Financial and Social System of Information Security

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警察庁有識者会議が警察によるISPに対する“Tor”利用行為の通信遮断要請の具体化の勧奨報告書

2013-04-21 18:02:28 | サイバー犯罪



 オーストラリアの人権擁護NPO団体“Electronic Frontiers Australia Inc.(EFA)” から手元に届いたニュースに、毎日新聞英字版日経新聞の記事に基づく警察庁有識者会議の提言内容が紹介されていた(注1)。有識者会議の報告書の内容は非公開(注2)なため、不本意ながらその内容はメデイア記事のみに頼らざるを得ない。

 今回のブログは、この問題に関するEFAのプライバシーに対する懸念・問題指摘をまず紹介するとともに、Torの実施・運用NPO団体である“Tor project .org”が欧米主要国の法執行機関・警察や関係機関との相互認識強化に関する情報を改めて提供するものである。特に後者の問題は有識者が“Tor system”につき、いかほど正確に把握しているか不透明であり、その意味でも報告書の早い公開が必須なことは言うまでもない。

1.EFAの課題指摘の内容
 同レポートを仮訳しておく。

・日本の警察庁(National Police Agency:NPA)は、自国のISPに「自発的に」Tor(インターネットを匿名でサーフィンするため広く利用されている有名なシステム)(注3)の使用を妨害するよう、明らかに依頼している。

 NPA(それはTorシステムを悪用している犯罪を防止するための措置を調べていた)に向けた専門家による議論は、4月18日のレポートでサイト管理者の裁量のブロッキング・パソコン通信がそのような犯罪を防止することに効果的であるとしていると編集した。同会議の推奨に基づいて、NPAはインターネット・プロバイダー産業界や他の団体にその旨を自発的な努力をするよう求める。

 これは、極端に危険な過剰反応といえる。確かに、一部の人々は、違法な行為の目的で、Torの匿名性を悪用する。まさに一部の人々が悪いことをするために「現金の匿名性」を悪用するのと同じである。

 しかし、そうであるからといって、我々はこのため「現金」を非合法化しない。人々には彼らの個人識別(アイデンティティ)を保護するためのTorのような匿名化(anonymizing)しているツールを捜す多くの正当な理由がある。彼らが警察で組織犯罪または汚職に関して警告を鳴らすホイッスルブロアーであるならば、どうであろうか?。それが犯罪行為のために使われているという恐れに関しては、それは、警察が他の手段によって彼らを特定することができないことを意味しない。我々は、彼らが犯罪を犯しているとき、再三再四、人々がデジタル・トラック情報を他の方向に向け混乱させる事例を見た。事実、それは生命を警察にとってより難しくする。そして、それは彼らが実際の捜査活動をしなければならないことを意味するが、まさに、それが彼らの仕事なのである。

2.Torの国際的は法執行機関等との深まる協議の内容
(1)ここからが、本ブログで筆者が言いたいポイントである。有識者会議がこれらの各国の法執行機関との協議内容を十分に検証した上での今回の勧奨報告であればまだしも、いかに「拙速のそしり」という非難を指摘されることはいうまでもない。

 他方、筆者はこの問題に対する極めて多くの「2チャンネル」での非難を支持するものではない。まさに冷静な対応が必要な問題であると思うのである。したがって、ここでは、Tor systemにつき詳しく論じることは行わないが、少なくとも彼らが行う欧米主要国の警察や法執行機関、関係機関等の会議、研究会への積極的な参加や意見交換の概要につき紹介する。
 少なくとも、わが国でもこれらに準じた手続きを経たうえでの勧奨行為が当然と考える。

(2) Tor systemの運営幹部であるロジャー・デングルディン(Roger Dingledine)のブログ解説がやや冗長かつ専門家向けのため、説明不足の感はあるが、具体的な内容なので概要を仮訳する。

