Financial and Social System of Information Security

インターネットに代表されるIT社会の影の部分に光をあて、金融詐欺・サイバー犯罪予防等に関する海外の最新情報を提供

米国電子政府の科学情報検索サイトに連邦議会図書館「議会法案検索専門サイト」が追加された本当の意義

2011-02-09 21:35:08 | EU等のeGovernment



 1月31日付けで手元に連邦議会図書館“Law Library of Congress”ブログから新情報が届いた。
 初めはその意味が良く理解できなかったこともあり、そのまま放置していたのであるが、時間が出来たので改めて読み直してみた。内容自体は簡単な話であるが、一方「電子政府問題」として考えたとき、その重要性について認識したので参考までにやや詳しく紹介する。

 この情報自体は、わが国では2月4日付けで独立行政法人科学技術振興機構(JST)が「STI Updates 学術情報流通ニュース」で取上げている。基本的にはそこに書かれているとおりである(誤字
(注1)は別にして)。しかし、実は米国連邦政府の電子政府の科学技術情報ポータルである“Science. gov” (注2)の歴史的なフォローがわが国における同様の問題を考える上で重要なことを再認識した。JSTの役割から考えても、このような観点から本格的に解説して欲しいと考えたが、その期待が満たされるにはなお時間がかかりそうである。

 今回のブログは、このような観点から“Science.gov”の機能強化の歴史と同ポータルへの“THOMAS”機能の追加の意義等について筆者なりにまとめて簡単に説明するものである。


1.米国連邦電子政府サイトにおける“Science.gov”の基本的な役割
 “Science.gov”は、連邦政府による科学情報と研究結果に関するゲートウェイウェブサイトである。
 “Science.gov”は、14の連邦行政機関の18の科学分野研究機関が率先して取組む省庁横断的なゲートウェイである。これら連邦機関は同サイトを管理するため機関の協力による「共同同盟(Science.gov Alliance)」(注3)組織化、役割分担している。

 2008年9月に更新した第五世代(Science.gov 5.0)(注3-2)では次の主な特性と能力を備えた究極的といえる科学分野の検索サイトを実現している。(注4)
①1つの質問に対し、45以上の科学データベースにアクセス出来、2億ページにわたる科学分野情報にアクセスを可能とした。
②検索作業を支援するためユーザー入力による「副題」、「日付」での検索結果の集団化を実現した。
③検索用語に関連する“Wikipedia”の検索結果とリンクさせた。
④利用者が入力した検索用語に関係づけられた“EUREKA News” (注5)の結果を確認できるようにした。
(⑤以下は、一般的な内容なので省略する)

 これらの連邦政府機関の多くは「CENDI」(注6)のメンバーである。“Explore Selected Science Websites by Topics”の部分はCENDIがメンテナンスしている。“Science.gov”ウェブサイトはテネシー州のオークリッジに本部を有する連邦エネルギー省科学技術情報局(OSTI)が担当し、また深層検索(deep Web Search) (注7)能力を提供する。

2.“Science.gov”の今日までの機能改良の経緯
(1)第一世代
 2002年12月に連邦政府による初めての広く一般人がアクセスでき、政府が保有する科学・技術分野に関する広大な情報の一元的検索できるサービスが発足、稼動を開始した。

(2)第二世代
 2004年5月に連邦政府科学検索に関するリアルタイムでの関連性の順位付け機能(real-time relevancy ranking)を導入した。この技術は連邦エネルギー省(DOE)により資金支援を受けたもので、一般市民が政府の保有する情報倉庫の内容を選別し、かつ利用者個人の要求を最も満たす結果を引き出すことを支援するものである。同時に、更なる検索機能(advanced search capability)やその他機能が追加された。
 2005年2月には無料か使い勝手のよい「注意喚起情報メール提供」サービスを始めた。このサービスは、市民が自分が関心を持つ分野についての最新の科学開発情報が電子メールで受信できるサービスである。同サービスでは選択した情報源から最大25件の関連情報が送られてくる。注意喚起メールに添付された情報は個人化された保管ボックス(Archive)に6週間保管される。この保管庫サービスでは過去の利用実績が検証でき、また注意喚起して欲しい検索条件の編集の変更が随時可能である。

