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マクドナルドはハンバーガー屋?

2009年03月12日 | 経営に学ぶ

先日ご紹介した早稲田大学大学院の村田康一さんが私のブログに立ち寄ってくださいました。そのときの村田さんのメモは、

・「ノウハウ」の展開には標準化が必要。マックは成功事例だと思うけど、その秘密は?

マック、すなわちマクドナルド社を世界一のファーストフードチェーンに育てたレイ・クロックについては、さまざまな伝記がかかれています。全部をご紹介することは無理ですが、有名なエピソードをひとつご紹介しておきましょう。

10年近く前になりましたが、ベストセラーになった本に、『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ、筑摩書房)があります。ちょっと変わったタイトルですが、日系4世のアメリカ人・ロバート・キヨサキ氏が、自分のビジネスを持つ大切さを説いた本として、一躍脚光を浴びました。
そのなかで、マクドナルド社のビジネスについて書かれた一節があります。マクドナルド社のビジネスモデルを考える上で、なかなか参考になるエピソードですので、ご紹介します。

1974年、私の親友キース・カニンガムがテキサス大学オースティン校のMBA講座をとっていたとき、講座の一環としてマクドナルド社の創始者レイ・クロックが招かれて講演を行った。レイ・クロックはマクドナルドの前身となったドライブイン・レストランの営業権をリチャード・マクドナルドから購入し、全米から世界へとフランチャイズ化した人物だ。
非常にためになり大いに刺激となったその講演のあと、学生たちはレイを行きつけの店に誘った。レイは喜んで誘いを受けた。
「私のビジネスは何だと思うかい?」                                            みんなにビールが行き渡ったところでレイが聞いた。
「ぼくらは笑ったよ。そこにいた学生のほとんどが、レイは冗談を言っているのだと思っていた」                                                             キースは私にそう話してくれた。
 だれも答えないのを見て、レイはもういちど同じ質問をした。
「私のビジネスはなんだと思うかね?」                  
 学生たちはまた笑った。しばらくしてから学生の一人が思いきって大声で言った。                                             「レイ、あなたがハンバーガーを売っていることは世界中の人が知っていますよ」
 レイはにやりとした。                                         「そう言うだろうと思ったよ」                                       わずかに間をおいてからレイは続けた。                               「いいかい、私のビジネスはハンバーガーを売ることじゃない。不動産業だよ」
 キースの話では、そのあとレイはゆっくり時間をかけて、自分の考えを学生たちに説明したそうだ。たしかに会社の経営戦略上のビジネスの基盤はハンバーガーを売ることにあるが、レイはそれと同時に店舗の立地のことも考えていた。店舗のある建物、その立地条件こそが、その店の成功を左右する重要な要因であることを彼は知っていた。
                 (『金持ち父さん 貧乏父さん』p121~122)

この本で紹介されているエピソードと、似たような話がもう一つあります。(どこで聞いた話かは忘れてしまいました。すみません!)

ある大学で講演をしたとき、女子学生に「マクドナルドの成功の秘訣」を尋ねられたレイ・ロックが、学生たちに次のように質問した。
「君たちの中で、マクドナルドの店で売っているハンバーガーより、おいしいハンバーガーを作れる自信のある人はいるかね?」
学生たちは顔を見合わせ、何人もの学生が手を挙げた。するとレイ・クロックは笑いながらこう言った。
「それでは、どうしてマクドナルドが世界的に成功しているんだろうね。」

このエピソードもおもしろいですね。この二つの話には共通することがあります。つまりマクドナルドは単なるハンバーガーの製造・販売業ではないということです。つまり、マクドナルドは「マクドナルドのハンバーガー」という「ビジネスモデル」を展開している企業なのです。

もともと、マクドナルド社はその名の通り、アメリカのカリフォルニア州サンバーナディノという土地でマクドナルド兄弟が開いていた店が起源です。「スピードキッチンシステム」と呼ばれるとおり、ハンバーガーの作り方、店の運営に標準化を進め、注文を受けてから客に商品を渡すまでの時間がとても短いのが特徴でした。おかげで、少ない人数で、次々と注文をさばくことができていたのです。

※ちなみに「マクドナルド兄弟」はたぶん、スコットランド系アメリカ人です。「Mc」というのは、イギリス・スコットランド地方で「〇〇の息子」という接頭語で、「マクドナルド」とは「ドナルドの息子」という言い方だからです。以上、余談・・・

このマクドナルド兄弟がやっていたハンバーガーショップをフランチャイズ化し、さらにはさまざまなマーケティング戦略を駆使して、世界的なハンバーガーチェーンに育てたのが、レイ・クロックでした。彼がいなければ、現在世界121の国で展開され、店舗数は約31,000店舗に上る外食産業としては世界一のマクドナルドは存在しなかったでしょう。マクドナルド兄弟は確かにハンバーガーショップの運営において「標準化」を導入して成功を収めたのですが、それだけでは単なる「繁盛しているハンバーガーショップ」に過ぎません。全米、さらには世界中に展開するためには、レイ・クロックのマーケティング戦略が欠かせませんでした。

つまり彼の言うとおり、マクドナルドはハンバーガーを売っている店ではなく、「マクドナルドのハンバーガーというビジネスモデル」を提供している企業なのです。


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