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燃える火は太陽かもしれない ~(株)明石合銅・明石隆史常務を訪ねて~

2015年01月31日 | 経営に学ぶ

今回訪問した(株)明石合銅も、9/8にアップした深田熱処理工業(株)と同じく「熱い」企業です。 高温で溶けた銅合金を鋼に溶着させた複合材料「AGバイメタル」。中子をいくつも組み合わせた複雑形状の「銅合金鋳物」。鉄系バックメタルに銅合金の粉末を焼結接合させた「オイルレスブッシュ」。日本で初めて量産技術を確立したダイカストによる「純銅ロータ」。いずれも、同社の「熱い技術の結晶」であり、まさに「理想に燃えるアート作品」とも呼べる製品として注目を集めています。今回は、同社の新製品開発プロジェクトの若きリーダーとして活躍されている明石隆史常務をお訪ねし、お話を伺ってきました。

 

(株)明石合銅は、石川県白山市に本社のある県内でも注目されているモノづくり企業。平成18年には、中小企業庁から「元気なモノ作り中小企業300社」に選定された会社です。おもに鋼に銅合金を接合する技術によって、2つの金属の長所を持つ理想的な油圧ポンプ用シリンダーブロックを製造し、高い国内シェアを誇っています。
同社の創業は1946(昭和21)年といいますから、今年(2014年)で68周年。県内でも老舗の金属加工の企業ですね。


           (株)明石合銅本社(同社のHPより)


訪問当日、本社玄関を入ってまず驚いたのが、壁に設置された「WELCOME BOARD」。大きな画面には「いらっしゃいませ。ようこそ、明石合銅へ」というメッセージとともに、訪問者である私の名前が映し出されています。さらに受付の女性に案内されて入った応接室にも大きな「WELCOME BOARD」があり、私の名前が・・・仕事柄、いろんな企業を訪問していますが、ここまでフレンドリーに迎えていただけると、本当にうれしくなってしまいます。


       玄関を入ってすぐ、大きな画面に私の名前が・・・


         応接室のスクリーンにも表示されていました

 

さて、今回の訪問でお話を聞かせていただいたのは、同社の明石隆史常務。明石寛治社長の片腕として、現場の第一線で新製品開発のけん引役を務めておられる若き経営者です。私が事務局長(非常勤)を務めている北陸鉄工協同組合の青年部長としても活躍され、若い経営者たちの兄貴分でもあります。


            明石隆史常務(同社前にて)


ご挨拶を終えて、まずは会社・工場をご案内していただきます。まず案内していただいたのは同社製品の展示室。ここには、創業当時からの事業である砂型鋳物製品、鋼に銅合金を溶着させたバイメタル製品、粉末焼結製品という3つの量産事業の製品サンプルの他、現在開発中の銅ロータや鉛フリー材料など、同社の歴史と技術が詰まっている部屋です。


 
     展示室には(株)明石合銅の歴史が詰まっています

 

展示室を出て、いよいよ生産の現場へ。ところが、まず私の目を引いたのは天井からぶら下がっているたくさんの観葉植物の鉢植えです。明石常務によれば、それらの一つ一つがそこで働く社員さん一人一人の鉢だとのこと。モノづくりの工場といえば、どちらかというと殺風景なところが多いのですが、同社では、社員の皆さんが一日のうちで一番長く過ごす場所を、潤いのある空間にしたいという願いを込めているそうです。


           工場内部はまさに緑の回廊です


           案内してくださった明石隆史常務

もう一つ感動したことは、工場内部の5Sが行き届いていること。私もたくさんの工場を見てきましたが、同社の工場は“感動”するくらいそれが徹底しているのです。また、社員の皆さんの技能の向上も積極的に推進しておられる様子が各種のパネルからもうかがわれ、モノづくりにかける同社の熱い思いが伝わってくるようでした。

掲示や表示にも、「徹底した見える化」のこだわりが感じられます


 
 もちろん社員の技能の向上には積極的に取り組んでおられます

 

それではいよいよ製造の現場へ。まずは銅合金鋳物の製造過程を案内していただきました。高温で熱せられた銅の塊を間近に見ると、さすがにすごい迫力です。自動造型機で作られた鋳型に、高周波誘導炉で溶解した銅合金を次々と注湯して行きます。鋳造された鋳物製品は、冷却ゾーンを経て切断やバリ取り処理後、ショットブラストにかけられて、美しい鋳肌の鋳物ができ上がるのです。

 ※「ショットブラスト」とは、細かい砂や鋼製・鋳鉄製の小球(ショット)などを金属の表面に吹きつけたり打ち当てたりして,表面を仕上げる加工法。


    銅合金鋳物の製造過程では、まさに“熱気”が感じられます

 

次に、技術開発棟へ向かいました。技術開発棟では、明石合銅の次世代の飯のタネとなる新規技術開発や生産工程の改善を担当する部門で、現在5名の専任スタッフが開発に取り組んでいます。


          ダイキャストマシン(真空鋳造装置)  

                 試験用の溶解炉

  海外重工業向けの大型バイメタル部品。光沢が美しいですね。

次にやってきたのは検査室。皆さん、本当に真剣な表情で品質管理に従事されています。静かな中にも、品質保証にかける同社の「熱い思い」が伝わってくる部屋です。

次に案内していただいたのは溶着工場です。


溶着過程を担当するこちらの工場に入ってびっくり!壁面に大きな絵が描かれているのです。明石常務によれば、わざわざ画家に来ていただいて描いてもらった作品とのこと。緑の回廊だけでなくこの大きな絵画にも、「感動する舞台としての職場」をめざす同社の姿勢が表れていますね。

              工場内には大きな絵画が・・・


次に案内されたのは機械加工・切削加工ラインです。オートメーション化が進んだこの工場は、設備台数の割に人の数が非常に少ない。その代わり、ここではCNC旋盤やマシニングセンター、5軸マシニングセンター、さらにはロボットも大活躍。驚くほどのスピードと正確さで、次々と製品が仕上げられていきます。

    オートメーション化が進み、人の姿があまり見られません


          ここでは産業用ロボットも大活躍です

           シリンダブロックの検査・ブローチ工程


 

さて、工場群の見学を終えて応接室に戻り、いよいよ明石常務へのインタビューです。

平野:常務はいつごろから、この仕事に就こうと思われたのですか?

