BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

宙の華 第1話

2024年09月09日 | 腐滅の刃 現代転生フィギュアスケートパラレル二次創作小説「宙の華」

「鬼滅の刃」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

二次創作・BLが苦手な方は閲覧しないでください。


「うるさい、何だその下手糞なステップは。それに優雅さの欠片も感じられない。これで五輪を目指すなど甚だ図々しい、立場を弁えよ。」
「はぁ!?」
竈門炭治郎は、突然転校生から一方的に罵詈雑言を浴びせられ、思わず彼を睨みつけてしまった。
ここは、鬼滅学園内にある産屋敷スケートリンク。
炭治郎達は、フィギュアスケート全日本選手権大会に向けてコーチの指導の下、練習に励んでいた。
そんな中、一人の少年、もとい件の転校生がスケートリンクに入って来て、開口一番炭治郎に向かって先程の言葉を放ったのだった。
彼は前の学校の制服なのか、黒の詰襟の学生服の上に同色の外套の外套を羽織っており、立っているだけでも華があった。
癖のある艶やかな黒髪、白皙の肌、整った鼻筋に血の如く鮮やかな紅の瞳をした少年の姿を見た途端、怒りで赤くなっていた炭治郎の顔が瞬時に蒼褪めた。
(まさか、こいつ・・)
「どうした、炭治郎?」
そう言いながら炭治郎の元へやって来たのは、幼稚園の頃からの彼の親友・吾妻善逸だった。
「善逸、あいつ・・」
「え、あいつ・・もしかして・・」
(炭治郎から緊張して・・いや、怯えている音がする。という事は・・)
善逸がリンクサイドに居る少年の方を見ると、彼は執拗な視線を炭治郎に向けていた。
(鬼舞辻無惨・・間違いない!)
鬼舞辻無惨―かつて炭治郎達を苦しめ、大勢の人を殺した鬼の王であり、自分達の宿敵だった者。
太陽の光を浴びて消滅した無惨が、まさか転生して自分達の前に現れるなんて、思ってもみなかった。
「炭治郎、少し休む?」
「うん・・」
「どうした、炭治郎?」
シャッと氷を削る音と共に、炭治郎のコーチ・富岡義勇が炭治郎達の元へとやって来た。
「少し気分が悪いので、今日はもう帰ります。」
「そうか、気をつけて帰れよ。」
「はい・・」
炭治郎がスケートリンクから出て更衣室で着替えていると、彼は突然背後から何者かに抱き締められた。
「漸く会えたな、竈門炭治郎。」
「鬼舞辻無惨・・」
「その様子だと、憶えているようだな?」
炭治郎は、鏡越しに少年―鬼舞辻無惨が唇の端を上げて笑っているのを見た。
「“昔”、お前を逃がしたが、今度は逃がさない。」
「俺は、お前のものにはならない!」
「黙れ。お前を決して逃がしはしない。」
無惨はそう言うと、更衣室から出て行った。
(もう会わないと思っていたのに・・)
「ただいま・・」
「お帰り、お兄ちゃん!」
炭治郎が、『竈門ベーカリー』の裏口から中に入ると、妹の禰豆子が彼を出迎えてくれた。
「もうご飯、出来てるよ。」
「ありがとう。」
「どうしたの、顔色悪いよ?」
「練習で、少し疲れているんだ。ごめんな、心配かけて。」
「ううん。お兄ちゃん、余り無理しないでね。」
禰豆子に無惨と会った事は言わなかった。
「お休みなさい、お兄ちゃん。」
「あぁ、お休み。」
食事を終え、片付けを終えて朝の仕込みを終えた炭治郎は、そのまま布団の中に入り、朝まで泥のように眠った。
「どうした、今日はやけに機嫌が良いな?」
「ええ、長い間離れ離れだった友人と再会できたので、つい・・」
「まぁ、それは良かったわね。月彦さん、転校初日はどうだったの?」
「上手くやれそうです。」
「それは良かったわ。」
両親と他愛のない話をした後、無惨は自室に入ると、机の上に置かれている一枚の写真を手に取った。
そこには、小学生の頃の炭治郎と無惨の姿が写っていた。
幼少の頃病弱だった無惨は入退院を繰り返す日々を送っていたが、何故かスケートとサッカーだけは出来た。
治療の為、何かと制限はあったが、小学生の頃だけ通っていたサッカーチームで、炭治郎と無惨は同じチームになった。
まだその頃、互いに前世の記憶が無く、幸せな時間を二人は過ごした。
だが、心臓移植の為渡米する事になり、無惨はサッカーチームを辞める事になった。
―また会おう!
死の淵を彷徨い、無惨は“全て”を思い出した。
そして、漸く会えたのだ、長年恋焦がれた太陽に。
(もう、二度とあのような思いはしたくない。太陽を克服し、強靭な肉体を得た今、わたしは必ず、炭治郎を手に入れる!)
翌日、炭治郎が登校すると、富岡が彼の元へとやって来た。
「おはよう、炭治郎。」
「おはようございます。」
「何かあったら呼べよ。」
「はい・・」

一時間目は、体育だった。

制服からジャージに着替えている最中、炭治郎が横目で無惨の方を見ると、彼の上半身に夥しい傷痕がある事に気づいた。
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