母かずえ話が続いて恐縮です。
母のことを色々と考えている内に、思い出したことがあるので、今日はそれをお話しようと思います。
父と母は小学生の頃からの幼馴染で(いや、ただの顔見知りかな)でも母は父のことなど歯牙にもかけていなかった。
「お父さんはこまいころ、ゴリラみたいな顔して、走り回って乱暴なことばっかりしてから。お母さんはそんなお父さんと、目を合わすんも怖かったっちゃ。すかんかった~」と言っていた。
あぁそうですか。お父さんにそっくりの私に、よぉ言うたな。爆
母の初恋は、女学生になってから。多分もうお亡くなりになっているので、苗字を出してもいいかな。「清水さん」この名前を、子供の頃から何度聞かされたことだろう。
「清水さん」はちょっと気弱な男性で、母の実家に挨拶に来ようとして、当時母を溺愛していた母の兄に追い返されたのだそう。
母も清水さんのことが大好きだったから、兄のことを随分と恨んだようだったけど、兄に反論するなんてあり得ない時代だったから、我慢するしかなかったそうだ。
その内、父の勤める会社に入社した母は、まんまと父に捕まり、結婚まで漕ぎ着けられたらしい。
「嫌いじゃなかったけど、好きでもなかった。あんたと一緒になれんかったら、オレは死ぬ」と父に言われ、そして実際父は結婚に反対されて、服毒自殺をはかったのだった。
「なんかしらん、ものすご嫌な予感がして、お父さんのこと探したんよ。いつも行きよったおばさんの家に行ってみたら、おばさんは留守で、そこでお父さん睡眠薬を何瓶もカラにして、すごいいびきをかいて寝とったんよ。慌てて救急車呼んだけ、助かったんよね」
「この人本当に死ぬ気やったんや、て思うたら、もうお母さん恐ろしゅうなってしもて、別れたいなんか口が裂けても言えんかった」
「そやけど、それだけ好きなんやったら、浮気もせんやろうし、大事にしてくれると思うたんよ。それは大きな大間違いやった」
そこは本当に母の言う通り。浮気性の父は、何度も浮気を繰り返し、なのにいつも不機嫌で、私たち家族は父の顔色ばかり窺い、父の暴力に怯える毎日だった。
そんなある日、私が小学生の頃だっただろうか。突然清水さんが、昼間父のいない時間に、母を訪ねて家にやって来た。
「かずえさん、今幸せですか?」それを確かめに来たようだった。
その時母が清水さんに何と答えたのか、私は知らない。
だけど後日そのことが父の耳に入り、父は烈火のごとく怒り狂ったらしい。ただ会って話をしただけなのに、疑って半狂乱。
ま、普通に考えれば、妻が昔好きだった人が訪ねて来れば、夫としての父の怒りも理解出来るけど、あんた、だったらもっとお母さんを大切にしなさいよ、と幼心に思ったものだった。
その時清水さんは「この先いつか、お互い年を取って、連れ合いを亡くすようなことになったら、その時は一緒になろう」そう言って帰っていったと、母は言っていた。
83歳になった母が、私と同居するようになり、その日も清水さんの話になったので、私は母に言ってみた。
「ねぇお母さん、清水さんに連絡してみる?お父さんが亡くなってもう7年経つし、いや、別に何年でも良いんだけど、もし清水さんも独りだったとしたら、会ってもいいんじゃない?」
その時の母の嬉しそうな顔。今思い出しても、あんなに幸せそうな母の顔は見たことがなかったくらい。
「大昔の住所しかわからないから、もしかしたら手紙は届かないかもしれない。もう亡くなってる可能性もあるよね。しかも奥さんがまだご健在なら、会うことはは叶わないと思う。それでもいい?」と母に確かめました。
「たった1%の可能性でもえぇんよ。あんた、本当に手紙書いてくれるんね?お母さん、こんな嬉しいことはないよ」
それから私は無い知恵を絞って、懸命に手紙を書きました。封筒の表には「郵便局の方へ。大昔の住所表記なので、届かないかもしれません。ですが83歳の母が、どうしても会いたい人なのです。どうか届けてくださいますように・・・」と書いてポストに投函しました。
数日後、手紙は戻ってきてしまった。でもそこには、郵便局の方の一言がありました。「残念ながら、昔の住所を今の住所に置き換えて配達しようとしましたが、そこにこの方は住んでいらっしゃいませんでした。お届け出来なくて申し訳ないです」
いえいえ、そんなことまでして頂いて、感謝しかありませんよ。母もその文面を見て納得したようでした。
「清水さんはね、造幣局の局長さんにまでなった人なんよ。清水さんと結婚しとったら、お母さん今より幸せやったやろうか」
バカこくでないよ。
そうしたら、あたしはこの世にいないんだよ!笑
先日の面会の時、この話をしていて、娘が言いました。
「お婆ちゃん!お爺ちゃんと結婚してくれてありがとうね~。そうじゃなかったら、ままも私もサンバくんも、み~んな影も形もなかったんだよ~!お爺ちゃんと結婚して正解だったんだよ~」笑笑
母に初恋の清水さんと、会わせてあげることは出来なかったけど、あの時私がやれることは全てやった。だからお母さん、今目をつぶっている間に、沢山沢山清水さんのことを思い出して、夢の中でデートでも何でも、思う存分やるんだよ~。
え?父の気持ちはどうなるかって?それはね、自業自得っちゅーもんです。あの世で歯ぎしりでもしてなさい!父への愛、薄いわ~。笑
