hoppenの韓的な日々♪

2004年・夏、イ・ビョンホンssiに出会ってから韓流へ~韓国映画&ドラマで刺激的になった日々を綴ります。

『闇の子供たち』:舞台挨拶&劇場鑑賞(2008.08.02)

2008-08-09 21:32:24 | 日本映画のレビュー


『闇の子供たち』
(2008.08.02日本公開)

公式サイト:http://www.yami-kodomo.jp/
闇の子供たち - goo 映画

****コメントに、感想を追記しました(2008.08.09)****

幼児性愛者への人身売買、そして、臓器売買。
犠牲になっているのは、アジアの子供たち。
日本と同じアジアの国で、現実に起きていると思われる話です。
私も、15年前、タイ・プーケットへ旅行した際、その姿を目の当たりにしたことがあります。
坂本監督は、この現実をしっかりと捕らえ、冷静に映画化していました。
深いメッセージがこめられていますが、感情的ではなく、映画としても見応えのある1本です。

「かわいそうなタイの子供たち」という視点ではありません。
誰が悪いと、声高に攻め立てる映画でもありません。
今、現実に起きているであろう出来事を、そのまま映し出し、
闇に閉じ込められている子供たちの存在を、見ている私たちに伝えています。
子供たちは、今も闇の中で生き続けていると感じます。

そして、私たち日本人の現実も描かれていました。
実は、日本人が、この闇に深く関わっていることを、改めて実感させられます。
ある者は真実を暴くために奔走し、ある者は子供たちを守るために奔走し、
そして、ある者は加害者となり・・・。
みんなが、NGOで奔走する音羽(宮崎あおい)のように清廉潔白で、
声高に「子供を守ろう!」と叫べるのなら、こんな闇はなくなるのかもしれない。
でも、コントロールしきれないのが、人間の欲望(性欲も、金銭欲も、生命欲も)で、
誰でも陥ってしまう可能性があり、闇を生み出してしまう。
ただ、欲望にまみれ、拝金主義に陥った人間の醜さは、吐き気がします。
どうか、あなたたちが快楽のためだけに虐げている子供たちが、
自分と同じ人間であることを思い出してほしい、と祈りたくなります。

江口洋介宮崎あおい妻夫木聡佐藤浩市、監督は坂本順治
娯楽映画でも、これだけのメンバーがそろえば、すごい映画ができるでしょう。
あえて、この映画を選んだ勇気と、作り上げたプロ根性を感じます。

個人的には、新聞記者として登場する豊原功補さんはお気に入り俳優の1人。
キーポイントとなる台詞を、印象深く語る姿が見れて、うれしかったです。

それに、タイの役者が、いい!
人身売買組織の下で働く男(プラパドン・スワンバン)。
自分自身、売春をさせられた過去を持つ、その心境を見事に表していました。
彼らは、この映画に出ることで、命を狙われる危険もあるのです。
でも、知ってしまった以上、この現実を人々に伝えたい、
伝えなければいけないと感じたのではないでしょうか。

子供たちの演出には、細心の注意を払い行ったそうです。
一歩間違えれば、映画の趣旨とは逆の作用を及ぼす危険もあるわけですから。
闇の中で生きながら、生命力に満ち溢れた瞳は、私がタイで見た女の子と同じでした。

私が、タイでの幼児売春を見たのは15年ほど前です。
こちらの記事でも、触れたことがあります。

hoppenのL.B.H的な日々♪
2007.12.24:今年もメリークリスマス
http://blog.goo.ne.jp/hoppen_2007/e/6ce9e0f1fdc7d22d8846ab60285685a6

友人たちとタイのプーケットに行ったときのことです。
夜、ホテルの近くのレストランで食事をしていると、
小学生くらいのタイ人の女の子と、割腹のいい白人の男性が、近くのテーブルで食事をしていました。
食事が終わると、白人の男性は、女の子に腕を組ませて歩いていきました。
翌朝、ホテルで朝食をとりに行くと、その二人も、朝食を食べていたんです。
女の子は、ホテルの従業員と顔見知りらしく、話をしたりしていました。
小学生なんですよ。
それなのに、こうやって働く子もいるんだという現実を見ました。

この『暗闇の子供たち』を見ると、あの頃よりも状況が悪化しているように感じました。
売春として売られた子供たちは、病気になるとゴミ袋に入れられ捨てられます。
(息があっても、です。)
元気な者は臓器移植の提供者となり、生きたまま麻酔にかけられ、心臓をとられます。
(もちろん、その子達は死にます。)
フィクションであってほしいと思いますが、あり得ないとはいえない。
現実を知ったところで、私たちに何ができるか?
効果的に解決する術など、なにも思い当たりません。
でも、目を伏せたまま、知らん顔はしたくない。
その現実を、一人でも多くの人が知ることで、
少しでも、悲惨な状況を変えられる方向に進んでほしいですね。
それは、大きな地球の中で、小指ほどの距離かもしれませんが。