(3)第三世代
 2005年11月に稼動したが、より精度が高いレベルの検索が可能となった。連邦科学データベースに対する質問が可能となり、加えて分野別検索が増強され、またユーザーによる広範囲なブール値 (注8)を用いた検索方法が選択肢として追加された。

(4)第四世代
 2007年2月、更なる洗練された検索質問サービスが導入された。初めて常連利用者は現データを検索することが可能となった。さらに関連結果の中で関連性の順位付けアルゴリズムは全文に対するランキングを可能として機能的にさらに洗練された。該当文書の日付は順位付け目的において優先された。また新機能として常連は仲間や友人と電子メールで検索結果を共有できるようになった。

3.今回の追加された内容の確認手順
(1)“science,gov”のポータルページを開く
(2)画面右上の“SCIENCE GOV WIDGET”NEWをクリックする。
(3) Science.gov Widgetの文中“authoritative U.S.government science information”をクリックする。
(4)“Federal Regulations and Legislation”に“NEW THOMAS,112th Congress”および“NEW THOMAS,111th Congress”が追加されている。

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(注1) 誤字の個所は2月4日付けSTI学術情報流通ニュースの「・・・現時点の検索対象は、第111回議会(2009-2010)と第12回議会(2011-2012)の法案。」で、第112回が正しい。ちなみに“Science.gov”の原文URLは、http://www.science.gov/thomas.html である。

その後、JSTは訂正を行っている。

(注2) 国立国会図書館の“Science.gov”の解説(2009年5月10日更新)は次のとおりである。
「米国連邦政府のポータルサイトFirst govの科学技術版で、政府系機関の有する文書、データベース、書誌情報などの信頼性の高いデータを対象に一元的な検索ができます。2002年12月に12省庁の17機関の相互協力により、Version.1が公開された後、2005年11月には現在のVersion.3にアップグレードされ、検索結果のランク付け手法やブール演算子による検索機能が改善されました。2006年3月時点で、28のデータベース、1,700以上のWebサイトの総計47,000,000ページ以上が検索対象となっています。」
しかし、本文で述べたとおりその内容はかなり古い。2000年に稼動開始した連邦政府の電子政府ポータル“First .gov.”は2007年1月に“USA.gov.”に名称が変わっており(国立国会図書館自身がこの件を報告している)、また“Science.gov”は2008年9月にバージョン5.0で新機能等が追加されている。1回の検索で、検索可能科学データベースは45で、総ページ数は2億ページ、リンクできる科学関係ウェブサイト数は計2,000以上となっている。(“Science.gov”の概要説明より抜粋)

(注3) 2008年09月16日付けSTI学術情報流通ニュースは次の内容を報じている。
「Science.govは、9月15日、サイエンスを強化し2億ページを検索するバージョン5.0を発表した。
第5.0版に搭載したのは、(1)7つの深層ウェブデータベース、(2)検索結果をサブトピックスや日付でグループ化し、必要な科学情報のみを探せるクラスタリング機能、(3)更新アラートサービス機能。
また、検索結果のeメール送信、個人用研究ファイルや引用ソフトウェアへのダウンロード、検索語に関するWiki最新情報の入手、検索語に関するEureka News最新版の閲覧が可能。」
 最後に米国科学技術情報局 (Office of Scientific & Technical Information、OSTI)へのリンク情報を掲示している。
 しかし、わが国でこの訳文だけを読んで具体的な内容が理解できる一般人はいかほどいるであろうか。STIの電子政府にかかる社会的な役割から見て、筆者がここで補足した程度の解説は都度実行して欲しいと考えるがいかがか。

(注3-2)NEDO 海外レポートが2008.10.22「Science.gov 5.0 の立ち上げで科学情報へのアクセスが拡大(米国)-米国政府の科学情報リソース 200 万ページがインターネット上で利用可能-」が詳しく解説している。

(注4) わが国の“science .gov 5.0”の解説として、JST以外に独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)も取上げている。説明内容はJSTに比べると各種の関係データを調べた結果がうかがえる。しかし、その内容において致命的なミスがある。1アクセスで検索できるページ数は2億ページである。200万ページではない。

