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息子へ 第12話 (愚かな母)

2019-12-19 05:55:55 | 「息子へ」
色褪せてしまった小冊子

息子が結婚して家を出る時(今から12年前)に、私から息子へのはなむけの言葉として持たせた「息子へ」という一冊の小冊子。そこから抜粋した、今回は第12話(愚かな母)をご紹介します。

少々長いので、どうかお時間のある時にご覧ください。



おまえに
心から詫びなければならないことがある。

そう言えばもう
何のことか
おまえにも察しがつくだろう。


いつか何かの本で読んだことがある。

『「子」にとって「親」とは
尊敬するべき者であり、
「親」はその尊敬に値する人格形成のため努力を怠らず、
心からの愛情と
威厳を持って「子」にあたるべきである。』

私にとっても
ある意味理想の「親子関係」を表す一端である。
だが、理屈では明確なのに
実行するのは
とても難しい。


「親」であると同時に「一人の人間」であり、
言うまでもなく私など
過ちだらけの人間だから。


それにしても
おまえの過ちを綴る時
あんなにスラスラと書けたのに
自分のこととなると
何と言い訳がましいことか。


元々私とは
こんなにも卑小な人間だったのかと
改めて認識させられたようで
ちょっぴり気が滅入っている。
理想とはかけ離れているけれど
「親」としての威厳をほんの少しでも取り戻す為にも?
(やっぱり動機は不純・・・)
心から
おまえに謝らなければね。





「ママは我慢強いよ」
「ホントホント、痛いとかって滅多に言わないもんねー」
病気をしてもケガをしても
弱音を吐かない私に
おまえたちはいつもそう言ってたね。


ほんの掠り傷でも大袈裟に痛がって
すぐに包帯をしてくれとせがんでいたおまえにすれば
「この人ホント強ぇ~」って思ったの
無理もないけど。


我慢強いと言われる度に
えらく褒められたようで
すっかりその気になっていたけれど、
その内それは
ちょっと違うのではないかと
疑いを持ち始めた。



「痛みに強い」のは
実を言えば
「痛みに鈍い」だけ?
物事には必ず表と裏がある。
それにしても
家族ってありがたい。
みんなして善意に解釈してくれてたんだね。


それでもやっぱり
私の場合、
後者のパターンに違いない。


おまえはもう
分かりきっていると思うけど、
そもそも
私という人間の
そそっかしさは半端じゃない。
物体と自分との距離を測るのが
特に苦手だよね。


骨折歴8回なんて(その後回を重ね、現在15回)
恥ずかしくて余り大きな声で言えないけど、
(一年間で4回骨折したことがあった。)
こうなるともう
いつどこで、どこをどうして
骨折したのだったか
思い出せないほどだ。


考えてみると背骨を圧迫骨折して入院した時以外は
一度も仕事を休んだことがなかった。


私の行動が
普段と余り変わらないからといって
休みのたびに
「ねぇ、ママ、卓球しようよ!」と
元気よく誘ってきた小学生のおまえには
いささか閉口したけどね。


鈍いのが
痛みだけならよかったのだけど、
悲しいことに
私の鈍さは痛みに限らなかった。


だから、
物事がいつも順調に進むなんて
思ってはいなかったけれど、
「流れが変わった」ことに気付いたのは
かなり時間が経過してからだった。


あの頃
自分がどうしてあんな風になってしまったのか、
考えることも、
いや、気付くことさえ
私にはできなかった。


新しく立ち上げた会社での
新しい仕事に必死だった私。
残業は勿論のこと
泊り込みも珍しくないほど忙しかった。
だけどそれによって
たくさんのことを知ることができた。
そしてそれが
小さいながら形になっていくことに
達成感を得ることもできた。


キッカケは何だったのだろう。


「職場の人間関係の不和?」

言葉にするとたった一言なんだね。


元来、人に対して気長で楽観的な私が
その「彼女」の事を考えると
胃が痛むようになった。


数少ないスタッフも
表向きは尤もらしい理由をつけていたけど、
「これ以上〇〇さんの下で仕事をしたくないんです」と
私の前で本音を吐いて、
辞めていった。
何度欠員補充をしても同じことの繰り返し。


些細なことで
感情を剥き出しにし、
しかし、そのことの自覚が全くない彼女と
何とか折り合えないかと
話し合いもしてみたが、
結果は火に油を注ぐようなものだった。


営業の責任者である彼女と
管理部門の責任者だった私。
柱とならなければならなかった二人が
そんな有様だった。


人の上に立つということが
どういうことなのか
やっと少し分かってきた気がしたが
だからといって解決できる力量を
私は持たなかった。



その頃おまえは
生まれて初めての
「本気の勉強」に夢中だった。


当然のことながら
私の変化になど気付く余裕もなかったよね。


そして程なく
何もかもが順調だったおまえは
「成績が良くて真面目な自分」を勘違いし始めた。


今思えば、小さい頃から
出来の良い?お姉ちゃんのそばで、
いつも冷や飯を食べていたおまえが、
初めて温かいご飯を眼の前にしたようなものだったんだろう。
本当に、ただ嬉しかったんだろう。
だから、有頂天になってしまっただけ、だったんだろうね。