Roger Dingledine氏

 2013年 1月、ジェイク(Jacob Appelbaum, Advocate, Security Researcher, and Developer)と私(Roger Dingledine, Project Leader, Director, Researcher) (注4)は、オランダの地方警察や国家警察、およびベルギーの国家警察と間でTor system につき説明や協議を行った。また「Bits of Freedom」に対する短いが感動的な対話だけでなく、オランダの国家サイバーセキュリティ・センター(National Cyber Security Centre :NCSC)の2013年次会議の閉会の基調講演を行った。

 あなたは私の側の得意な点の一つとして、最近のTorに関する法律の施行方法を教えてきたことを思い出すかもしれない。我々は、2012年10月にはTorについてFBIの会議で説明するとともに、過去では2008年3月にドイツでのデータ保持について議論されたときにドイツ・シュトゥットガルト警察の訪問については、私の以前のエントリーしたブログを参照してほしい。

 この「Torブログ」を始める前、Torにつき私は米国司法省と数回にわたり、またノルウェー警察の特別犯罪捜査局(Kripos)との協議を行った。

 今、オランダ警察は第一に2011年に起きた「DigiNotar被害」(注5)でぴりぴりしているので、オランダ警察に対しTorの話を進める良いタイミングである。しかし、彼らはどの国かわからない外国のコンピュータに侵入し合法化する彼らの2012年の法規制強化の野望があった(私は、彼らはすでにそれをやったので、合法的であると言う!)

 以下に、私に印象を与えたそこでのいくつかの論点がある。

•私は、オランダの地域警察署から約80人に対話を開始した。どうやら各地域の警察グループは、基本的に1人以上のサイバー犯罪者を抱えており、ほとんどすべてのそのためTorを学ぶようになった。これらには、Torのケースを処理する方法についての彼らは警察グループの助言人なので、正確にExoneraTorのようなサービスについて知っておく必要があるのである (それは彼らの仕事が簡単になったため、その後、国家警察の一つはTorについて地域警察を教えたことに心から我々に感謝した)。

・オランダ警察との対話中に繰り返し登場した1つの問題は、次のような内容である。
:悪い男が、誰かが彼のドアのところに現れたときにもっともらしい否認を行うため、Torの「出口ノード(Exit relays)」(注6)を実行したらどうなるか?

 私が最初に考えたのは警察の注目を減らすためTorの出口ノードを実行することは狂気の沙汰である。
 あなたは無視したい場合、あなたは悪いことをするボットネットか何かを利用する必要があり、誰もそれを学びませんし、それは、あなたにとってすべての終わりです。
 我々はTorにつきおよそ地球上のすべての法執行者を教育するまでは、常にこれまでのTorが何であるかを知らなくても、容疑者リスト上のすべてのIPアドレスを襲撃する人々が存在する。彼らについての興味深い発見の第二点は、Torのリレーがディスクにすべてのトラフィックを書き込むことはないということであった。もし容疑者は彼のハードドライブ上の悪いものを持っており、それがためにTorリレーのせいであるというのはうそである。もちろん、ディスクの暗号化は、状況を複雑にする(我々は、出口に関しディスクの暗号化の使用は勧めない)。

・私は、ベルギーの警察との間で彼らのインターネットのフィルタリング行為は "検閲"ではないという問題に関し議論に入った。私の経験では、それが起動する方法は、幾人の議員は、インターネット上でフィルタリングを正当化する非常に恐ろしい何かを決めることである。その次に、彼らは禁止事項のURLのリスト(一部完全に非透過的な方法で)を用意すべく準政府組織に委譲する。必然的に、このリストにはフィルタリングを設定するための元々の理由よりも、コンテンツのより多くの種類が含まれている。そして必然的に、あなたがそれにあってはならない場合は、リストから降りるメカニズムの救済システムは全くない。ベルギーの警察はURLのみの小さなセットをフィルタリングすること、これらの問題の各々は、議論され、透過的に民主的な方法で決定されていること、さらに、警察は準政府機関にリストについて何を教えていないだろう私に保証した。

