Last Updated: March 26,2021
7月25日付けの金融メデイア「Finance Magnates」は「ドイツのメディアは、Bitcoinをテロ攻撃において使われる武器の購入と結びつける」と題する記事を載せた。Bitcion自体の既存通貨に替わるサイバー時代の新たな決済手段として、各国の中央銀行や財務省、金融監督機関、研究機関、わが国のメガバンク等での行内通貨試行等、話題には事欠かない。
一方で、正確に論じた信頼度の高いレポートが少ない点も否めない。時間の関係で網羅するには程遠いが、今回は前述の記事を要訳するとともに、参考になるであろう内外レポートをあわせ引用する。
なお、本文を読んで理解されると思うが、「Bitcoin」はデジタル暗号化通貨の1つであり、わが国を含む世界中には例えば「Ripple 、Litecoin 、MonaCoin 」等無数にあるといって過言でない。はっきりいってこれらは完全に自己責任の決済手段であり、既存の通貨制度のように国家の保証はまったくない。
さらに、8月3日香港のビットコイン取引所Bitfinexがハッキング被害を受けたというニュースが話題となっている。香港のビットコイン交換所Bitfinexが、ハッキングによりビットコイン11万9,756枚が盗まれたことを公表した。ビットコイン11万9,756枚は、3日現在、約72,00万ドル(約73億円)に相当する。ハッキングニュースがでた火曜日(今月2日)、ビットコインの価値は23%ほど急落。翌日、少しばかり回復し545ドル20セントに。また、Bitfinexは、今回のハッキングはビットコインのみがターゲットとされており、他のデジタル通貨は無事だと発表している。(8月8日GIZmodo記事から一部抜粋)
今回のハッキングの原因や被害の範囲等については、なお今後の調査を待つことになろうが、世界最大規模のドルベースのビットコイン交換所の1つであるBitfinex以外がハッカーのターゲットになることは言うまでもないし、デジタル通貨の各国の決済制度上の法整備等も遅れている現状から見て、ユーザーが負う負担額の大きさ(各ユーザーはアカウントの約36%の損失を負担するという記事もある)問題の根は深いと考えざるを得ない。
1.テロ資金とビットコインの関係をめぐるドイツ・メデイアの見方
ドイツからのレポートは、ミュンヘンのショッピングモールでの銃乱射で使われた銃がDarknet (注1)の上でBitcoinで買われたと主張している。(注2)
ドイツのメデイア・レポートは、ミュンヘンテロ銃撃で使われた銃がDarknet上でBitcoinで買われたと主張する。
ドイツが7月24日のテロ攻撃(ドイツ南部のアンスバッハ(Ansbach)の自爆攻撃)に対処しようと試みており、前の事件の意味合いをかたちつくり始めたばかりである。ドイツのメディアの多数の報道は、ミュンヘン銃撃をBitcoinとヨーロッパ加盟国政府により暗号化通貨使用に対する更なる取締り強化につながるかもしれないと関連づけている。
明らかに、各メデイアが一致している指摘点は、ガンマンがDarknetの上で銃を不法に得たにちがいないという点であり、またそれを報告したドイツの新聞社の多くが特に秘密のネットワークの上のユーザーが好む代金の支払方法としてBitcoinに言及している点である。言うまでもなく、これは、捜査がまだまだ終わっていないという事実にもかかわらずである。
これら事件にかかるドイツの政治家による即座の反応は、主に国家として厳しい銃の非所持法の強化という要求である一方で、メディアが増加するテロリズムの脅威と結びつけていることを考えれば、暗号化通貨による匿名のオンライン取引の取締りを求める要求ははるかに遅れていることは間違いない。ヨーロッパの金融規制・監査機関はすで以前から長い間彼らのサイト上でbitcoinを取り上げていた。そして、Bitcoinとテロ・ファイナンス(terror financing:テロ資金供与やマネーローンダリング等)、麻薬密売(drug trafficking)、租税回避(tax avoidance)や極悪投機事業(nefarious ventures))を関連づけた。
我々はそれがどんな形であこれらの事件に関連があったという証拠はないにもかかわらず、パリのテロ攻撃の後、これがヨーロッパの暗号化通貨交換においてさらに匿名性を奪うべきという要求につながったと引き続き見ている。現在、bitcoinが実は武器の購入のために多勢の殺人者により用いられる最も好む決済方法とみなされるとき、ヨーロッパの規制・監督当局はそれらを阻止すべく行動するためにすべての「合法性」と「緊急」を持つことになろう。
2.デジタル通貨をめぐる主な内外のレポート例
(1) 「デジタル通貨」の特徴と国際的な議論 (日銀レビュー 2015年12月)
わが国の中央銀行である日本銀行決済機溝局がまとめたもので、体系的、国際比較等を踏まえたものである。
(2)
「ビットコインとはなんだったのか、仮想通貨とサイバー取引の現在」岡田仁志(国立情報研究所 情報社会
2014年度市民講座「未来を紡ぐ情報学」(2014年6月26日開催)における参加者からの質問(57件)に丁寧に答えて おり、初心者にもわかりやすい。
(3) Bitcoin(ビットコイン)投資の始め方(まとめ)
(5)英国財務省の3年間にわたるデジタル通貨の決済面の利益と危険性(ALM)に関する見解と証拠を求める検討経緯
①2014.12.3 英国財務省のデジタル通貨に関する意見具申
リリース文:デジタル通貨の決済面の利益と危険性(ALM)に関する見解と証拠を求めるたもの。
本文:「Digital currencies: call for information」(全28頁)
②前記①に対する財務省の意見のとりまとめ
2015.3.18英国財務省リリース「Digital currencies: call for information」
本文: 「Digital currencies:response to the call for information 」(全28頁)
③前記②を受けた2016.4.25 英国財務省レポート「反マネーローンダリングおよび反テロ資金から見た行動計画(Action Plan for anti-money laundering and counter-terrorist finance )」
(6) MUFGコインの衝撃-「三菱UFJ銀、独自の仮想通貨」がもたらすもの
(7)「法とコンピュータ」No.34《特集 暗号通貨の諸問題(ビットコインを題材に)/IoTの法的課題・個人情報保護》2016 july (注3)
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(注1)ダークネットとは、インターネット上で到達可能なIPアドレスのうち、特定のホストコンピュータが割り当てられていないアドレス空間のことである。ダークネットは未使用のIPアドレスであり、通常はダークネットに対してパケットが送信されることはほとんどない。しかし実際には、ダークネット上で相当数のパケットが観測されるという。
ダークネット上を流れるパケットの多くは、不正な行為・活動に起因するものと言われている。情報通信研究機構(IPA)は、ダークネット上を流れるパケットの主な種類として、「マルウェアが感染対象を探査するためのスキャン」、「マルウェアが感染対象の脆弱性を攻撃するためのエクスプロイトコード」、「送信元IPアドレスが詐称されたDDoS攻撃を被っているサーバからの応答」を挙げている。( IT用語辞典から一部抜粋)
(注2) ドイツ第3の都市・南部ミュンヘンの大規模商業施設で7月22日午後6時(日本時間23日午前1時)前、男が銃を乱射し、9人が死亡し、子供を含む16人が負傷した。うち3人が重傷。地元警察は23日、容疑者はイラン系の男(18歳)で、単独犯とみられると明らかにした。(2016.7.23外務省海外安全ホームページ等参照)
(注3) 『法とコンピュータ』は「法とコンピュータ学会」の学会誌であり、市販されていない。8月23日に筆者の手元に届いたので補足した。
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