(注5) “EUREKA”について補足しておく。
「ユーレカ・イニシャチブ(EUREKA)は参加国の企業と研究機関に対し、国境を越えて製品や工程技術やサービス等を開発するための市場志向の共同研究を行う道を開いている。ユーレカの目的は、欧州に存在する専門家人材やノウハウや研究施設及び資金を束ね、それを通じて先端技術に基礎をおいた製品や製造技術を開
発し欧州産業の国際競争力を強化するために貢献することである。ユーレカは1985 年フランスの提案によりパリで開催された欧州理事会で設立が決定されているからEU フレームワークプログラムとほとんど同時に活動を開始している。
ユーレカは設立後EU と西欧の枠を越えた多数国の協力による共同研究開発活動として発展してきた。その特徴を示すキーワードは、市場性のある成果志向、企業参加者が研究の主体となり大学等科学基盤の能力を活用、企業ニーズを反映した研究テーマ提案のボトムアップ方式、柔軟な運営体制、研究資金が参加者の属する政府やEU からの補助金あるいは自費などである。」(2003年8月ジェトロ「EU の産業技術開発政策の動向」から一部(38ページ以下)抜粋)
“EUREKA”の具体的な活動内容については、“EUREKA”のHP を参照されたい。

(注6) “CENDI”は,以下述べる14の米国連邦政府機関の科学技術情報担当シニア・マネージャーによる省庁間グループである。省庁別の専門図書館や情報局など12の機関が参加しており,連携や情報交換を通じて単独での活動よりも大きな力を発揮することに加え,効果的な科学技術情報の提供によって米国の科学技術プログラムを支援することを目的としている。1985年,4機関の覚書によって設立され,その後,順次他の機関が参加した。前身は1960年代初頭に設置された科学技術情報委員会(COSATI)にさかのぼる。定期的な運営会議,事務局を持ち,議会への働きかけなどを行うほか,著作権と知的所有権,科学技術情報政策,科学技術情報ポータルscience.govの運営などの5つのワーキンググループが活動している(独立行政法人 科学技術振興機構(JST)の解説から抜粋のうえ、 “CENDI”のHP の内容に則して修正した。)
①国防総省・国防技術情報センター(DOD:defense Technical Information center)
②連邦環境保護庁・研究開発および環境情報局(EPA:Office of Environmental Information:OEI)
③政府印刷局(Government Printing Office)
④連邦議会図書館
⑤NASA米国科学技術情報局(NASA Scientific and Technical Information Program)
⑥連邦農業省・国立農業図書館(National Agricultural Library)
国立公文書館(National Archives and Record Administration)
⑧連邦教育省・国立教育図書館(National Library of Education)
⑨連邦保健福祉省・国立医学図書館(National Library of Medicine)
全米科学財団(National Science Foundation)
⑪連邦商務省・技術情報局(National Technical Information Service)
⑫連邦運輸省・国立運輸図書館(National Transportation Library)
⑬連邦エネルギー省・科学技術情報局
⑭内務省・地質調査所(USGS/Biological Resources Discipline)

(注7) “deep Web Search”の具体的なアクセス方法は http://deepwebtech.com/で確認できる。

(注8) “Boolean capability”は論理演算の「真偽値」をいう。複雑な式が真になるか偽になるか判断することをブーリアン演算(論理演算)と呼ぶ。コンピュータの扱う処理や計算の多くは、最終的に論理演算に変換されて実行される。身近な例では、データベースやサーチエンジンに複雑な検索を行わせる時に使われている。(Wikipedia から引用)

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EUにおける産業災害回避のための危険物情報のリアルタイム情報プラットフォームの概要

2010-11-07 06:41:16 | EU等のeGovernment


Last Updated :November 11,2010

 産業災害は全世界で毎年数千人の生命に影響を与えるが、危険物の使用状況についての企業からの情報がより広くかつ容易にアクセスできることで、多くの危険を回避できる。この点に着目して「eTEN」(2006年2月25日付け(2010年11月6日更新)のブログ参照)プログラムの下でEUの研究者が開発した最新の危険物情報についてインターネットを介してリアルタイムで情報の統合・配分を行うプラットフォームが「e-Seveso」である。これに関する欧州委員会指令は企業規模にかかわらず産業・化学事故の防止の観点から取り組んだものである。