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(注1) このようサイバー犯罪からみの問題をいつも真っ先に取り上げる夏井教授主催グループのブログ(Cyberlaw)は、4月22日付けでこの問題を取り上げ、有識者会議の姿勢を批判している。
 なお、英国のIT専門メディア”Wired co.uk”が4月9日の記事、やフランスのIT専門メディア“ZDNet.fr”が4月22日の記事でこの問題を取り上げているが、いずれも毎日新聞の記事を引用しているのみである。

(注2)筆者は、なぜがゆえに警察庁が有識者会議の報告内容をあえて 非公開とするのかが不明である。この程度の内容が非公開とすべきであるとも思えないし、そもそも有識者会議の目的や意図は何かさらには専門委員構成等、大いに疑問である。

 弁護士(元検事)の落合洋司氏の「日々是好日」の4月18日付けのブログが「警察庁がISPに対し“Tor”の通信遮断を要請」と題してこの問題を取り上げている。落合氏が指摘しているとおり、「どこの『有識』者が、こういうことを提言しているのか知りませんが、警察の提灯持ちや露払いに堕するのもいい加減にしておかないと、せっかくの『有識』(何の有識か知りませんが)が世界的な物笑いの種になりかねません(こんなもの(報告書)を出してくるようでは、そうなったほうが良いような気もしますが)」は、納得のいく的確な指摘であると思う。

(注3)  毎日新聞は“Tor”記事の中で、次のとおり簡単な用語解説を行っている。
「◇の略で、タマネギ(onion)の皮のように何重にも暗号がかけられていることから名付けられた。90年代に米海軍の研究機関が秘密裏に情報交換するために開発。このシステムを使う世界中のパソコンの中から無作為に選ばれた3台が経由地になる。通信記録が残らないように設計されているため発信元の追跡は不可能とされる。」

(注4) Roger Dingledine氏は、TorのProject Leader, Director, Researcherである。外部に向けたアグレッシブな活動内容は興味を引くものである。例えば、YouTube:29C3: The Tor software ecosystem (EN)(2013年1月19日録画)を見てほしい。プログラム参照。なお、“29C3”は、2012年12月27日から30日にかけてドイツ・ハンブルグで開催されたカンファレンスである「29th Chaos Communication Congress(29C3)をさす。

(注5) オランダの認証局DigiNotarが不正アクセスを受け、偽のSSL証明書を発行していた問題は、さまざまなところに影響を及ぼしている。

 この被害は2011年8月29日に明らかになった。米Googleのメールサービス「Gmail」のユーザーに対する中間者攻撃の動きがあったことを機に、DigiNotarが不正なSSL証明書を発行していたことが発覚。詳しく調査した結果、DigiNotarの認証局インフラが7月19日に不正アクセスを受け、管理者権限でアクセスされて500以上の偽証明書を発行していたことが明らかになってきた。その中には、google.comのほか、skype.com、twitter.com、www.facebook.comや*.windowsupdate.com、*.wordpress.comなど、広く利用されるドメインが含まれている。またDigiNotarの証明書は、オランダ政府でも利用されていた。
 SSL証明書は、自分がアクセスしている先が確かに「本物である」ことを確認するために利用される。もし証明書そのものが不正に発行されれば、本物のサイトと不正なサイト、フィッシングサイトなどを見分けることができない。通信を暗号化していても、それが第三者に筒抜けになってしまう可能性があるし、アクセス先を信用して、ユーザーIDやパスワード情報を入力してしまったり、マルウェアをインストールしてしまう恐れがある。
 この事態を受け、ブラウザベンダは即座に対策した。DigiNotarの証明書を信頼リストから外し、無効化した新バージョンを相次いでリリースしている。」 @IT記事から一部抜粋。
 
(注6)Torの「出口ノード(Exit Relay)」に関しては「ネットワーク経路を複雑化・追跡困難にするTorってどんなもの?」(netbuffalo)が図解入りで説明している。また、Tor自身がLegal FAQ で詳しく説明している。

 同FAQの主要部分のみ仮訳する。
「出口ノード」とは、それらからの出口でノードのIPアドレスにまで遡ることができるトラフィックから 脱出できるという特殊な問題を引き起こす。(出口ノードは目的のWebサイトからすると、アクセス元のIPアドレスとして見えるが、もちろん本来のトラフィック送信元アドレスではない)

