不倫旅行
ふたりで歩いた京都には
雪が降っていた
私達は寒さが苦手のわりに
雪に縁があります
雪の思い出がとても多いのです
人の少ない嵯峨野路‥
雪の露天風呂からふたりで
見上げた雪化粧の山茶花
紅と緑と白と闇の見事な彩合い‥
うしろからまわす彼の腕に
雪の結晶が浮かんでは消える
少し冷えると
白い濁り湯の中に浮かぶ
胸の中へと温まりにやってくる
彼の長い指が好き
甘い色香の声が好き
耳元で囁きながら
這うようにゆっくりと愛し合う
熟れた男女の穏やかな愛に
時も控えめに進んでくれる
宇宙(ソラ)を見上げると
闇のしじまから舞い落ちるように
降りそそぐ粉雪‥
「ご主人様はお医者様ですか?」
黙って微笑む私に
「可愛くて仕方ないのでしょうね
いつも手の届くところへとね~」
Blue silk のシーツをかけながら
幸せそうに微笑む私に
優しい口調で語りかけてくれる音
『珍しい色彩の寝具ですね』
「お二人の雰囲気で女将さんが
選びはるんですえ~‥」
私達の彩はやはりBlueなんですね
山茶花の紅でなく凛とした緑でもない
雪の白でもなくて闇の黒でもない
海と月と天の彩‥Blue
裸のままでシーツに絡まり
温もりをわけ合って眠りに就いた
彼の鼓動を聴きながら
お互いの魂を温め合いながら