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北の光・南の光

 

ある画家の記念館に行きました。大正時代に建てられた住居兼アトリエを復元した建物です。

住居兼というか、ほぼアトリエという感じの家です。

北側に大きな窓とトップライト(天窓)があります。行ったのが夕方に近い時間だったという事もありますが、均質なおだやかな光が満ちていて、とても心が落ち着く感じがしました。

それで思ったんです。

 

「こういう光がいいな~」 と。

 

もちろん、住宅での話しです。

ここはアトリエという事もあるので、北側にこれだけの大きな窓とトップライが作られています。

 

現代の住宅で、これだけの大きな窓を作る事はありませんが、

多くの人が「薄暗くあまり感じ良くない」と思う『北向きの部屋』は、

本当は、『居心地のいい部屋』なんだと思います。

 

そして、多くの人が欲しがる南向き。だけど、

南の窓を大きくしてタップリ光を入れようとする事は、

実は結構 ”人に厳しい環境” を作る事のように思います。

 

太陽の光が、植物の生育にも、私達の体にも必要なものです。

でも太陽の紫外線は物を劣化させるものですから、

あまりたくさんの直接光を家に入れないほうがいいのかもしれません。

 

特に夏場の光は強すぎます。

その強さというのは、人の心とか気持ちにも影響を与える事もあります。

 

明るさが欲しいのなら、北側からでも十分に明るさをとれるのです。

実際、上のアトリエの写真のように、明るいです。

 

住宅としては、

南の窓はある程度しぼり(面積を少し小さくし)、北の窓を逆に大きくしたほうが

明るくて落ち着く家になるように思います。

 

↑ 南面 ・・・ 木で隠れて見えないが、かなり複雑の屋根

↑ 北面

この北面の窓・・古い家の郷愁というより、むしろモダンで現代的に感じてしまいます。

↑ 西面 ・・・ 複雑な屋根だという事がよくわかる

↑ アトリエの照明は、これだけだったんでしょうね。

↑ 壁に作られたニッチ。 アトリエにこれがふたつありました。

一般の住宅でもこんな、なにか小さな場所があると、暮しが豊かになります。

 

****

日曜日、打合せの帰り、JR目白駅で途中下車。ずっと行ってみたいと思っていたギャラリーがあって思いきって行く事にしました。

目白駅の改札の前で、置いてあった区立の記念館の冊子が目にとまりました。

 

『 中村彝(つね)アトリエ記念館 』

 

中村彝(つね)(明治20年~大正14年)という画家の事をまるっきり知らなかったのですが、冊子の家の写真にひかれて見にいく事にしました。

その家は、中村彝の住居兼アトリエであり、若くして亡くなった後、有志の方達が保存しその後個人(画家)の所有となったものを、大正5年(転居してきた年)当時の姿に復元したもので、当時の部材が多く残っているそうです。

小さな小さな記念館ですが、大正のモダンな空気を感じれるところのようにも思います。

 

家の材料はとても簡素なものです。すき間だらけで、現代の私達が住むのはなかなか難しいです。

荒い仕上の、木の床や腰壁、天井、そしてしっくいの壁(この記念館はモルタルに白塗装のようにも見えるが。。)に、木製のドアや窓

それらが醸し出す空気感と反射光の柔らかさ・・・住む人を優しく包んでくれます。

 

現在の、商業的で経済的な家がなくしてしまったものが、ここにあります。

 

展示を見つつ、ゆっくりと家を感じてみてもいいと思います。

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