母のことを色々と考えている内に、思い出したことがあるので、今日はそれをお話しようと思います。
父と母は小学生の頃からの幼馴染で(いや、ただの顔見知りかな)でも母は父のことなど歯牙にもかけていなかった。
「お父さんはこまいころ、ゴリラみたいな顔して、走り回って乱暴なことばっかりしてから。お母さんはそんなお父さんと、目を合わすんも怖かったっちゃ。すかんかった~」と言っていた。
あぁそうですか。お父さんにそっくりの私に、よぉ言うたな。爆
母の初恋は、女学生になってから。多分もうお亡くなりになっているので、苗字を出してもいいかな。「清水さん」この名前を、子供の頃から何度聞かされたことだろう。
「清水さん」はちょっと気弱な男性で、母の実家に挨拶に来ようとして、当時母を溺愛していた母の兄に追い返されたのだそう。
母も清水さんのことが大好きだったから、兄のことを随分と恨んだようだったけど、兄に反論するなんてあり得ない時代だったから、我慢するしかなかったそうだ。
その内、父の勤める会社に入社した母は、まんまと父に捕まり、結婚まで漕ぎ着けられたらしい。
「嫌いじゃなかったけど、好きでもなかった。あんたと一緒になれんかったら、オレは死ぬ」と父に言われ、そして実際父は結婚に反対されて、服毒自殺をはかったのだった。
「なんかしらん、ものすご嫌な予感がして、お父さんのこと探したんよ。いつも行きよったおばさんの家に行ってみたら、おばさんは留守で、そこでお父さん睡眠薬を何瓶もカラにして、すごいいびきをかいて寝とったんよ。慌てて救急車呼んだけ、助かったんよね」
「この人本当に死ぬ気やったんや、て思うたら、もうお母さん恐ろしゅうなってしもて、別れたいなんか口が裂けても言えんかった」
「そやけど、それだけ好きなんやったら、浮気もせんやろうし、大事にしてくれると思うたんよ。それは大きな大間違いやった」
そこは本当に母の言う通り。浮気性の父は、何度も浮気を繰り返し、なのにいつも不機嫌で、私たち家族は父の顔色ばかり窺い、父の暴力に怯える毎日だった。
そんなある日、私が小学生の頃だっただろうか。突然清水さんが、昼間父のいない時間に、母を訪ねて家にやって来た。
「かずえさん、今幸せですか?」それを確かめに来たようだった。
その時母が清水さんに何と答えたのか、私は知らない。
だけど後日そのことが父の耳に入り、父は烈火のごとく怒り狂ったらしい。ただ会って話をしただけなのに、疑って半狂乱。
ま、普通に考えれば、妻が昔好きだった人が訪ねて来れば、夫としての父の怒りも理解出来るけど、あんた、だったらもっとお母さんを大切にしなさいよ、と幼心に思ったものだった。
その時清水さんは「この先いつか、お互い年を取って、連れ合いを亡くすようなことになったら、その時は一緒になろう」そう言って帰っていったと、母は言っていた。
83歳になった母が、私と同居するようになり、その日も清水さんの話になったので、私は母に言ってみた。
「ねぇお母さん、清水さんに連絡してみる?お父さんが亡くなってもう7年経つし、いや、別に何年でも良いんだけど、もし清水さんも独りだったとしたら、会ってもいいんじゃない?」
その時の母の嬉しそうな顔。今思い出しても、あんなに幸せそうな母の顔は見たことがなかったくらい。
「大昔の住所しかわからないから、もしかしたら手紙は届かないかもしれない。もう亡くなってる可能性もあるよね。しかも奥さんがまだご健在なら、会うことはは叶わないと思う。それでもいい?」と母に確かめました。
「たった1%の可能性でもえぇんよ。あんた、本当に手紙書いてくれるんね?お母さん、こんな嬉しいことはないよ」
それから私は無い知恵を絞って、懸命に手紙を書きました。封筒の表には「郵便局の方へ。大昔の住所表記なので、届かないかもしれません。ですが83歳の母が、どうしても会いたい人なのです。どうか届けてくださいますように・・・」と書いてポストに投函しました。
数日後、手紙は戻ってきてしまった。でもそこには、郵便局の方の一言がありました。「残念ながら、昔の住所を今の住所に置き換えて配達しようとしましたが、そこにこの方は住んでいらっしゃいませんでした。お届け出来なくて申し訳ないです」
いえいえ、そんなことまでして頂いて、感謝しかありませんよ。母もその文面を見て納得したようでした。
「清水さんはね、造幣局の局長さんにまでなった人なんよ。清水さんと結婚しとったら、お母さん今より幸せやったやろうか」
バカこくでないよ。
そうしたら、あたしはこの世にいないんだよ!笑
先日の面会の時、この話をしていて、娘が言いました。
「お婆ちゃん!お爺ちゃんと結婚してくれてありがとうね~。そうじゃなかったら、ままも私もサンバくんも、み~んな影も形もなかったんだよ~!お爺ちゃんと結婚して正解だったんだよ~」笑笑
母に初恋の清水さんと、会わせてあげることは出来なかったけど、あの時私がやれることは全てやった。だからお母さん、今目をつぶっている間に、沢山沢山清水さんのことを思い出して、夢の中でデートでも何でも、思う存分やるんだよ~。
え?父の気持ちはどうなるかって?それはね、自業自得っちゅーもんです。あの世で歯ぎしりでもしてなさい!父への愛、薄いわ~。笑
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