 我々は出口を実行することは合法であると信じるが、それは出口ノードがいくつかの点で民事訴訟や法執行機関の注目を集めることが違法な目的に使用されることを統計的には認めねばならぬ可能性がある。
 出口ノードは非合法とみなされ、トラフィックが中継のオペレータに起因する可能性があるためトラフィックを転送してもよい。あなたはそのリスクに対処することを望まない場合、ブリッジまたは中間リレーはあなたのためのより良い方法といえるかもしれない。これらのノードは、インターネット上で直接トラフィックを転送しないし、そう簡単に伝えられるところでは違法コンテンツの起源元と誤解されることはない。

 Torのプロジェクト・ブログでは、できるだけ少ないリスクと終了を実行するためのいくつかの優れた提言をしている。我々は、あなたが出口ノードを設定する前に、これらのアドバイスを確認することを示唆する。

*私は私の家からの出口ノードを実行する必要があるか?

いいえ。もし法執行機関等は、出口ノードのトラフィックに興味がなくなった場合、官吏あなたが使用するコンピュータを押収することが可能である。そのため、それはあなたの家またはご自宅のインターネット接続を使用して、出口ノードを実行するのは最善ではない。その代わりに、Torを支持している商業施設で、出口ノードを実行することを検討してほしい。あなたの出口ノードのために別々のIPアドレスを持っているし、それを通るルート独自のトラフィックのため、別々のIPアドレスを持つべきである。もちろん、あなたの出口ノードをホストしているコンピュータ上に機密情報や個人情報を保持することは避けるべきであり、またあなたは違法目的のためにそのマシンを使うべきでない。

*私は、出口ノードを実行していることを私のISPに伝えるべきか?

はい。あなたは、出口ノードを実行していることを知っていて、その目標に関しあなたをサポートしてTorに理解があるISPがあることを確認してください。これは、あなたのインターネット・アクセスが原因で虐待の苦情にカットオフされていないことを確認するのに役立つ。 Torの支持グループ特にTorに精通しているISPは、同様ではないものとともに仲間のリストを保有している。
(以下、略す)

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米国ボストン・マラソン爆発テロ事件等を悪用した詐欺スパムメールに対するIC3の警告や寄付の見直し論

2013-04-19 16:53:11 | 詐欺社会への警告と対応




(本ブログは2013年4月27日に注書きを加筆した)

 4月18日(日本時間の未明)、筆者の手元にボストン・マラソン爆発テロ事件の被害者救済を名乗るスパムメールが2つ届いた。

(1)送信者:Cornelius Webster <sddsdad@lserve.com>、件名:Explosion at Boston Maraton、本文:略す!!!

(2)送信者:Tib Hensley<kotlyar@email.mot.com>、 件名:Video of Explosion at the Boston Marathon 2013、本文:略す!!!


 また、米国時間4月17日の夜に起きたテキサス州ウェーコ近郊の肥料工場の爆発事故に関してもスパムメールが届いた。送信者:Maurice Adkins morpheus75@verhas.com、件名:Fertilizer Plant Explosion Near Waco, Texas、本文:略す!!!

 筆者自身これほどIT詐欺師が迅速に活動を始めていることを肌で感じたのは初めてであり、SNS等の急速な利用拡大に伴い、わが国内でも警告の必要性を感じていたところに、FBIからIC3(インターネット犯罪苦情センター:Internet Crime Complaint)の本文で述べるとおりの警告文が送られてきた(IC3については、本ブログでも2009年4月2012年9月に取り上げている)。
 FBIだけでなく、この問題は“Network World”といったITメディア、“Huffington Post UK”といった政治系メディアも具体的に取り上げ、さらには米国商事改善協会(BBB) (注1)という業界自主規制団体が安易な寄付行為を戒める観点から助言を行うなど、広い論議を呼んでいる。