 欧州委員会がこの問題に取り組んだきっかけは、1976年のイタリアの化学プラント工場の火災事故(約2千人以上に影響を与えた強い有毒雲が発生)であった。このような事故は世界中どこでも起こりうる問題であり、第一次の「Seveso」の改善版として1996年には企業が使用・格納している危険物について①情報の保有、②リスクアセスメントや最終的な事故の予防のため監督機関や行政機関における情報の共有を目指すEU指令「Seveso Ⅱ(Directive 96/82/EC )」が公布された。(注) 

 しかし、このような情報の更新により実戦的な予防が100%保証されるわけではない。すなわち、中小零細企業においてそれを実際に適用、維持、モニタリングする人的・財政的な方法、セキュリティ・システムが欠けている場合が問題となる。

 特に消防士など緊急サービス機関は火災時に工場内に侵入する際、どのような化学物質がどの程度あるのかを知らないままに行動せざるを得ないのである。

 イタリアのバレンシア地方では、おもちゃの製造工場や化学物質を使用・保存するプラスチック加工、靴やセラミック加工業者が多く、さらにそれらのほとんどは小企業なのである。またそれらの工場は街の中心から数百メーターに位置している。

 「e-Seveso」プラットフォームは、異なるビジネス分野の情報を統合する倉庫を作ることで潜在的な生命保護へのアクセスを可能とするのである。すべての企業が最低限行うべき責務は、毎週、手入力で自社の工場などが格納している科学物質の質量等を入力することであり、その結果、公共機関や消防署などが相互に利用可能となるのである。

 さらに、より高度な情報システムとしては、企業は①倉庫内の温度や湿度、②ガスやけむりの量について測定値に基づくリアルタイム・データベースの作成とこれらの情報を自動的に更新する一定のセンサーシステムを採用がある。

 仮にこれらのセンサーシステムがない場合でも、事故発生時に公共機関や消防署の担当者は無線を通じリアルタイムで化学物質の内容や今どのような対策を採るべきかについて継続的に知りうるのである。

 さらに、このプラットフォームは国家、地方、地域などにおける異なる公的機関や民間機関の利害関係者の損害調査や警報機能のシステムの相互運用性を確たるもの(公開基準:open standards)にする。このオープンで拡張性をもった構造は、①地図システム、②地理・位置情報、③新たな無線情報システムを含むもので、情報の共有、統合、配分といった未来技術(emerging technology)を採用している(完全な安全を実現するもの)。

 このシステムの試作品は2005年9月の完成目前に公的機関や消防署などの利害関係者により検査され、きわめて高い関心を引き出している。EUの約150万社の産業・化学分野の企業で利用され、「sevesoⅡ」指令により影響される中小企業等にとっても、また「e-Seveso」プラットフォームの潜在的な利用はEU全体のセキュリティにとって好ましいことといえよう。

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(注) 欧州委員会は加盟国における本指令の遵守を目的としてガイダンス「EU指令96/82/ECの要求に合致するための安全性報告の準備にかかるガイダンス(Guidance on the Preparation of a Safety Report to meet the requirements of Council Directive 96/82/EC (Seveso II))」を公布している。

〔参照URL〕

http://cordis.europa.eu/ictresults/index.cfm?section=news&tpl=article&ID=80707

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(今回のブログは2006年2月27日登録分の改訂版である)

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EUの最新動向に関する統一的新ポータル「Europa」の登場

2010-11-06 19:20:49 | EU等のeGovernment


 Last Updaed: April 1 ,2021


 本ブログでたびたび紹介しているEUの最新動向について、最近、情報の一元的提供を意識してEUに新ポータル「Europa」が登場した。

 EUの欧州議会(European Parliament)欧州理事会(European Council)欧州委員会(European Commission) 、欧州連合理事会(Council of the European Union:閣僚理事会(Council of Ministers)とも呼ばれる)などの政治機能の最新動向でさえフォローするのは大変なのであるが、そのほかに欧州司法裁判所(Court of Justice of the European Communities:CJEU)や欧州会計検査院(European Court of Auditors)など多くの公的機関をそれぞれフォローすること自体至難の業といえよう(公的機関について日本語で体系的な理解するには、現状は外務省、国立国会図書館、駐日欧州委員会代表部のサイト等で勉強するしかないが、いかにも企業や研究者向けではない)。

