075:量（ほたる）

透明な計量カップに注がれたミルクのように静まれ、わたし

074:銀行（ほたる）

熱すぎる夏のジオラマ手をつなぎ二人逃げ込む銀行の森

073:寄（ほたる）

数寄屋橋のゼブラゾーンで追いかけた夏の背中の落書きを消す

072:緑（ほたる）

緑色のゼリーの中のさくらんぼＫＩＳＳのカタチのくちびるに似て

071:メール（ほたる）

ややこしい手順も踏まぬ「ひとこと」をメールで飛ばす無防備な指

070:籍（ほたる）

入籍の指輪は眠るビロードのオフホワイトのベッドの上に

069:呼吸（ほたる）

ブリリアントブルーのキャミの肩越しに呼吸ひとつを乗せて口笛

068:踊（ほたる）

手のひらの上で静かにオブラート誰に背いて踊り続ける

067:葱（ほたる）

焦らされたレベルで変わる玉葱の炒め加減を耳打ちされる

066:ひとりごと（ほたる）

うけとめてあげてもいいよテノヒラであをいさかなのひとりごとなら

065:眩（ほたる）

甘やかな眩暈に逆撫でされながらみづの記憶を辿る指先

064:可憐（ほたる）

俯けば可憐に見える横顔の角度は甘く見え透いた罠

063:スリッパ（ほたる）

リノリウムの森で踊ろうスリッパを脱いだ素足は白く冷たい

062:浅（ほたる）

深く浅く差し込む指でてのひらを誘惑してはイケナイ遊び

061:@（ほたる）

＠から＠へ飛ばす波動から伝わる音のないあのシルシ