 わが国でも最近時にサイバー犯罪に対する法執行機関の専門家教育が指摘されていることはいうまでもないが、この分野はフォレンジックス問題と同様明らかに米国等に遅れを取っていることは言うまでない。
 最新情報として簡単に事実関係と詐欺メールの見分けかたについて解説する。なお、誤っても上記の真の発信者宛メールをクリックしないよう注意されたい。

 なお、わが国のメディアでも取り上げられているとおり、オバマ大統領や連邦議会上院議員宛に猛毒薬リシン (注2)を郵送した容疑でミシシッピー州コリント(Corinth)の住民 ポール・ケヴィン・カーティス(Paul Kevin Curtis)を逮捕した旨のメディアのリリースが手元に届いた。この事件ついては、米国のメディアが詳しく報じており別途体系的にまとめる予定である。

1.IC3の警告文の要旨(仮訳) (注3)
・4月15日、ボストン・マラソンのゴール地点の近くでマラソン参加者だけでなく見物人の死傷を引き起こした2つの爆発が発生した。アメリカ国民がこの悲劇に対し、援助や関与の必要性を感じる一方で、詐欺犯はこの機会をこれら親切心を悪用する手段とみた。

・アメリカにいる人々は爆発に伴う生じるオンライン詐欺やe-mailやSNSネットワーク・ウェブサイトを利用するとこの必要とされる予防措置をとる必要性を認識すべきである。4月17日時点で、FBIは複数の個人がオンライン詐欺活動を容易にするためe-mailやソーシャル・メディアを使っている可能性情報を受け取った。

・すなわち、潜在的な犠牲者がマルウェアやシステム攻撃(exploit)を狙ったスパムにスパムe-mailの回付についての報告を受けた。そのスパムメールの1つの主題は「ボストン・マラソン爆発(Boston Marathon Explosion)」ある。本文にあるURLをクリックすると、読者のPCにマルウェアを感染させる。クリックすると、一連の攻撃内容を示すビデオを示す個人情報漏えいを引き起こすウェブページを開かせる。そのページの下の部分に下されたビデオのかわりに各種のPCの脆弱性をもたらす“Red Exploit Kit”に繋がる。
 一度その手口が成功すると、つぎにユーザーはいつマルウェアをダウンロードすべきかに関するファイルをダウンロードするよう要求されるべく記したポップアップ画面を見る。

・ソーシャル・メディアは、「寄付(donations)」を懇願するもう1つの犯罪手段である。各種のIC3に対する苦情によると、爆発事件後、直ちに正規のボストンマラソン・アカウントに似せた「ツィッター・アカウント」が開設された。伝えられるところでは、同アカウントで受け取られるツィッターから1ドルが今回の事故の被害者に寄付が行われる。このアカウントは管理者により停止されたが同様の手口が行われる可能性はなおある。FBIはマラソン事故後、すくなくとも125の疑わしいドメインが爆発事故後数時間以内に開設されたことを確認した。ドメイン登録者の真の意図はなお不明であるが、詐欺目的はその他の災害時の抱き合わせで出てきた。

・個人がe-mailやソーシャルネットワーク・ウェブサイトを利用するとき、次のような予防的措置をとることによってサイバー犯人からの被害を少なくすることが可能となる。

①詐欺メッセージは、あなたのPC等デバイスにマルウェアを感染させるため添付・リンクされた画像やビデオを見るためソフトウェアを安易にダウンロードしてはならない。

②合法的なサイト(例:fbi.gov)にリンクさせることで、詐欺師はクリックした被害者をまったく別なウェブサイトにリンクさせることが出来る。これらのサイトは、マルウェアや機微個人情報を入手できる場合がある。ウェブサイトに安易にリンクしないでください。リンクするときは改めて合法サイトのURLを入力されたい。

・オンライン慈善団体への寄付懇願や要請があったとき、次のような防止措置をとることで、サイバー犯罪者からの被害を最小化することが可能である。

①調査するとともに公式のウェブサイトを訪問し、その団体の存在ならびに合法性を確認すべきである。評判のよい団体に極めて類似しているが、厳密に見ると異なる団体にはまず疑ってかかることである。

