私達は別れて離れ離れになっても
何度も出逢わなくてはならなかった
冠婚葬祭はもちろん・・
遠く離れた所から
見知らぬ彼を眺めていた
時々目が合いそうになると
慌てて視線を外しながら
二人っきりになることはなかった
同世代の親戚の中で
雑談になることもあったけれど
私達の直接の会話はなかった
そう、あの日までは
永遠に叶わない恋なのに
30年以上他の人を愛せない
心の奥底で彼だけを愛して
彼の幸せを願い続けて日々過ごしていた
そんな私が楽しみに待ち続けたのは
別れてから25年以上
欠かさずに届いた彼からの
年賀状と誕生日の葉書き
一年間に二度の一言の優しさ
懐かしい文字を指でなぞりながら
天を見上げて涙を隠した
19歳の誕生日の誓いを
『来年二十歳になったら、お嫁においで
最期の瞬間まで抱きしめていてあげるから』
叶えられなかった約束の代わりに
『元気ですか?幸せですか?』 って
温もりと優しさを贈り続けてくれた
忘れられるはずがなかった
彼の温度を、彩を、匂いを・・
私の全てに刻み込まれていたから
『幸せになろうね』 って