出演した俳優陣も、同じ想いだったようです。
上映前、坂本監督江口洋介宮崎あおい佐藤浩市が、舞台挨拶に立ちました。

**** 舞台挨拶の様子 ****

重いテーマの原作を映画化されましたが、今の心境は?
<坂本監督>
去年の4月にタイで撮影を始め、1年余りが経ってからの公開で、
とりあえず、ほっとしています。
世界中で起きているすべての出来事は、
実は、こういうことが根っこなんじゃないのかと考えさせられました。
この映画を見て、映画館を出たら、
日本の風景が変わって見えるんじゃないかと思います。
それを期待しています。

江口さんは、初日を迎えられて、どうでしょうか?
<江口洋介>
え~と・・・・。
言葉を選んでしまうような、重い作品なんですが。
自分なりにイメージをして臨みましたが、監督はどう撮るのか?が興味深くて。
「これを撮りたい」という、監督がいてこそ、作ることができた映画ですので。

目を伏せれば、伏せたままで、僕たちは生きていけるわけです。
台本を読んでも、それを伏せて、そのまま無視してもよかったわけで。
でも、何か、「自分がこの役をやる意味」を感じました。
ぜひ、じっくりご覧ください。

江口さんの役柄は、非常に複雑でしたよね?
<江口洋介>
いわゆる社会派の映画なのですが。
正義感だけで解決できるような問題ではないんですよね。
僕が演じた南部も、自ら病というか、そういうのを抱えていて・・・・。
正義で通せないこともたくさんある、と感じました。

タイ料理に癒されたと聞きましたが。
<江口洋介>
タイでの撮影中は、ケータリングが来てくれていたんです。
カレーとかを食べている間は、重い感情も忘れちゃうくらいおいしかったです。
タイのお母さんたちの食事に救われました。

宮崎さんは、まっすぐな女性の役でしたが、初日を迎えていかがですか?
<宮崎あおい>
ほっとしているというのが、一番ですね。
この作品の前から、人身売買については興味を持っていました。
ある国の知人が、子供がさらわれそうになったという、リアルな話も聞きました。
でも、目の前にいても何もしてあげることができない自分を感じて。
答えを見つけられない、というより、答えがあっても、近づけない。
決して、遠い国の話じゃないのに。
あ、難しい話になっちゃってますね・・・・。
(困った顔のあおいちゃんも、かわいい。)

タイの子供たちとの交流は?
<宮崎あおい>
言葉を教えあったりしました。
きらきらとしていて、かわいかったです。

佐藤さんは、今回父親役で出演されていますが?
<佐藤浩市>
僕は、少ししか出演していません。
そのワンシーンが、とても大きなものになっています。
ワンシーンですが、表現しなきゃいけないもの、表現したいことがたくさんある。
果たしてそれを表現しきれたかは、いまだに疑問なんですがね。

自分の子供のためなら、悪魔のささやきにも乗ってしまう。
自分も、いつ、その立場になるかは、わからないと思うんです。
そういうことを考えていただければ、良いなぁと思います。

坂本監督作品にはたくさん出演されていますが、監督のお人柄は?
<佐藤浩市>
人柄を語ると、映画を見る人が半分に減ってしまうと思ううんですが・・・。(笑)
人のねたみ話を、お互い、よくしていましたね。(笑)

監督から見て、佐藤さんは?
<坂本監督>
お互い、友達がいないから、今まで付き合ってきたって感じかな。(笑)

では、最後に監督からメッセージを
<坂本監督>
こうして俳優さんたちと一緒に並んでいて、
覚悟をして参加してくれて、本当にありがたいです。
そして、一人一人が、自分なりの意味を持ってくれ、撮影に臨んでくれました。
それは、タイの俳優たちも同じです。
タイも日本も、スタッフやキャスト、みんなに感謝したいです。

***************


私は、タイでの出来事を見ても、何もできませんでした。
この映画は、あのときに見た女の子の姿に光を当ててくれた気がします。

ただ、以前もご紹介しましたが、
ダルニー奨学金という団体を通じて、アジアの子供の学費援助をしています。
たいそうな金額ではないからできるんですけどね。
1年間1万円の寄付で、一人の子供が1年間、学校に通うことができます。

子供たちが、字が書けて計算ができれば、自分たちを守る力になり、
少しでも、悲惨な状況を打開する礎ができるのではないかと思ったからです。
映画の中でも、アイリーンという女の子が手紙を書けたことが、彼女の大きな力になりました。

もし、関心をもってくださった方がいたら、参加してみてくださいね。
ダルニー奨学金・日本民際交流センター
http://www.minsai.org/index.html


