向かって一礼した。
その席には、炭彦と同じ年位の男児に何かを話し掛けている因縁の相手が居た。
炭子は焼香を済ませると、遺影に向かって一礼した。
そこには、一人の女性が写っていた。
「炭彦、おうち帰ろうか。」
「やだ、遊ぶ。」
炭彦は、そう言いながら木登りを楽しんでいた。
「おうち却って、ばあばと一緒に遊ぼう、ね?」
「やぁだ、やぁだ!」
炭彦は、甲高い声で泣きながら自分に向かって手を伸ばそうとする炭子の手を払い除けた。
「炭彦、お願いだから・・」
「炭治郎。」
背後から、低いバリトンの声がして、炭子が恐る恐る振り向くと、そこには、自分に恐ろしい記憶を刻みつけた男―鬼舞辻無惨が立っていた。
ひゅっと、炭子は喉を鳴らし、無惨から一歩後ずさった。
かつて自分の家族を、仲間を殺した男から、怒りの匂いがした。
「く、来るな!」
「相変わらず、つれないな。あんなに熱い夜を過ごしたというのに。」
無惨は、そう言うと炭子を己の方へと抱き寄せようとしたが、それを一人の男児に邪魔された。
「母ちゃんをいじめるな!」
無惨は、その男児の顔を見て驚いた。
 赤茶色がかった髪、そして赫灼の瞳―かつて己の夢を託そうとして拒んだ“彼”と瓜二つの顔をしていた。
「炭彦、大丈夫だから、帰ろう。」
炭子はそう言って炭彦の手をひくと、そのまま寺をあとにした。
「黒死牟。」
「ここに。」
無惨の傍に影のように控えている彼の秘書は、そう言うと主の傍に立った。
「あの子の事を探れ。」
「はい・・」
(炭治郎、今度こそわたしのものにしてみせる・・わたしの太陽!)
「ただいま。」
「お帰りなさい、お姉ちゃん。炭彦は?」
「二階の部屋で寝てる。」
「お姉ちゃん、何があったの?」
「無惨に会った。」
「何もされなかったの?」
「うん。」
禰豆子と炭子は、前世の記憶を持っている。
前世で仲間だった者達も、全員前世の記憶がある。
そして、無惨をはじめ、鬼だった者達も記憶がある。
「今日は夜勤だったよね、お姉ちゃん。炭彦はわたしが見ておくよ。」
「ありがとう。」
炭子は妹にそう言った後、勤務先の産屋敷病院へと向かった。
転生した炭子、もとい炭治郎は、看護師として働いていた。
前世で多くの者達を看取って来たので、今世では一人でも多くの命を救いたいという一心で、この仕事を選んだのだった。
「炭子ちゃん、おはよう!」
「甘露寺先生、おはようございます!って、もう夜ですよね!」
「相変わらず元気ね!あ、炭彦ちゃんは元気?」
「ええ、元気です。でも元気過ぎて心配です。」
「来年、小学校でしょう?炭彦ちゃんを取り上げた時の事が、昨日の事のようだわ~」
 かつては“恋柱”―そして今世では産屋敷病院で産婦人科医として働いている甘露寺蜜璃は、そんな事を言いながら六年前の事を思い出していた。
「もしかして、あなた炭治郎君!?」
「え、甘露寺さん・・?」
炭子が甘露寺と再会したのは、彼女が看護学校を卒業し、産屋敷病院で働き始めた頃だった。
「へぇ~、禰豆子ちゃんもわたし達も同じなのね?」
「はい。あの、もしかしてですが・・この病院って・・」
「そう、“お館様”が経営なさっている病院なの!伊黒さんと富岡さんは外科で働いているわよ!」
「へぇ~、そうなんですか。早く皆さんにお会いしたいなぁ~」
そんな事を炭子と甘露寺が話していると、ナースコールがけたたましく鳴った。
「すいません、行って来ます!」
炭子が、ナースコールが鳴った病室に入ると、ベッドの上で女性が苦しそうに呻いていた。
「どうされましたか?」
「助けて・・」
女性はそう言うと、意識を失った。
 その後緊急帝王切開手術を行ったが、女性も胎児も助からなかった。
「落ち込まないで。人の命を救う事には限界があるのよ。」
「はい・・」
甘露寺からそう励まされたものの、炭子は病院から出て、溜息を吐きながら駐輪場へと向かう途中、何者かに黒塗りの高級車の中に引き摺り込まれた。
「久しいな、竈門炭治郎。こうして会うのは約百年振りだな。」
そう言いながら炭子を見下ろしていたのは、前世では自分の家族を殺した鬼―鬼舞辻無惨だった。
「無惨、俺に一体何の用だ?」
「わからんのか、鈍い奴め。このような密室で男と女がする事といえば、ひとつしかあるまい。」
無惨はそう言うと、炭子の唇を塞いだ。
「やめ・・」
「わたしのものになれ。」
そのまま、炭子は無惨に抱かれた。
「色好い返事を待っているぞ。」
 悪夢のような時間が終わった後、無惨に解放された炭子は、帰宅後すぐにシャワーを浴びた。
「炭子ちゃん、どうしたの?顔色が悪いわよ?」
「最近、色々と忙しくて・・」
「そうなの。ちゃんとご飯を食べなきゃ駄目よ。」
「はい・・」
炭子は自宅から持参した弁当を食べようとしたが、弁当箱の蓋を開け、香ばしい鶏の唐揚げの匂いを嗅いだ瞬間、激しい吐き気に襲われ、トイレに駆け込んだ。
(まさか、そんな・・)
炭子は仕事が終わった後、近所のドラックストアで妊娠検査薬を購入し、帰宅後すぐにトイレで試した。
結果は、陽性だった。
「炭子ちゃん、どうするの?中絶するにしても、身体的に大きな負担が・・」
「産んで、一人で育てます。」
炭子の言葉を聞いた甘露寺は、何も言わなかった。
そして、炭子は炭彦を出産し、実家で母と妹達と共に彼を育て、慎ましく暮らしていた。
「・・そうか、やはりな。」

秘書からの調査報告を受け、無惨は口端を上げて笑った。
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