いざや寐ん元日(ぐわんじつ)は又翌(あす)の事
いざ雪見容(カタチヅクリ)す簔と笠
石工(いしきり)の飛火(とびひ)流るゝ清水哉
石工(いしきり)の鑿(のみ)冷したる清水かな
磯ちどり足をぬらして遊びけり
家(いへ)にあらで鶯きかぬひと日(ひ)かな
(雨日嵐山にあそぶ)
筏士(いかだし)の簔(みの)やあらしの花衣(はなごろも)
息杖(いきづゑ)に石の火を見る枯野哉
池と川とひとつになりぬ春の雨
あちらむきに鴫(しぎ)も立(たち)たり秋の暮
あちら向(むき)に寐た人ゆかし春の暮
尼寺や能(よ)キ㡡(かや)たるゝ宵月夜(よひづきよ)
あら涼し裾吹(すそふく)蚊屋も根なし草
歩き歩き物おもふ春のゆくへかな
逢(あは)ぬ恋おもひ切ル夜(よ)やふくと汁(じる)
庵買うて且うれしさよ炭五俵