ふるさとは誰にもある。そこには先人の足跡、伝承されたものがある。つくばには ガマの油売り口上がある。

つくば市認定地域民俗無形文化財がまの油売り口上及び筑波山地域ジオパーク構想に関連した出来事や歴史を紹介する記事です。

筑波山地域ジオパーク構想における つくば市認定無形民俗文化財「ガマの油売り口上」のあり方

2015-05-20 | 筑波山地域ジオパーク

保存会の発展と課題
 筑波山ガマの油売り口上保存会か平成11年7月、地元有志によって設立され16年経過した。この間、会長、代々の名人および会員一同が「ガマの油売り口上」の伝統的な「わざ」を錬磨向上するとともに会員募集と研修の傍ら、会員有志がそれぞれの地域のイベントなどで実演するなどの活動を展開した。このため設立当初44名であった会員が現在104名に増えたことは喜ばしいことである。

 他方、会員の増加は会員が全国各地に点在することになり、意思疎通が円滑を欠き、遠隔地の者が筑波山に集い筑波山神社で実演する機会はほとんど無いか、あっても極めて稀という状況を呈している。  

 また、保存会が設立された平成10年代初頭は、バブル景気が崩壊した後であったが、その余韻が残っていたので、観客の反応は現在と正反対で、やじる者、冷やかす者、からかう者、何をやっているんだと軽蔑の眼を向ける者など多種多様であった。このため、口上の技能が下手であっても・・・・・私がそうであった・・・・・観客の言動に合わせて“掛け合い”をするうちに口上が終わるという状況であった。ガマの油売り口上を覚えた直後であったにもかかわらず、下手な私の口上が終わると足元に“お札”を置いていく人、写真をとる人、サインを求める人がいた。汗顔の至り、観客との“掛け合い”が良かったのであろう。今思えば隔世の感がする。 

 それが、「失われた20年」と言われる不景気の世になると徐々に観客の反応が少なくなり、つい最近までは、じっと見ているだけで、面白いのかつまらないのか反応が乏しくなってきた。恰も天皇皇后両陛下の前における展覧口上よろしく“ご誠実な方”が多くなった。このような観客の反応が「動」から「静」と変わるに伴い口上を演ずる者の演技に、観客の“受け”を狙っただけのアドリブや動作が徐々に増えていくようになった。いつしか筑波山の“民俗”芸能であることを意識する気風も薄れかけ、伝承芸能が単なる大道芸に化する萌芽が散見されるようになっている。 
 
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 筑波山地域ジオパーク構想 
 さらに、つくば市など6つの自治体が“筑波山地域”を「ジオパーク(大地の公園)」の認定を受けるべく取り組んでいる。それは、地域内各地に散在するジオ(地球・大地)に関わる遺産を保護し研究に活用するとともに、自然と人間との関わりを理解する場所として整備し、科学技術や防災教育の場として、また観光資源として地域の振興に生かすことが狙いである。この構想の中で筑波山は、筑波山地域のジオスポットのシンボルであり、筑波山とガマの油売り口上は不可分の観光資源である。

 果たして、保存会の現状、なかんずく、我々が演ずるがまの油売り口上が観光資源として堪えうるものか甚だ疑問である。口上保存会の会員が商品「がまの油売り口上」を売る商人に例えるならば、安物やバーゲンセール向きの商品を提供することができるが、お客様が、“本物、値が張ってもいいもの”を求めた場合、その要求に応えられるかといえば、心もとない。

 特に2020年の東京オリンピックには、国の内外から多数の観光客が東京だけでなく近県各地の観光地に、筑波にも訪れる。それまでにつくば市認定の民俗芸能に相応しい口上を演技ができるよう、会員が民俗芸能についての考え方を確かなものにするとともに技と芸のレベルアップを図ることが喫緊の課題である。

 そこで、文化財の保護育成のあり方がわかりや纏められている文部科学省の「我が国の文教政策」(平成5年度)の「第1部  文化の振興 第3章 文化財を守り、活かすために 第3節 文化財の保存と活用の推進」 
 http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpad199301/hpad199301_2_054.html 
の考え方を参考に「ガマの油売り口上」のあり方を考察する。 

【無形文化財、人間の「技」そのものである】
演劇,音楽,工芸技術その他の無形の文化的所産で我が国にとって歴史上又は芸術上価値の高いものを無形文化財と言う。無形文化財は、人間の「技」そのものである。

「わざ」を体得した個人又は個人の集団によって体現される。    
このため、
①無形文化財は常にその内容,形式に変化の可能性を含みながら存在する。   
②その保護は「わざ」の体得者を通じて行われるという特性を有している。
③そのため、重要無形文化財の指定及び保持者の認定を行い、   
④我が国の伝統的な「わざ」を更に錬磨向上するとともに、伝承者を養成して、
当該重要無形文化財を次の世代に継承していく。
  

【無形文化財の指定・選択】
現在、国の指定が行われているのは、伝統的な芸能及び工芸技術の2分野である。

数多くの「わざ」の中から三つの面に基準を置いて指定する。    
①芸術的に特に価値のあるもの      
②芸能史や工芸史において特に重要な地位を占めるもの
③芸術的に価値が高く, 又は芸能史・工芸史において重要な地位を占め
  かつ,地方的又は流派的特色が際立っているもの
 重要無形文化財である「わざ」を具現化するために、これを保持する者を認定する。

【伝承者の養成、緊急を要す】 
無形文化財の保存には,単に保持者の「わざ」の保存を図るだけでは十分でなく、その「わざ」が人から人へと継承されていくことが重要である。 