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3 コメント

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感想の追記**ネタばれ有 (hoppen)
2008-08-09 21:28:15
レビューを書いた後も、何か消化しきれないものが残っています。

映画の中で佐藤浩市が演じた日本人は、
息子が心臓を移植しなければ、3ヶ月で死ぬといわれています。
生きているタイの子どもを殺して、その心臓を移植するという話も、聞いていないと通します。
私の子供が同じ病なら。
例え生き延びても、大きな罪を背負って生きる子供のことを思うと、逆にできないと感じています。

でも。
これが、腎臓とかなら・・・。
ドナーとなる子は、必ず死ぬわけではないかもしれない。
お金だって、払うわけだし。
それなら、いいかしら・・・。
そう、思っちゃいそうなんです。

それが、心の闇の恐ろしさなんでしょうね。
舞台挨拶での佐藤浩市の言葉が、重くのしかかります。

幼児買春も同じかも。
暴力は振るってないとか、カメラで撮るだけだとか、
自分の良心をごまかしてしまう。
どんな客であろうと、買われる子供たちにとっては、
自分たちを虐げる悪魔なんですよね。

需給側の心の闇がある限り、
子供たちを閉じ込めている組織は、
いつまで経っても解消されない。
私がタイに行ったのは15年前。
それでも、変わることなく闇の組織が存在していて、
もしかして、広がっているとさえ言えそうなんですから。

自分で書いたレビューが、奇麗事の羅列になっている気がします。
つい、まとめようとしちゃうんですよね。

でも、それだからこそ、子供の教育だけでも広がってほしいと思います。
人口増加に歯止めをかけるための最も効果的方法は、
教育を普及させることだと言います。
性教育とかじゃなくて、識字率を上げること。
字を書き計算ができれば、職をもつことに繋がります。
一人でもいいから、そういう子が増えて、
いい方向への連鎖に繋がってほしいです。

たかが映画1本のことですが、
自分が目をそむけている現実を見つめ考えさせられます。
日本での子供への臓器移植についても、
目をそむけず、検討してもらいたいですね。
移植が叶わず亡くなっていく子供は、年間50~60人もいるそうです。
返信する
観てきました (ナポリ)
2008-09-02 18:45:19
hoppenさん こんばんは

コメが遅くなってしまって・・・

しばらく、引きずってましたね。2時間半があっという間だった。
エンディングの南部(江口)にびっくりし、あぁやっぱりと。
原作はかなりグロいと書かれている方が多いので今回は読まないことにしました。
本作品だけで十分考えさせられました。と言って何ができるのか?
少し考えるきかっけになりました。

TBさせてもらいました。

返信する
同感です。 (hoppen)
2008-09-03 19:54:27
>ナポリさん
TBありがとうございました。
こちらこそ、反応が遅くてすみませんでした。
ちょっと、家のパソコンが不調で、思うようにアクセスできない状態なのです。
しかも、ビョン関係のBIGニュースも入ったりで。
ナポリさんのレビューも、これから、ゆっくり読ませていただきますね。

この映画は、今でも頭の中に残っています。
(かなり長文ですが、すみません)

きれい事で解決するわけではないけれど、
やっぱり、あおいちゃんが演じていた音羽の存在がなければ、
悲惨な現実は闇の中にあるままだと思います。

最近、アフガニスタンで、日本のNGOの方が誘拐・殺害されました。
彼が誘拐されたとき、現地の村人300人が、すぐに救出に向かったそうです。
テロリストを追いかけるのは危険なはず。
自らの安全より、日本人を救いたかった人々。
その後、千人体制で捜索したと聞きました。
彼が、地元の方にどれほど愛されていたのか。
その存在の大きさを、ひしひしと感じました。
日本人以上に、地元の方たちの怒りと悲しみは深いと思います。
残念でなりません。

ただ、彼のお母さんは
「やっぱり、褒めてやれない。
 親より先立つなんて、馬鹿だ」と、
涙をこらえて話していました。
私も、自分の娘が、彼や音羽のような仕事をしたいと言ったら、
「やめなさい。
 何もあなたがやることはない。
 あなたが行っても、何も変わらないし。」
そう説得するかも。

ボランティアとはどうあるべきか、との議論もあります。
安全な日常にいて、NGOの活動を批判するのは簡単です。
でも、何かをせずにはいられない人たちがいて、
それをありがたいと感じてくれる人たちがいるわけです。
それがボランティアの原点ですよね。

神様がいれば、解決してくれるのでしょうか?
あ~、宗教にすがりたくなります。

この事件を聞いたとき、改めて、この映画のことを考えました。
日本から遠く離れた国の出来事。
けれど、日本の延長線上で起きている現実。
坂本監督は、その現実を、映画という、自分自身のフィールドで伝えてくれました。
映画を見た観客は、それぞれの胸に、しっかりと現実をはめ込まれていると思います。
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