Financial and Social System of Information Security

インターネットに代表されるIT社会の影の部分に光をあて、金融詐欺・サイバー犯罪予防等に関する海外の最新情報を提供

ドイツ連邦国家における「電子政府」の取組み例

2010-10-26 16:44:28 | EU等のeGovernment



 Last Updated: March 31,2021

 筆者は2006年のキーワードは「電子政府」であると昨年から述べ、本ブログでもたびたび取り上げてきた。予想通り、欧米主要国は2005年末から2006年初めにかけて「電子政府」の進捗状況の総括やこれから数年後の目標を具体的に設定、公表している。また、電子政府のポータルの体系化・充実度もこの1年で大きく変わってきている。

 数回に分けて、ドイツにおける「電子政府」の現状と、2010年を最終目標とする同国の連邦統合型「電子政府」の内容を紹介する予定であり、今回はその第1回目である。

 なお、以下に紹介する2003年夏に開発に着手し、2005年6月に稼動した「ドイツ連邦電子政府共同プロジェクト(Deutschland-Online:DO)」の広報用のオンラインマガジン「Deutschland Online」はその情報の一覧性に優れていることはもちろんのこと、欧米主要国でも唯一といえる点がある。使用言語として「日本語」が含まれていることである。さらに、日本の特集記事や地域別特集とは別にわが国を紹介している点である(当然、日本語である)。

 なお、BundOnline 2005 – Wikipediaを合わせ読まれたい。

 一方、2003年2.月28日の ドイツ「週刊コンピュータ(Computerwoche .de) 」(注1)は、連邦政府の電子政府のイニシアチブ「BundOnline2005」に関し、ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(Bitkom)(Startseite | Bitkom e.V.) (注2)やドイツ連邦産業連盟(BDI)(Bundesverband der Deutschen Industrie )) (注3])などの業界団体は、組織のギャップ、連邦政府、州政府、地方政府間の調整の問題、マスタープランの欠如について不満を持っていると述べ、他方で内務省は、ほぼ予定通りに進んでいるとする記事を書いている。

  第2回以降では、ドイツ政府のオンラインポータル・サイト”deutchland.de”でドイツのE-Governmentの現状を見ておく。

1.ドイツDOの取組みの現状
 地方分権の考え方すなわち「全体の中のある一部」原則であり、国家連合EUの中におけるドイツの位置づけも意識している。すでに第一的に成果が得られた項目は以下のとおりである。
①連邦政府、連邦州政府、地方自治体における「給与税控除(wage tax)」分野の電子処理化
②連邦州政府の支援のもとで連邦政府は公的機関のデータベースの構築ならびに検索機能を持つ行政ポータル”www.bund.deを立ち上げた。一部の州ではすでに自州のポータルならびに連邦政府サービスサイトとのネットワーク化を実現している。
③連邦政府や連邦州政府における統計事務の集中化センターである”www.statistik-portal.deの運用を開始した。 (注4)
④連邦政府等の相互コミュニケーションプラットフォームとして「TESTA Deutschland」の共同使用を始めた。
⑤連邦政府等は初めて”XML standards”につき合意した。例えば、”XMeld”により連邦機関間のデータ登録事務は完全に行える。
⑥「OSCI:Online Services Computer Interface」が公的機関の安全かつ署名を要する取引における全国的な規格として採用された。(ブレーメン州のOSCI参照)
⑦連邦政府等は「共同電子政府構築モデル」の草案策定とその使用を開始し、連邦政府の規格である「SAGA」もこれに統合した。
⑧連邦政府等はヘッセン州にデータ処理センターを設置した。

