下北沢駅周辺は大きく変貌した。それも最近日本国中どこでも、よく見る駅周辺の風景とは全く
異なるものだ。駅前に広場が、駅近くに公園もあり、人々があらゆる方向に歩いて行ける動線が
ある。賑やかだが、雑然としていない。保坂氏が区長選に立候補したきっかけは下北沢の再開発
問題だった。賛成派と反対派に分裂し、住民説明会は怒号が飛び交い紛糾する中、反対派に押さ
れて立候補している。
保坂氏は150人規模の集会を年1回、20人~50人のワークショップを100回以上分野ごとに積
み重ね、小田急線の線路跡地に着目し、防災と緑の充実ための計画見直しを進め、小田急社長
の「シモキタらしく、ジブンらしく」という言葉を引き出し、開発型ではなく、支援型の再開
発に導くことに成功している。
保坂氏は区長に就任した際「5%だけ変えます」として、それ以外は踏襲すると表明している。
就任後100億円ほど税収が減っている世田谷区の財政再建の為に小さい区民サービスを削減する
ことではなく、コンピューターシステムの予算を再考し、ハコモノ建設事業の抑制で区長就任
3年目に黒字化を達成している。
待機児童問題でも「保育の質」にこだわり、保育園に土地を提供してくれるオーナー向けに大手
証券会社、金融機関で資産運用の相談役をしていた人を区の職員に採用し、保育園用地提供につ
いての説明会に出てもらい、保育園用地の確保につなげている。
保坂氏は世田谷区を歩き回り、住民の側に立った施策を常に考えている。元々教育ジャーナリス
トで、社民党時代に自民党と仕事をしたこともプラスに作用しているようだ。これから各首長、
各議員に求められることは抽象的な目標ではなく、対話と具体的な政策と実行力だと強く感じた。
こんな政権なら乗れる 中島岳志×保坂展人 朝日新書