 特に、EUの最近の取組み課題をテーマ別にフォローするには、たとえば①電子政府の各国の取組み状況やEU全体としての戦略的課題に関しては「IDABC(Interoperable Delivery of European eGovernment Services to public Administrations)」 (注)、②科学技術・農業、移民問題、セキュリティ問題等約1200項目についての最新の調査研究内容ならびにEU全体の行動計画と個別テーマに関する資料の検索には”Research” 、③ネットワークや情報セキュリティ研究機関である”ENISA(European Network and Information Security Agency)”の動向、④EU内の企業の協力のものでの全体的な長期的調査研究開発計画(フレームワーク・プログラム(FP):現在は2002年―2006年計画のFP6である。2007年―2013年のFP7の草案が欧州議会に図られる予定である。)をフローする「IST(情報社会に求められる継続的な技術革新プロジェクト」、⑤IST(Information Society Technologies)活動をEU全体の問題として取り組むべく、研究開発プログラム、革新性の内容、EU全体への最新情報提供、加盟国の政府・地方機関と連携するためのゲートウェイ機能、加盟国の国民・企業という個々への無料の情報提供サービスである”CORDIS”サービス、⑥また、個人・起業・行政機関において電子情報社会における機会均等の実現、すなわち「デジタルデバイドのない社会作り」を目指すことを意図する「eTEN(Trans-European Networks)」などのフォローが基本となる(これらのサイトの最新ニュース情報などについては、わが国においてもほとんどが個別メーリングリストに登録後、閲覧は可能である)。

 上記の述べたように、デジタルデバイド問題等も含めたEUの「電子政府」の取組みの中で「Europa」が一般市民や企業等に向けた一元的なポータルとして登場したこと自体当然といえるし、一方わが国としては、その内容、読みやすさなどの研究は本格的な「電子政府」構築の課題をさらに進める上で、貴重な研究テーマといえよう。

 なお、「IST」や「CORDIS」の概要については、改めて紹介する予定である。

(注) IDABC(Interoperable Delivery of eGovernment Services to Administrations, Businesses and Citizens:行政、企業、市民への欧州のe政府サービスの相互運用可能な提供プログラム)は、情報通信技術によって提供される機会を利用して、ヨーロッパの市民や企業への国境を越えた公共部門サービスの提供を奨励し支援し、欧州の行政間の効率性と協力を向上させ、ヨーロッパを魅力的な住まい、働き、投資する場所にすることに貢献してきた。このIDABC プログラムは、欧州行政全体のための相互運用性ソリューション(ISA) プログラムに取って代わられた。(Wikia. orgから抜粋、仮訳)

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ドイツ連邦国家における「電子政府」の取組み例

2010-10-26 16:44:28 | EU等のeGovernment



 Last Updated: March 31,2021

 筆者は2006年のキーワードは「電子政府」であると昨年から述べ、本ブログでもたびたび取り上げてきた。予想通り、欧米主要国は2005年末から2006年初めにかけて「電子政府」の進捗状況の総括やこれから数年後の目標を具体的に設定、公表している。また、電子政府のポータルの体系化・充実度もこの1年で大きく変わってきている。

 数回に分けて、ドイツにおける「電子政府」の現状と、2010年を最終目標とする同国の連邦統合型「電子政府」の内容を紹介する予定であり、今回はその第1回目である。

 なお、以下に紹介する2003年夏に開発に着手し、2005年6月に稼動した「ドイツ連邦電子政府共同プロジェクト(Deutschland-Online:DO)」の広報用のオンラインマガジン「Deutschland Online」はその情報の一覧性に優れていることはもちろんのこと、欧米主要国でも唯一といえる点がある。使用言語として「日本語」が含まれていることである。さらに、日本の特集記事や地域別特集とは別にわが国を紹介している点である(当然、日本語である)。

 なお、BundOnline 2005 – Wikipediaを合わせ読まれたい。

 一方、2003年2.月28日の ドイツ「週刊コンピュータ(Computerwoche .de) 」(注1)は、連邦政府の電子政府のイニシアチブ「BundOnline2005」に関し、ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(Bitkom)(Startseite | Bitkom e.V.) (注2)やドイツ連邦産業連盟(BDI)(Bundesverband der Deutschen Industrie )) (注3])などの業界団体は、組織のギャップ、連邦政府、州政府、地方政府間の調整の問題、マスタープランの欠如について不満を持っていると述べ、他方で内務省は、ほぼ予定通りに進んでいるとする記事を書いている。

