老(おい)が恋わすれんとすればしぐれかな
老(おい)を山へ捨(すて)し世も有(ある)に紙子哉
大雪や鐘なき村の夜ぞ更けぬ
起(おき)て居てもう寢たといふ夜寒哉
鴛(をしどり)に美を尽(つく)してや冬木立
絵団(ゑうちは)のそれも清十郎にお夏かな
襟(えり)にふく風あたらしきこゝちかな
(波翻舌本吐紅蓮)
閻王(えんわう)の口や牡丹を吐(はか)んとす
卯の花のこぼるゝ蕗(ふき)の広葉哉
梅咲(さい)て帯買ふ室(むろ)の遊女かな
梅もどき鳥ゐさせじとはし居かな
うら町に葱うる声や宵の月
愁(うれ)ひつゝ岡にのぼれば花いばら