ケセランパサラン読書記 ー私の本棚ー

◇『戦争は女の顔をしていない』 スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ著 三浦みどり訳 岩波現代新書

 第二次世界大戦中のソ連女性兵士のノンフィクション。  

 スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチは、ウクライナ出身で国立ベラルーシ大学卒のジャーナリスト。
 著書は、あの有名な『チェルノブィリの祈りー未来の物語』を書いた人。他には『セカンドハンドの時代ー「赤い国」を生きた人びと』などがあり、2015年に、ノーベル文学賞を受賞。

 『戦争は女の顔をしていない』は、当時女性ソ連兵として最前線で戦った人たちのインタビュー記事である。
 当時はスターリン独裁で、ドイツ人の少年少女がヒトラーに心酔したように、彼女たちもスターリンに心酔し、国家のためと、自ら志願して兵士となる。
 しかし当時の軍隊は男性優位社会である。
 立場も、戦闘服も、なにもかも女性という視点はない。
 そこで、男性と同じように銃を持ち匍匐前進し、ナチドイツ軍と戦うのである。
 
 やはりスターリングラードの戦いはソ連軍にとっても壮絶で「水も土も真っ赤」だったと記されている。

 愛国心から志願した彼女たちの不幸は、軍隊では「女になにができるか」と馬鹿にされ、ほんのわずか生き残って復員した彼女たちは娼婦のように言われ、祖国のために、スターリンの言葉を信じ、志願兵として最前線で戦ったことを、隠して生きる人生だったという。

 戦争というものは、まさにそういうものなのだろう。
 独ソ戦、特にスターリングラードの戦いを、ドイツ側と、ソ連側の両方の資料を読んでみて、本当にヒトラーとスターリンの野望の為に、どれほどの人間たちがその人生を無にしたことか、と思う。

 基、日本もまったく同じである。


 <追記>

 ソ連に、死の女と言われた女性スナイパーがいた。
 映画『ロシアン・スナイパー』予告編

             

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