Sweet*Studio

あなたと過ごす、この瞬間は忘れない。

夢でみた物語

2005-10-13 | フィクション
わたしは今、渋谷にいる。
何故かはわからないけれど、うちから自転車に乗ってきてしまった。
私鉄T線10分、そこから更に乗り換えて10分、そんなにかかるうちから、わたしはどうやってここまで来てしまったのだろう。
帰り道だって、わからない。

でも、わたしの大事な自転車を置いていくわけにはいかないし、これに乗って帰らなくちゃいけないんだよなあ。
困った、困った。

しばらく頭を抱えていたけれど、そうしていても埒はあかないし、結局は自転車に乗ってうちに帰るしかないわけだ。
そう腹をくくって、T線の線路に沿って自転車をこぎ出す。
歩いたこともない、いつも車窓から流れていただけのその風景は、いざ自分が入ってみると、全く平らではなかった。
「自転車に乗って」帰ることが無理だったとは…。
いつの間にか、自転車は乗るものではなくて、大きくて、運ぶのがつらい荷物になっていた。
長い坂を自転車を押して登っていく。
やっと頂上かと思ったら、なんと、そこは行き止まり。
目の前が真っ暗になった。
そのへんは商店街みたいになっていて、露店が出ていて、アクセサリーをじゃらじゃらつけた危なそうなにーちゃんがいた。
そのにーちゃんのすぐ脇に、人ひとりがやっと通れるような、細いトンネルがある。
通りたいけど、にーちゃんが怖い。
それでも、意を決して、「あのー、通してもらってもいいですか?」
と声をかけてみた。
「いやだよ」
簡単に断られてしまった。
いやな顔をしたり、カネをせびったりされても、結局は通してはくれるものと思っていたわたしが甘かった。
「でもね、わたし、ここを通らないと、ずーっと今来た道を戻って、ずーっと遠回りをしないと、うちに帰れないんです」
泣き落としを試してみた。
にーちゃんは頑として道をゆずってくれない。

仕方がないので、今登ってきた道を戻る決心をした。
それでも、ムダにならないように、どこかで地図をみせてもらうのがいいだろう。
そうだ、地図を見せてくれる人を探そう。

「なぁんだ。諦めちゃうの?意外と根性ないねぇ。こんなところを自転車もって登って来るくらいだから、もうちょっとねばり強い人かと思ったのに」
背後から、にーちゃんの意地悪い声がした。

無性に腹がたって、かなうかどうかわからないけど、力ずくで通ってみせようと思った。

自転車を楯にして、トンネルに突っ込んでいく。。。。






ジャジャーン!!!
おめでとうございます。あなたはファーストステージをクリアしました。
ポイントが100点、追加されます。
ここで休憩をすることができます。
ポイントで自由にエネルギー補給をしてください。
さあ、十分に休めましたら、セカンドステージへどうぞ!



スピーカーから流れる女性の高くきれいな声が、悪魔の宣告のように聞こえた。
わたしの家までの道は、永遠のように長いらしい。






あとがき
このお話は、以前、夢で見たものをほんの少しだけ整えてみたものです。
「夢でみた話」「夢の中へ入っていって、夢のなかでおわる物語」「電車・駅」というキーワードを、ギビちゃんのところから勝手にもらってきました。
でもね、なんかこれ、何も考えていない人ってことがバレバレみたいな夢ですよ。

夢は、何を語ってくれるのでしょうか。
それとも、何も語られるものではないのでしょうか。
ご意見聞かせてもらったら嬉しいです。辛口でも良いですよ(笑)


TB:白昼夢駅にて。   今日は明日の前日だから
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2 コメント

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こころをつなぐ力を (ギビ)
2005-10-14 11:48:20
すてきなお話をありがとうございます。

渋谷、にーちゃん、休憩。

ことばの選び方にかなこさんらしさを感じました。



ほんとに、ありがとです。
返信する
ギビちゃん、こんにちは。 (かなこ)
2005-10-15 11:11:56
地下鉄の空気をありがとう♪



まさしく、ギビちゃんの白昼夢駅にて。を読んだから、書けたものでした。

それもありがとう、ですよ。



不思議なもので、単なる夢だったのに、文字にすると、何かわたしが生み出したもの、みたいで不思議です。

「ことばの選び方」なのかな。夢はぼんやりとしたもので、ことばで考えるのは起きている自分、だから。

楽しいです。

懲りずに、また夢が見たくなります。

返信する

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