②あなたに代わって、他の人が寄付することは認めてはならない。寄付のテーマに合わせたメッセージのために個人情報を求めるウェブサイトへのリンクを信じてはならない。その情報はサイバー犯に送られる。

③特定の寄付を実行するときは、デビットカードやクレジットカードを使うかまたは小切手を使い、安全な方法を用いるべきである。合法的な慈善団体は通常、簡便な(証拠を残さない)現金送金手段により寄付行為はもとめないので、このような要請内容があるときは、まず疑ってかかるべきである。

2.疑わしいメールの「本当の差出人」のメールアドレスを知るには
 わが国でも(財)インターネット協会:豆知識「本当の差出人のメールアドレスを知ることはできますか?」が極めて簡潔の解説している。筆者なりに確認手順につき追加すると次のとおりとなろう。

  ファイル→プロパティ→詳細→ヘッダー部分の通常一番上のライン(Retun Path)の内容が表示されている「発信者」と同一であるかを確認する。導入文の例では<>内が“Return Path”を確認した結果である。

3.米国商事改善協会(BBB)の安易な寄付行為を戒める観点から助言内容

 BBBには悲惨な事故や事件の被害者等に対する寄付行為につき、安易な博愛精神の安売りを戒める「冷静・賢明な寄付実践同盟(BBB Wise Giving Alliance)」があり、赤旗を振って警告している。寄付のあり方に慎重な姿勢が求められることはいうまでもない。このような姿勢そのものが、オンライン詐欺師が活躍する場をなくすきっかけになるというもので、筆者も米国のdonate先進国が故の智恵であると考える。

 同同盟がまとめた寄付者が敢然とした賢明さを保つための10原則を項目のみ挙げる。
①考え深い慎重な寄付
②寄付の話題の話し会いの広がり(一人だけで決めない、家族や友人と相談する)
③州の登録慈善団体であるかのチェック(米国では50の全州のうち約40州が慈善団体登録を定めている)
④犠牲者の正確な情報(氏名、写真)の把握
⑤寄付金の使用目的の確認、特定
⑥遺族自身による支援基金の設立予定の有無の確認
⑦なじみのないウェブサイトをまず疑い、安易にリンクしない
⑧慈善団体の金銭・会計面での透明性の確認
⑨慈善団体のこれまでの実績・内容の確認
⑩税控除対象の可能性の確認(内国歳入法501(c)(3)条適用の有無の確認)

4.オバマ大統領の声明およびFBIが公表した容疑者の画像 筆者の手元に4月19日(金)午後4時51分に届いた米国大使館のレファレンス資料室の配信メール内容の要旨は次のとおりである。
「オバマ米大統領は4月18日、爆破事件が起きたボストンを訪れ、聖十字架大聖堂で行われた追悼式で犠牲者へ追悼の意を述べました。また16日にホワイトハウスで行われた記者会見では、米国はテロには屈せず、政府は市民を守ること、事件解決に全力を注ぐことを表明しました。FBIは、容疑者の画像をインターネットで公開し、市民に情報収集の協力を呼びかけています。」

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(注1) 米国商事改善協会(BBB)については、筆者ブログ(2013年1月11日「米国アリゾナ州司法長官が不動産担保ローンを有する州民に対し前払いによる新返済戦略詐欺手口に警告」 、2012年10月10日「米国の大手地方銀行『リージョンズ・バンク』の超高利ペイディ・ローン『Ready Advance』をめぐる最新論議)」等を参照されたい。

(注2) 青酸カリの10,000倍。ホスゲンの40倍の毒力。大気1m3 中に30mgのリシンがあれば、1分間で半数の人が死亡する。マウスLD50(腹 腔内)1μg/kg、ヒトの致死量は1-10μg/kgである(「医薬品情報21」の解説から一部抜粋)
 なお、余談であるが、化学物質の健康面への影響研究は、連邦保健福祉省・毒性プログラム(HHS: National Toxicology Program:NTP)のサイトが詳しい。

(注3) IC3は同一内容の警告を4月25日にも行っている。筆者の手元には類似の詐欺メールは4月19日以降は届いていない。

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