彼の結婚式には参列しなかった
正確には私だけ呼ばれなかった…
耐えられる筈もなかったから
とても有り難かったけれど
残酷なほどに何度も映像を見させられた
何も知らない父方の祖父母達に…
繰り返し、繰り返し
同じ場面で涙を堪えきれずに席を立つ私
心から血の涙が溢れ出すかと感じるくらい
鮮明に刻み込まれた
私の結婚式にも当然、彼は参列しなかった
父は彼を私の恩師として招待したのだけれど
丁重に断られて御祝い品だけが届いた
私達だけしか知らない風景画…
ふたりっきりで神に誓った教会と海の絵でした
『二十歳になったら、お嫁においで』
その約束は叶わなかったけれど
19歳の私と25歳の彼が神様の前で誓い合った
ふたりだけの約束は叶えられると‥
健やかなるときも、病めるときも、
喜びのときも、悲しみのときも、
富めるときも、貧しいときも、
これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、
その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?
はい、誓います
彼の甘い声が届きました…
その後も 親戚である縁は残酷なまでに
私達を引き合わせる
瞳すら合わせないように空を見つめる私
女の子が生まれたと訊いて
桃の節句に人形を作り贈ろうと母が言い出した
着物の刺繍を私にと 染め上げた糸と
一緒に持ってきた時に 震える指先で…
ひと針また、ひと針と「どうぞ誰よりも幸せに」と
願いを込めながら織り込み心を返しました
別離から再び心が触れ合うまでの20数年間
私達は指先さえも触れ合うことが無かった
その温度だけは忘れた日がないのに
夢の中でさえも出逢うこともなく
結婚式の映像がスローモーションで流れて
同じ場所で泣きじゃくりながら目覚める
想いは30数年間変わらないまま
互いの幸せを願う心も変わらない
最初で最期の神への誓いだけは果たされる
あとは誰も傷つけないように
そっと余生を過ごすだけ
私達の魂はこの絵の中で誓い合い
それを護り共に生き続けているから・・
*よろしかったらお願いします*
切ない不倫の恋.☆。:*・° |
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