  第2回以降では、ドイツ政府のオンラインポータル・サイト”deutchland.de”でドイツのE-Governmentの現状を見ておく。

1.ドイツDOの取組みの現状
 地方分権の考え方すなわち「全体の中のある一部」原則であり、国家連合EUの中におけるドイツの位置づけも意識している。すでに第一的に成果が得られた項目は以下のとおりである。
①連邦政府、連邦州政府、地方自治体における「給与税控除(wage tax)」分野の電子処理化
②連邦州政府の支援のもとで連邦政府は公的機関のデータベースの構築ならびに検索機能を持つ行政ポータル”www.bund.deを立ち上げた。一部の州ではすでに自州のポータルならびに連邦政府サービスサイトとのネットワーク化を実現している。
③連邦政府や連邦州政府における統計事務の集中化センターである”www.statistik-portal.deの運用を開始した。 (注4)
④連邦政府等の相互コミュニケーションプラットフォームとして「TESTA Deutschland」の共同使用を始めた。
⑤連邦政府等は初めて”XML standards”につき合意した。例えば、”XMeld”により連邦機関間のデータ登録事務は完全に行える。
⑥「OSCI:Online Services Computer Interface」が公的機関の安全かつ署名を要する取引における全国的な規格として採用された。(ブレーメン州のOSCI参照)
⑦連邦政府等は「共同電子政府構築モデル」の草案策定とその使用を開始し、連邦政府の規格である「SAGA」もこれに統合した。
⑧連邦政府等はヘッセン州にデータ処理センターを設置した。

2.目下進行中の計画内容
 政府の戦略目標の適用のため、連邦政府等の政府機関の責任者からなる作業部会は以下の計画を進めることで合意し、取組みが始まっている。

(1)大項目1:具体化する個別サービスの品揃え
連邦政府や州は各分担して次のサービスの実用化実験に取り組む。
①司法登録(judicial register)先導機関:ノルトライン=ヴェストファーレン州(2003年12月開始)
②商業登記(Commercial register)先導機関:バイエルン州ババリアおよびバーデン・ビュルテンベルク州(2003年10月開始)
③住民登録(Citizens’register)先導機関:バイエルン州ババリア(2003年11月開始)
④戸籍登録(Civil Status register)先導機関:ドルムント市(2003年11月開始)
⑤公的な統計(Official statistics)先導機関:連邦政府(2004年1月開始)
⑥車両登録(Vehicle registers)先導機関:バーデン・ビュルテンベルク州(2003年10月開始)
⑦連邦教育支援法 先導機関:バーデン・ビュルテンベルク州(2003年12月開始)
⑧Geo-data(各機関共通に利用する地理データ情報システム)先導機関:ノルトライン=ヴェストファーレン州(2003年9月開始)(筆者注:Geo-dataは各国の電子政府は必ず準備している。)
⑨ビル建築 先導機関:ブレーメン・ハンザ同盟市(2003年11月開始)

(2)ポータル・ネットワーク
 連邦政府等は、国民それぞれが同一的な行政サービスにアクセスできるようポータルを作成した。インターネット・ポータルの相互運用性を確保するために規格化と調和性が必要であった。そのためのプロジェクト事務局「KoopA ADV」が中心となっている。(2003年1月~2004年1月にかけ開始)

(3)インフラストラクチャー
 連邦政府等は、次の共同インフラの設置と使用をはじめた。
①電子署名連盟(electronic signature alliance)の取扱範囲で統一的な規格の基礎となる電子署名の使用ならびに普及の準備。先導機関:連邦政府(2003年4月開始)
②連邦政府等の間において交換する国民に関する情報についての「交換機関(clearing houses)」の概念を開発する。先導機関:ブレーメン・ハンザ同盟市(2003年10月開始 )
③電子政府計画において適用ならびに合格するビジネスモデルについて今後の協調に向けた開発。先導機関:連邦政府(2003年10月開始)