明石:3,4歳のころから父の仕事を見て育ちましたからね。中学生のころには、もう夏休みに父の会社でアルバイトもしていましたし・・・ですから、意識せず自然とこの仕事に就くことになったように思います。

平野:お兄さんもおられるのですね。

明石:私は3人兄弟の末っ子なんです。長兄は全然違う道に進んだのですが、次兄は専務として、自分は常務として会社に入っています。

平野:現在はお父様が会長、叔父様が社長なのですね。ご家族で経営されていて、良いところ、また難しいところはどんなことですか?

明石:家族経営の良さは、血縁でやっていますから何事も遠慮なく言い合えるし、また助け合えるということです。逆に仲たがいしてしまうと、その分大きなマイナスになってしまう。ですから、意見は言い合っても、最終的にはトップである会長や社長の方針に従うことが大切だと思います。


 

平野:御社は積極的に新しい技術の開発、新事業の開拓に取り組んでおられますが、従来のモーターの効率をアップする「純銅ローター」の開発は、最近注目されていますね。
※「ローター」とは工作機械やポンプなどに組み込まれる、ごく一般的な三相誘導モーターに搭載される回転子のこと。

明石:純銅ローターの開発のきっかけは、リーマンショックの後にモノづくり補助金が出たことです。もともと銅の加工業をやっていたのですが、生き残っていくためには新材料・新工法で新しい部品作りに挑戦しなければならないと判断したんです。

平野:純銅ローターはモーターの効率を高めるわけですから、省エネにもつながるのですね。

明石:そうです。この新しいローターは省電力、省エネルギーで、まさに時代のトレンドとも言えます。開発に着手してすぐに東日本大震災があったのですが、省電力の必要性を再認識しましたね。

 

平野:開発に当たっては、外部の企業や研究機関とも協力されたのですか?

明石:純銅ローターの開発は平成22年からスタートし、平成23年には石川県産業創出支援機構(ISICO)の「いしかわ次世代産業創造ファンド事業」に採択されました。開発に当たっては、ISICOや工業試験場、金沢工業大学などと産学官の連携が重要でした。経営トップが「やろう!」と号令をかけ、社内では常務である自分が開発チームのリーダーになって、さらに外部の金型メーカーや装置メーカー、それにもともとの技術を持っていた国際銅協会、そしてISICOや工業試験場、金沢工業大学など、多くの関係機関が産学官連携として協力し合ったんです。
 

 

平野:開発にあたっての課題はどんなことだったのですか?

明石:アルミニウムと比較して、融点が500℃以上高い純銅をダイキャストする場合、スロットと呼ばれる細い隙間に綺麗に充填しなければならないということが1つ。それとダイキャストで使う金型が、高温の金属と触れることで破損しやすくなるのを何とかしなければならないということも課題でしたね。

平野:それを社内、社外の協力と連携で克服されたのですね。そのために大切なことは何ですか?

明石:開発にあたって大切なことは、チームで取り組んでいるわけですから、まずコミュニケーションでしょうね。次に、問題が生じたときにすぐに現場を見て、社外であってもプロの意見を聞きながら解決策を探すことです。自社内だけでは対応が限定されてしまいますから。

 

平野:最後に、御社で大切にされている「AKASHI WAY」について教えてください。

明石:「AKASHI WAY」とは、わが社が目指す経営の基本的な考え方のことです。日本流・和の経営と明石流・ものづくり道の2つの柱からなっています。その中でも「和の経営」は人の成長と会社の成長を中心に考えますが、大家族主義と言えるかもしれませんね。

平野:工場内に緑があふれていることや夢がいっぱいの大きな壁画・・・今日、工場を見学させていただいて、人の成長と会社の成長を調和させようとしておられる御社の経営方針がよくわかりました。会社も社員も一緒に成長していこうとする、良い意味での「大家族主義」なのですね。本日はお忙しい中、いろいろとお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。

明石:こちらこそ、ありがとうございました。

              明石常務(左)と金子取締役(右)

 

こうして、今回の(株)明石合銅への訪問は無事終了。明石常務と金子取締役に見送られて同社を後にしたのですが、本当に気持ちの良い訪問インタビューでした。それは、会社の玄関を入った時から、ずっと最高の「おもてなしを受けていたからなのでしょう。WELCOME BOARDに始まり、緑いっぱいの工場、夢があふれる大きな壁画、そして何よりも明石常務の温かなお人柄。これが同社の目指す「AKASHI WAY」にもつながっているのかもしれません。

同社は経済産業省が認定したグローバルニッチトップ企業として、今後ますますの発展が期待されています。(株)明石合銅の皆さん、これからも素晴らしい製品を世界に送り出していってくださいね!応援していますよ!


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