カミノアナログ

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NFのセレクトセール(3)

2010-06-05 | pog-playback
(1)(2)のつづきである。

ノーザンファームおよびノーザンレーシングのセレクトセール上場馬を、世代別に分析した。

1998年度
 上場頭数 53頭  売却頭数 45頭  売却率 85%
 平均価格 3862万円  中央価格 3100万円
 最高価格馬 アドマイヤセレクト
 出走頭数 40頭  出走率 75%
 勝馬頭数 24頭  勝上率 60%
 平均獲得 3191万円  中央獲得 985万円
 賞金稼ぎ頭 ビッグテースト
 売上高 17.4億円  本賞合計 13.7億円  「回収率」 79%
 1~2倍当り率 13%  2~4倍当り率 8%  4倍以上当り率 4%
 1倍以上(価格回収)馬率 25%  1億以上獲得率 9%
 短評 初回で手さぐり状態、落札価格差ほとんどなし、馬の質はよくない。

1999年度
 上場頭数 72頭  売却頭数 65頭  売却率 90%
 平均価格 3088万円  中央価格 1900万円
 最高価格馬 ピタゴラス
 出走頭数 58頭  出走率 81%
 勝馬頭数 38頭  勝上率 66%
 平均獲得 3984万円  中央獲得 330万円
 賞金稼ぎ頭 バランスオブゲーム
 売上高 20.1億円  本賞合計 24.3億円  「回収率」 121%
 1~2倍当り率 3%  2~4倍当り率 3%  4倍以上当り率 10%
 1倍以上(価格回収)馬率 15%  1億以上獲得率 10%
 短評 上位大当りと下位低迷ではげしく二極化。

2000年度
 上場頭数 68頭  売却頭数 56頭  売却率 82%
 平均価格 4294万円  中央価格 2150万円
 最高価格馬 カーム
 出走頭数 58頭  出走率 85%
 勝馬頭数 40頭  勝上率 69%
 平均獲得 3598万円  中央獲得 640万円
 賞金稼ぎ頭 アドマイヤグルーヴ
 売上高 24.0億円  本賞合計 21.2億円  「回収率」 88%
 1~2倍当り率 6%  2~4倍当り率 12%  4倍以上当り率 7%
 1倍以上(価格回収)馬率 25%  1億以上獲得率 9%
 短評 市場過熱し価格先行、あいかわらず二極化、質は低下。

2001年度
 上場頭数 69頭  売却頭数 65頭  売却率 94%
 平均価格 3133万円  中央価格 2000万円
 最高価格馬 Dubai Sunday
 出走頭数 54頭  出走率 78%
 勝馬頭数 45頭  勝上率 83%
 平均獲得 4823万円  中央獲得 1818万円
 賞金稼ぎ頭 アドマイヤモナーク
 売上高 20.4億円  本賞合計 27億円  「回収率」 132%
 1~2倍当り率 14%  2~4倍当り率 10%  4倍以上当り率 10%
 1倍以上(価格回収)馬率 35%  1億以上獲得率 10%
 短評 価格は低下も、最高価格馬のぞいて質粒ぞろいの当たり年。

2002年度
 上場頭数 68頭  売却頭数 61頭  売却率 90%
 平均価格 2983万円  中央価格 2000万円
 最高価格馬 カフェリバティー
 出走頭数 60頭  出走率 88%
 勝馬頭数 45頭  勝上率 75%
 平均獲得 5686万円  中央獲得 1403万円
 賞金稼ぎ頭 ディープインパクト
 売上高 18.2億円  本賞合計 34.1億円  「回収率」 187%
 1~2倍当り率 4%  2~4倍当り率 12%  4倍以上当り率 9%
 1倍以上(価格回収)馬率 25%  1億以上獲得率 7%
 短評 市場は低迷も、超大物出て再び二極化。

2003年度
 上場頭数 72頭  売却頭数 69頭  売却率 96%
 平均価格 3517万円  中央価格 2600万円
 最高価格馬 フサイチオニヘイ
 出走頭数 59頭  出走率 82%
 勝馬頭数 40頭  勝上率 68%
 平均獲得 5879万円  中央獲得 1380万円
 賞金稼ぎ頭 アドマイヤムーン
 売上高 24.3億円  本賞合計 34.7億円  「回収率」 143%
 1~2倍当り率 15%  2~4倍当り率 4%  4倍以上当り率 8%
 1倍以上(価格回収)馬率 28%  1億以上獲得率 13%
 短評 市場活況も、いぜんとして二極化傾向。最後の良市場。

2004年度
 上場頭数 70頭  売却頭数 66頭  売却率 94%
 平均価格 4378万円  中央価格 2950万円
 最高価格馬 ザサンデーフサイチ
 出走頭数 57頭  出走率 81%
 勝馬頭数 38頭  勝上率 67%
 平均獲得 2546万円  中央獲得 740万円
 賞金稼ぎ頭 ベッラレイア
 売上高 28.9億円  本賞合計 14.5億円  「回収率」 50%
 1~2倍当り率 9%  2~4倍当り率 9%  4倍以上当り率 3%
 1倍以上(価格回収)馬率 20%  1億以上獲得率 4%
 短評 市場さらに活況も、質はとつじょ史上最悪となり、
     暗黒モードはじまる。その裏でクラブにいい馬が。