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(注1)「週刊コンピュータ(Computerwoche .de) 」(https://www.computerwoche.de/)、CIOとITマネージャーのためのドイツの週刊新聞である。それは1974年以来市場に出されており、主に予約購読によって配布されている。この新聞は、ドイツの子会社とComputerwocheの編集スタッフがミュンヘンに拠点を置くITスペシャリストの出版社「インターナショナル・データ・グループ(IDG)」の一部である。

(注2) ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(Bitkom)は1999年に設立され現在、1,000社以上の中規模企業、500社以上のスタートアップ企業、ほぼすべてのグローバルプレーヤーを含む、デジタルエコノミーの2,700社以上の企業を代表している。そのメンバーは、ソフトウェアおよびITサービス、通信またはインターネットサービス、製造デバイスおよびコンポーネントを提供し、デジタルメディアやネットワーク経済、またはデジタル経済の一部の分野で活躍しており、現在、成長するビジネスモデルをデジタル的に開発したい企業が、あらゆる分野でBitkomに加わっている。また、Bitkomはドイツの経済、社会、行政のデジタル化に強く取り組んでいる。(Bitkomサイトを仮訳)

(注3) BDIは、ドイツの産業および産業関連サービスの包括的な組織である。これは、40の業界団体と約800万人の従業員を抱える10万を超える企業を対象としている。 メンバーシップは任意であり、 地域の州の15の組織・団体は、地域レベルで業界の利益を代表している。(BDIサイトを仮訳)。 

(注4) 同ポータルを見て読者は気がつくと思うが、全項目につきドイツ語と英語が完全にパラレルに併記されている。英語が自由に使いこなせるドイツ人が多いと聞くが、このような点でも明らかである。

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(今回のブログは2006年1月23日登録分の改訂版である)

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オーストラリアにおける政府スマートカード仕様の枠組み案が公表される

2010-10-24 14:17:07 | EU等のeGovernment



 Last Updated:March 29,2021

 英国では議会を中心に国民IDカード法案をめぐる国内の論議が急速に高まっているが、オーストラリアでも電子政府の更なる強化に向けた課題やその効果をめぐる議論が高まりつつある。同国政府の財政・規制緩和省( Department of Finance and Deregulation (Finance:Finance) (注1)「情報管理局(Information Management Office)」のサイトでは以下のような主要課題をあげて取り組んでいるが、このほど政府の効率性の高い情報技術のインフラ構築の中心となる「Australian Government Smartcard Framework ドラフト0.19版 」(96頁)(注3)が公表された。

 当然のことながら、そこに反映している考えは、「将来に向けた公的機関における相互運用性と投資コスト削減」である。さらに米国の米国商務省標準化技術研究所(NIST)のマルチ利用基準であるFIPS201(注4)、PC/SC コンソーシアム( Personal Computer/Smart Card事業体)(注5)に準拠している。
 わが国の電子政府構築上の課題の1つが国民IDカードであることは間違いなかろう。

 なお、「オーストラリア政府Smartcard Framework」はその後改訂され、現在「財務・規制緩和省・情報管理局(AGIMO)」:電子政府・情報管理(e-Government & Information Management):ICT Security & Authentication:「National Smartcard Framework」サイトで見る内容は2008年12月に「オンラインおよび通信評議会(Online and Communications Council :OCC)」10/24(21)(注6)が推奨したものである。

〔オーストラリア電子政府の主要課題〕
①より良い政府(電子政府における戦略的助言、開発要求とその価値についての調査、電子政府による利益の研究、情報管理戦力委員会等)
②より良いオーストラリア連邦議会・連邦政府情報提供のあり方(政府情報へのアクセス、オンライン情報サービスについての責務等)
③シームレスかつ利用者に的を絞ったサービスの開発(相互運用性の枠組み、電子化された地域サービス:TIGERS Program、効率的なポータルの構築等)
④ビジネスの改善(政府の電子調達の促進、調査研究報告、デモの実装、指導等)
⑤政府機関のため効率的な費用対効果の実現(スマートカード、オープン・ソース・ソフトウェア、政府ドメイン名の承認、認証技術、政府のオンラインセキュリティの強化、PKIとプライバシー勧告等)
⑥より良い実践(オンラインサービスの配信とそのためにユーザーが利用するチェックリストの作成、政府・内閣等の各部門ウェブサイトの品質向上に向けたガイダンスの策定、提供情報に関する規定・電子出版・記録の保存・アクセスの良さ・セキュリティ・プライバシー、認証などについての最小限の標準化、公的サービス理解向上のためのケーススタディ、相互運用性の枠組み等)

