小狐(こぎつね)の何にむせけむ小萩(こはぎ)はら
後家(ごけ)の君たそがれがほの団(うちは)かな
こちの梅も隣のうめも咲(さき)にけり
骨(こつ)拾ふ人にしたしき菫(すみれ)かな
小鳥来る音うれしさよ板びさし
子鼠(こねずみ)のちゝよと啼(なく)や夜半(よは)の秋
こがらしや覗(のぞ)いて逃(にぐ)る淵(ふち)の色
木枯しや萩も薄(すすき)もなくなりて
こがらしや畠の小石目に見ゆる
こがらしやひたとつまづく戻(もど)り馬(うま)
凩(こがらし)や広野(ひろの)にどうと吹起(ふきおこ)る
(大魯が兵庫の隠栖を几菫とともに訪ひて、
人々と海辺を吟行しけるに)
凩に鰓(あぎと)吹(ふか)るゝや鉤(かぎ)の魚(うを)
木枯や鐘に小石を吹きあてる
木がらしや小石のこける板びさし
こがらしや炭売ひとりわたし舟
こがらしや何に世わたる家五軒