2005年度
 上場頭数 95頭  売却頭数 91頭  売却率 96%
 平均価格 4420万円  中央価格 3500万円
 最高価格馬 ダノンマスターズ
 出走頭数 81頭  出走率 85%
 勝馬頭数 48頭  勝上率 59%
 平均獲得 2053万円  中央獲得 540万円
 賞金稼ぎ頭 オウケンブルースリ
 売上高 40.2億円  本賞合計 16.6億円  「回収率」 41%
 1~2倍当り率 11%  2~4倍当り率 2%  4倍以上当り率 2%
 1倍以上(価格回収)馬率 15%  1億以上獲得率 2%
 短評 頭数・平均価格・中央価格・売上高いずれも過去最高だが、
     質は過去最悪、かつ二極化。

2006年度
 上場頭数 80頭  売却頭数 77頭  売却率 96%
 平均価格 5227万円  中央価格 3300万円
 最高価格馬 トゥザヴィクトリーの2006
 出走頭数 63頭  出走率 79%
 勝馬頭数 46頭  勝上率 73%
 平均獲得 1330万円  中央獲得 930万円
 賞金稼ぎ頭 ダノンカモン
 売上高 40.3億円  本賞合計 8.4億円  「回収率」 21%
 1~2倍当り率 13%  2~4倍当り率 0%  4倍以上当り率 0%
 1倍以上(価格回収)馬率 13%  1億以上獲得率 0%
 短評 価格高騰し最高水準更新も、質は最悪水準を大幅更新、
     価格上位に当たり皆無。再びクラブに良駒が。

2007年度
 上場頭数 102頭  売却頭数 99頭  売却率 97%
 平均価格 4445万円  中央価格 3000万円
 最高価格馬 アドマイヤハーレ
 出走頭数 79頭  出走率 77%
 勝馬頭数 39頭  勝上率 49%
 平均獲得 1325万円  中央獲得 500万円
 賞金稼ぎ頭 フォゲッタブル
 売上高 44.0億円  本賞合計 10.5億円  「回収率」 24%
 1~2倍当り率 2%  2~4倍当り率 2%  4倍以上当り率 3%
 1倍以上(価格回収)馬率 7%  1億以上獲得率 1%
 短評 頭数増加、価格ようやく減。
     質は下げ止まるが、クラブの方が上。

2008年度(一歳セール馬のみ既走)
 上場頭数 112頭 売却頭数 106頭 売却率 95%
 平均価格 3797万円 中央価格 2700万円
 最高価格馬 アドマイヤスコッチ
 売上高 40.3億円

2009年度
 上場頭数 123頭 売却頭数 116頭 売却率 94%
 平均価格 3235万円 中央価格 2300万円
 最高価格馬 ウインドインハーヘアの2009
 売上高 37.5億円

2004年度以降の結果と、サンデーTCキャロットC所属馬の結果とを比べるのも有効だ。

しかし、ここまでヤリとヤラズを鮮やかに切り替えられると、馬主としてはたまらない。文句のひとつも言いたくなるのは当然だ。
じっさい、トップバイヤーである近藤氏が注文をつけている。

> 競馬サークルの区切りをダービーだとすると、この1年はクラブ馬主の所有馬の活躍が目覚しかった。ダービーこそ個人馬主所有馬が上位を独占したものの、今年に入って平地GⅠ9レース中5戦を制している。その一方で世界中から注目されているセレクトセール出身の馬が、今年はGⅠを勝っていない。昨年の安田記念までさかのぼっても、勝ったのは菊花賞のオウケンブルースリとJCダートのカネヒキリの2頭だけ。ダービーに出走できたのはナカヤマフェスタ1頭のみだった。
> セレクトセールでは、今年の3歳馬を何頭も購入したが、悲しいことに2億5000万円もかけて競り落としたアドマイヤムーンの弟アドマイヤコブラは、いまだに500万クラスでウロウロしている。私の馬ではないが、2億4500万円もしたエアグルーヴの子供(フォゲッタブル)は、先々週の500万下特別で9頭立ての6着に敗れている。逆にブエナビスタやアンライバルドなど、セールに出さずクラブに回した馬が次から次へと勝っている。大金を投じた馬主の胸中はいかほどのものであろう?
> セールに上場するかどうかは牧場の判断だが、育成に携わる者ならば活躍する馬の目星はある程度つくと聞く。セレクトセールは選ばれた馬を選ばれた馬主に購入してもらうというのが本来の姿だと思う。上場していて買い損ねたのなら仕方ない。だが見ることも出来なかった馬に勝たれては、セリで何億円も使う馬主たちに疑惑を抱かせることにならないか。
> 私は今年の3月まで6年間に渡って日本馬主協会連合会の労務預託委員長を務め、様々な改革を行ってきた。賞金の値上げや預託料の引き下げを断行してきたし、今までウイナーズサークルに入ることのできなかったクラブ会員が口取り式に10人まで出られるようにもした。JRAに散々、嫌味を言って勝ち取ってきた権利は一般馬主に還元されず、クラブ馬主のためにやってきたのかと思うとむなしくなる。
> セールに出ない馬が勝ちまくれば、一般馬主の減少に拍車がかかるのは当たり前。世界屈指のセレクトセールでは、牧場の評判馬を包み隠さず上場して欲しいと願うばかりだ。
(近藤利一氏 2009年6月、馬三郎誌上「クラシックを振り返って」)


結論。

・2004年以降、ノーザン上場馬は頭数を拡大、値段も高騰した。
・しかしそれらがデビューすると、悲惨な事実があらわになる。
・セレクトセールに出なくなった当たり馬は、クラブや庭先に流れた。
・2004年以降の方向転換について、その理由が見えてくれば、
 これがいつまで続くのかもおのずと明らかになる。


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