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(注1)”Department of Finance and Deregulation”は2007年12月3日に設置され2013年9月18日、”Department of Finance”に引き継がれた。現在の財務省長官は、ローズマリー・ハクスタブル(Rosemary Huxtable) PSM(注2) 氏である。

Rosemary Huxtable PSM


(注2) 公務員勲章(PSM)は、優れた奉仕のためにオーストラリアの公務員(すべてのレベル)に授与される市民装飾である。PSMは1989年に導入され、1975年に廃止された帝国賞に取って代わり、同じ年に導入されたオーストラリア勲章を補完している。公務員勲章の受領者は、名義字「PSM」を使用する権利がある。このメダルは、オーストラリア総督、各州または地域の責任大臣の指名、および連邦レベルで毎年2回授与される。(Wikipediaから抜粋、仮訳した)

(注3) オーストラリアのsmart cardの開発経緯の解説例としては、以下のサイトが詳しく解説している。

①オーストラリア法改革委員会(Australian Law Reform Commission)の”Smart Cards”(2010.8.16)(https://www.alrc.gov.au/publication/for-your-information-australian-privacy-law-and-practice-alrc-report-108/9-overview-impact-of-developing-technology-on-privacy/smart-cards/)

②”Australian Acess Card-Needa a Governance Framework”(https://www.ramin.com.au/itgovernance/smartcard.html)

歴史的経緯の解説が中心。

③Australian Privacy Foundation(APF)の”Human Servoces Card”(https://www.privacy.org.au/Campaigns/ID_cards/HSCard.html)は、政府プロジェクトとAPFキャンペーンは、2005年4月から2006年4月26日まで実施された。その後、政府の「ヒューマンサービスアクセスカード」/「スマートカード」/「コンシューマーカード」プロジェクトとAPFの新しい全国IDカードキャンペーンに組み込まれた、等につき解説している。 

(注4) FIPS 201(Federal Information Processing Standards Publication 201)は、連邦政府の職員及び請負業者のための個人識別情報の検証(仮訳:Personal Identity Verification/PIV)の要件を規定する米国連邦標準規格である。

(注51996年5月にフランスのブル(Bull)社を含む主要マイクロ・コンピュータ・メーカーとIC Card(Smart Card)メーカーとのパートナーシップにより発足した団体名。

(注6) Online Communications Council(OCC)は、オーストラリアのICTポリシーが、政府の3つの層にわたってまとまりがあり補完的であることを保証する責任を負うオーストラリアの組織である。 OCCは年に1回開催され、メンバーはオーストラリア政府の通信情報技術・芸術大臣と 、オーストラリア政府特別大臣、各州および準州政府の上級大臣、オーストラリア地方政府協会からなる。 第三セクターの組織や研究機関はメンバーとして含まれていない。(Australian Government Department of Families,Housing, Community Services and Indigenous Affairsの2008年資料(https://core.ac.uk/download/pdf/30687035.pdf)から抜粋、仮訳 )

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(以下の部分は2010年10月21日現在、白紙であるが、適正な委託先が見つかればあらためて検討したい)

標記草案の検討対象者、主な構成と目次内容等は現在仮訳(要約)作業中であり、訳文を希望される方は次のメールアドレスまでご連絡いただければ後日当方から通知する予定である。
なお、従来本ブログで取り上げてきたテーマについて、今後は詳細版は別途メーリングリスト登録者(当分の間、無料)のみ通知する方式に変更するので、詳細資料版を希望される方は個人、法人を問わず下記内容を記入のうえ申し込んでいただきたい。また、登録いただいた内容については、2003年個人情報保護法ならびに関係省庁のガイドラインに基づき「×××」が善良なる管理者の注意義務を厳格に履行し、ブログ情報の発信のみに利用すること、ならびに第三者へ情報提供を行わないこととする。
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(今回のブログは2005年12月25日登録分の改訂版である)

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