中学時代の仲間達とバッタリ出会った日。
うちに帰ってくるなり、
鼻で笑いながらこう言った。


「あいつら、何考えてんだろ。
未だにあんなことばっかやって。何も考えてないバカだよね。
将来どうすんだよ。飲みに行こうって誘われたけど、断ってきたよ。あいつらと付き合ったって何も得るものないもんね。
もっとちゃんと考えて勉強でもしろっつーんだよ。」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


胸が苦しかった。
息が詰まった感じだった。





何かあると、
浮かない顔の私に
「どーしたの?何で元気ないの?」と
いつだって私を受け止め
冷静に意見し、
私の元気を取り戻してくれていたおねえは、
1年程前から、
将来の夢のために家を離れていた。
新幹線で4時間半の距離だったよね。


おねえの不在が、
これほど私に大きな影響を与えるなど、
実は考えたこともなかった。
全ては起こってしまってから
分かったことだったけれど、
あの時はまだ、そのことにも気付いてはいなかった。


そして、
気付かぬ内に
「逃げ込んだ」という自覚もないままに
私が逃げ込んだ先は
タチの悪い「お酒」だった。



パパが「私のもと」からいなくなってしまったあの時も
おまえたちが寝静まった後、
毎晩台所の片隅で、
一升瓶のウィスキーを抱えて、
正体をなくすまで飲み続けた。
自分がどれほど弱い人間か、
あの時にイヤというほど分かっていたはずなのに、
そして再び「お酒」に逃げ込んでいる自分がいるのに、
そのことの自覚もなかった私。



「おまえなんかね、大勘違い男だよ。
自分がちょっと勉強して成績良くなったからって、
資格ってそんなにすごいのか。
ただ単に、運が良かっただけじゃぁないか。」



「だいたいおまえは生意気なんだよ。
人が辛い思いしてるのなんて、全然わかんないくせに、
オレは全部分かってるみたいな顔して。
自分はすごいみたいな顔してさ。
頑張れるのだって、おまえの努力だけじゃないだろ。
たまたま、努力できる能力を持って生まれて、
たまたま、そういうことが気になる親の元に生まれて、
たまたま、今があるだけなのに、昔の友達バカ呼ばわりかよ。
人として一番バカはおまえなんだよ。」



「無神経なとこ、パパそっくりだよ。
そうやって、気がつきませんでした、みたいな顔して、
人のこと傷つけんだよ。」



酔っ払った私が、
どんな罵声を浴びせても、
おまえはただ、
「うん、うん・・・。」と
ちょっと悲しそうな顔をして
うなずくだけだった。
そんな生活が続いたある日、
おねえから突然電話が掛かってきた。


「ねぇ、ママ、どうしたの?何があったの?」


「え?何がって、何が?」


「ゆうべ、修平(仮名)から電話が掛かってきたんだよ。
あいつ、泣きながら
『おねえちゃん・・・、帰ってきてよ・・・。
おねえちゃんじゃなきゃ、ダメなんだよ。
オレじゃ、無理なんだよ。
オレ、もう限界だよ。』って。
あいつ、泣きじゃくって電話してきたんだよ。
あいつが泣くなんて、余程のことだと思ってさぁ。」



ガツンと
頭を殴られた気がした。



どこの世界に
息子をそこまで追い詰める母親がいるのか。


情けないけれど、
それは、
紛れもなく
私のことだった。
あの時、
吐き続けた
たくさんの私の暴言に
一言の反論もせず、
ただただ黙って
おまえなりのやり方で
おまえは私を受け止めてくれていた。


そんな簡単なことさえ分からなかった
愚かな母親を
おまえはどんな気持ちで受け止めてくれていたのだろう。



本当に
至らない母親で申し訳ない。


願わくば、
こんな私を許して欲しい。



「大丈夫だよ。あなたが言ったこと
たぶん全部本当のことばっかだったし。
オレ、おねえみたいに
いいこと言ってあげられないし。
もう気にしなくていいからさ。」


本当に「我慢強い」のは
私なんかではなく
おまえのことだったんだね。




何年経っても、何度読み返しても、後悔と懺悔の涙がこぼれます。きっと、私を母と選んでこの世に生まれて来てくれただろうに・・・。あの時はごめん、本当にごめんなさいと、心から申し訳なく思います。これをきっかけに、二度と飲まれるお酒は止めようと、固く誓いました。心が荒んだ時、お酒を飲むのは止めました。飲むなら楽しいお酒を!って、飲まなきゃいいんですけどね。笑

これまで私のこと、良いお母さんだ・・・なんて言ってくださっていたブロ友の皆さん、ガッカリさせてすみません。でも息子によって、本当に弱くて愚かな自分に気付き、反省し、あの頃より少しはマシな人間になれたかな?ん?それは気のせいか?笑


既投稿の記事を貼ってみました。宜しかったらご覧ください。
「息子へ」第1話 (偶然の幸運)
「息子へ」第2話 (ザルで水を汲む如し)
「息子へ」第3話 (たこ食った事件)
「息子へ」第4話 (目から鱗)
「息子へ」第5話 (父親みたいな人)
「息子へ」第6話 (忘れてはならないこと)
「息子へ」第7話 (思春期の困惑)
「息子へ」第9話 (高校生活)
「息子へ」第11話 (勉強の楽しさ)


第8話・第10話は割愛しております
これに懲りず、続きもまたご覧頂けると嬉しいです。
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