この意味で伝承者の養成は,無形文化財の保存の根幹であり、緊急を要する。いわゆる「人間国宝」は伝承者の養成と自らの「わざ」の錬磨向上に努める使命を担っている

          

【公開、公開それ自体保持者等の「わざ」の錬磨研究に結び付く】 
 芸能や工芸技術などの無形文化財の保存においては、常にその時代の人々から広く支持され、国民一般に愛好されることが重要な意味を持っている。無形文化財の公開は、伝統芸能や工芸技術を鑑賞する機会を提供し、国民の理解と認識を深め、愛好者や支持層を広げることに寄与するものである。

 また、公開それ自体,保持者等の「わざ」の錬磨・研究に結び付き、また、伝承者の養成に資する点で重要な保存の手段となっている。したがって口上保存会の会員は筑波山神社等で口上を演じ、己の技と芸の向上に努めるべきである。

【民俗文化財、伝統文化を理解する上で欠くことのできないもの】
 日常生活の中で生み出し、継承してきた有形・無形の伝承で、人々の生活の推移を示すものである。
地域の風土や社会生活との関係の中で創造され、工夫・改善されて今日まで伝えられたものである。
 伝統文化を理解する上で欠くことのできない文化財として位置づけられている。 

 

 【無形の民俗文化財、風俗慣習及び民俗芸能である】
 無形の民俗文化財は、衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗習慣および民俗芸能である。
重要無形民俗文化財の指定は、地域の人々がこれを保存し、後世に継承していけるものが対象とされる。民俗芸能や年中行事が対象の中心となっている。
 誰にもふるさとがある。そこには先人の足跡がある。筑波には無形の民俗芸能である「ガマの油売り口上」がある。

  

【保存・活用、後継者の育成が必須の活動本来の時場所での公開が重要】
 無形の民俗文化財は、その伝承母体となる人々によって支えられているものであるから、伝承母体そのものが継承維持されなければならず、後継者の育成が必須の活動となる。

 ガマの油売り口上保存会で後継者の育成の使命を担っているのは、代々の名人の技と芸を継承した名人である。後継者の育成は、芸系が前々の名人から前代、現在の名人、次代の名人と伝承されることが核心であって、単に会員の増加をもってよしとするものではない。

          第20代 永井兵助  
 

  また、無形の民俗文化財は、広く国民一般への啓発、広報も必要であが、本来の時・場所での公開が重要である。したがって、全国各地に愛好者や会員を増やすことがあっても、活動の本拠地はあくまでも筑波山および神社など筑波の町である。 

  

 

筑波山地域ジオパーク構想との関係 
 観光資源の差別化を追及していくと観光資源そのものに大きな優劣の差が存在しているのが現実である。パラオの青い海を房総沖に持ってくることは出来ない。東京ディズニーランドは浦安市に、ユニバーサルスタジオジャパンは大阪市にしか存在しない。その地域に存在する資源は、ただ、そこに在るという事実だけで大きな差別化が果たされている。

 筑波山そのものが有力な観光資源であるが、これをさらに魅力的なものにするにはどうするか、また有力な観光資源がない地域はどうすべきか?「無い」なら「創り出す」ことである。他に無いものを発掘して魅力あるものを演出することである。それは他に無いものであるから優劣を比較されることも無い。

 町には町の、筑波山麓の村には村の、歴史と風土・景観・文化が存在する。その地に存在しているが、今までは観光に関係ないとされてきたこれらの資源を育て、演出し観光資源化するならば新たな価値を提供することがでる。一過性でない持続的なツーリズムへの発展にもつながる。埋もれた資源を生かすか殺すかはアイデアしだいである。

 このような取り組みによって、筑波山地域の農山村において自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動に繋げることである。

 また、無形の民俗文化財・がまの油売り口上を筑波山地域ジオパークをツーリズムとの関連でとらえるならば、一般的総称としての”大道芸”との徹底した差別化を追及し、筑波山以外には無いもの、筑波山に足を運ばないと見ることも触れ合うこともできないものを作り上げるという姿勢が重要である。  

(注)グリーンツーリズム
    

   http://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/kyose_tairyu/k_gt/  

 
     本来の地”における公開が重要である
     水戸市無形文化財の北辰一刀流   
      
       
(茨城)棒術や大根むき花など 水戸で郷土芸能の集い
          朝日新聞DIGITAL 2014年9月29日03時00分

     北辰一刀流は、千葉周作成政(1794~1855)が、父成勝の北辰夢想流と
   浅利義信からの小野派一刀流を合わせて起こしたものである。
    千葉周作は、1841(天保12)年に、弘道館仮開館の際に水戸藩第9代藩主
  徳川斉昭に招かれ水戸藩に仕え,水戸に北辰一刀流が伝えられることとなった。
     北辰一刀流は、2013(平成25)年2月8日、水戸市の無形文化財に指定され、
  現在、水戸東武館古武道保存会によって伝承されている。

 

         5月17日(日)の筑波山神社 
 登山客が多くなった。
 常磐線が東京駅から直通になったため茨城県に来る人が多くなったためか?
 写真中央の2人はグアムから来た二人連れ


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型を守り持ち味発揮、ガマの油口上を演ずる者に必須な資質、芸が芸にとどまらず思索性も

ガマの油売り口上、「語られる言葉」の美・・・・・なによりもまず自分を知ること

弟子は匠の技を体で吸収する 


  

 


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