2.目下進行中の計画内容
 政府の戦略目標の適用のため、連邦政府等の政府機関の責任者からなる作業部会は以下の計画を進めることで合意し、取組みが始まっている。

(1)大項目1:具体化する個別サービスの品揃え
連邦政府や州は各分担して次のサービスの実用化実験に取り組む。
①司法登録(judicial register)先導機関:ノルトライン=ヴェストファーレン州(2003年12月開始)
②商業登記(Commercial register)先導機関:バイエルン州ババリアおよびバーデン・ビュルテンベルク州(2003年10月開始)
③住民登録(Citizens’register)先導機関:バイエルン州ババリア(2003年11月開始)
④戸籍登録(Civil Status register)先導機関:ドルムント市(2003年11月開始)
⑤公的な統計(Official statistics)先導機関:連邦政府(2004年1月開始)
⑥車両登録(Vehicle registers)先導機関:バーデン・ビュルテンベルク州(2003年10月開始)
⑦連邦教育支援法 先導機関:バーデン・ビュルテンベルク州(2003年12月開始)
⑧Geo-data(各機関共通に利用する地理データ情報システム)先導機関:ノルトライン=ヴェストファーレン州(2003年9月開始)(筆者注:Geo-dataは各国の電子政府は必ず準備している。)
⑨ビル建築 先導機関:ブレーメン・ハンザ同盟市(2003年11月開始)

(2)ポータル・ネットワーク
 連邦政府等は、国民それぞれが同一的な行政サービスにアクセスできるようポータルを作成した。インターネット・ポータルの相互運用性を確保するために規格化と調和性が必要であった。そのためのプロジェクト事務局「KoopA ADV」が中心となっている。(2003年1月~2004年1月にかけ開始)

(3)インフラストラクチャー
 連邦政府等は、次の共同インフラの設置と使用をはじめた。
①電子署名連盟(electronic signature alliance)の取扱範囲で統一的な規格の基礎となる電子署名の使用ならびに普及の準備。先導機関:連邦政府(2003年4月開始)
②連邦政府等の間において交換する国民に関する情報についての「交換機関(clearing houses)」の概念を開発する。先導機関:ブレーメン・ハンザ同盟市(2003年10月開始 )
③電子政府計画において適用ならびに合格するビジネスモデルについて今後の協調に向けた開発。先導機関:連邦政府(2003年10月開始)

*****************************************************************************************

(注1)「週刊コンピュータ(Computerwoche .de) 」(https://www.computerwoche.de/)、CIOとITマネージャーのためのドイツの週刊新聞である。それは1974年以来市場に出されており、主に予約購読によって配布されている。この新聞は、ドイツの子会社とComputerwocheの編集スタッフがミュンヘンに拠点を置くITスペシャリストの出版社「インターナショナル・データ・グループ(IDG)」の一部である。

(注2) ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(Bitkom)は1999年に設立され現在、1,000社以上の中規模企業、500社以上のスタートアップ企業、ほぼすべてのグローバルプレーヤーを含む、デジタルエコノミーの2,700社以上の企業を代表している。そのメンバーは、ソフトウェアおよびITサービス、通信またはインターネットサービス、製造デバイスおよびコンポーネントを提供し、デジタルメディアやネットワーク経済、またはデジタル経済の一部の分野で活躍しており、現在、成長するビジネスモデルをデジタル的に開発したい企業が、あらゆる分野でBitkomに加わっている。また、Bitkomはドイツの経済、社会、行政のデジタル化に強く取り組んでいる。(Bitkomサイトを仮訳)

(注3) BDIは、ドイツの産業および産業関連サービスの包括的な組織である。これは、40の業界団体と約800万人の従業員を抱える10万を超える企業を対象としている。 メンバーシップは任意であり、 地域の州の15の組織・団体は、地域レベルで業界の利益を代表している。(BDIサイトを仮訳)。 

(注4) 同ポータルを見て読者は気がつくと思うが、全項目につきドイツ語と英語が完全にパラレルに併記されている。英語が自由に使いこなせるドイツ人が多いと聞くが、このような点でも明らかである。

***************************************************************************************

(今回のブログは2006年1月23日登録分の改訂版である)

Copyright © 2006-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.




最新の画像もっと見る

コメントを投稿