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怒りの所在⑦~としまえん問題~今日は怒りで吐きそうだ

2020-09-14 17:17:32 | としまえん問題

としまえん問題は続く。

今回は東京都さんへの怒りの内容を分析して書こう。

と思ってたところに、とんでもない情報が飛び込んできた。

以下、なるべく心を落ち着けて、自分で決めた「としまえん行動規範」を守って書く。

 

としまえんを閉園した跡地には広域防災拠点となる練馬城址公園とハリポタ施設が作られる。

ハリポタ施設に関しては関係者(東京都さん、練馬区さん、西武さん、ワーナーさん、伊藤忠さん)の間で今年6月12日、「都市計画練馬城址公園の整備にかかる覚書」が締結されている(以下「覚書」)。

何故か、東京都さんのHPには覚書に添付された「別紙」しか公開されていないので↓

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/06/12/01.html

覚書全文を読みたい方は、たとえばこちら(池尻成二議員のブログ)をどうぞ↓

https://www.ikejiriseiji.jp/news188/

 

たいした量じゃありません。全部でたかだか8条。

A3なら1枚。A4でも表裏印刷すれば1枚で済む程度のぺらっぺらな覚書だ。

で、他には?

ありません。

としまえんを潰して広大な跡地を広域防災拠点としての機能を有する練馬城址公園として整備する、という目的があったにもかかわらず、としまえん跡地の約半分(石神井川の北側)にハリポタ施設を作って30年間、営業することを認めた関係者の皆さんの間の取り決めは、文書化されているものはこの紙っぺら1枚の覚書だけだ。

にわかには信じられなかった。

詳しくは池尻成二議員のTwitterを確認されたい↓

https://mobile.twitter.com/ikesans/status/1305382569102331909

 

東京都は池尻議員の開示請求(「覚書以外にも、たとえば、開発事業区域の詳細を定めた合意書とか確認書とか、覚書6条2項に定められている西武さん、ワーナーさん、伊藤忠さんの「配慮」の具体的内容について取り決めた文書を開示してください」という東京都への要求)に対して、「それらの文書は存在しない」と回答しているのだ。

しかも、覚書第2条で定められている別紙「覚書の対象区域」はこれ↓

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/06/12/documents/01_01.pdf

バカにしてんのか?

池尻先生もTwitterで指摘しているが、つまり、開発区域の正確な位置や面積とか、覚書に則った具体的な開発・建設条件とか、工事の工程表とか、施設のどの部分にどのような形で練馬城址公園の機能の一翼を担わせるのか、何一つ決まっていない状態で8月31日に「としまえん」は閉園され、翌日からは区民の中から保存や練馬城址公園内での存置を切望する声が上がっているアトラクションを解体搬出し始めた、ということだ。

これからは区民の中でも保存を求める声の高い「としまえん」内の樹木の伐採も始まるだろう。

ハリポタ施設の敷地からは外れているプールエリアだっていつ解体工事が始まるか分からない。

 

覚書第6条2項には、

「丙(西武さん)、丁(ワーナーさん)及び戊(伊藤忠さん)は、開発事業区域(=ハリポタ施設等のエリア)において、この覚書の締結以降、他の関係者と誠実に協議して前項に定める取組(←「ハリポタ施設の整備」なのか「ハリポタ施設の整備に向けた協議」なのか、どちらを指しているのかやや意味不明)を行う際、第4条に定める機能(=緑と水、広域防災拠点、にぎわいの3機能の全部または1つ)の実現の一翼を担うことに配慮する。」

とある。

でも、具体的に何をすれば「配慮」したことになるのか。

そもそも西武さん、ワーナーさん、伊藤忠さんたちが「配慮」すべき「第4条に定める機能」とは「緑と水」と「広域防災拠点」と「にぎわい」の全部なのか、このうち一つでも配慮すればいいのかすら覚書からは分からない。

極端な話、樹木も動物たちの住処も全部潰して、およそ「緑と水」とも「広域防災拠点」とも無関係なハリポタ施設を作っちゃっても、

「いやぁ、こんだけ凄い施設作ったげたんだから、人がいっぱい来て『にぎわう』からいいでしょ」

と言われてしまえば、東京都さんも練馬区さんもぐうの音も出ない、ということにならないか?

仮に、「いや、これじゃあ広域防災拠点の機能に即してない」と文句つけて、それが認められたところで、西武さん、ワーナーさん、伊藤忠さんが負っているのは「配慮」することだけだ。「義務」ですらない。覚書には「配慮」を怠った場合の罰則もなければ、「配慮」を強制する手立ても定められていない。

「配慮はしたんですよ。でもこれがゲ・ン・カ・イ💛」

と言われたらそれまでだろう。

さらに。

お気づきだろうか。

覚書第6条3項なお書きにはこうある。

「なお、丙(西武さん)、丁(ワーナーさん)及び戊(伊藤忠さん)から設置可能期間の変更について申し出があった場合は、その他の関係者は協議に応じるものとする」

 

つまり、ハリポタ施設の設置期間は原則30年間だが、

「思ったより客が来なくて儲からないから5年で閉鎖・撤退もあり得るし、ウハウハ儲かっちゃったので更に30年、期間を延長したいと西武さん・ワーナーさん・伊藤忠さんが思ったら、東京都さんと練馬区さんは期間短縮or延長協議に応じなければならない」

ってことだ。

色々な契約書(タイトルが「覚書」や「合意書」だって内容が当事者の約束と権利義務を定めていればそれは法的には「契約書」と同じだ)を見てきたが、こんなレベルの低い・・・、いや、(西武さん・ワーナーさん・伊藤忠さんにとっては)やりたい放題、東京都さんと練馬区さんはハリポタ施設の敷地部分については実質、何も言えないという、恐ろしく一方的で出来の悪い契約書(本件では覚書)は見たことがない。

 

こんな紙っぺら1枚で、としまえんは潰されたのか?

としまえんを大切に思ってきた人たちの悲鳴が上がる中で、子どもたちが泣きながら抗議の手紙を書いてくる中で、解体・撤去の作業が進められているのか?

こんな紙っぺらのために、雨の中、暑い日差しの下、みんな毎日必死に署名活動してるのか?

そして、「みんなの命を守る広域防災拠点にするためなら仕方ないよね」と納得しようとした人たちの気持ちをあざ笑うように巨大なハリポタ施設が建てられていくのか?

 

今年9月8日に開かれた東京都の第2回公園審議会の資料はこれ↓

https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/content/000049403.pdf

「3.広域防災拠点-公園整備への展開」(6頁)で「【避難場所となる広場】災害時の活動の拠点ともなる避難広場と防災施設を整備」とされたグリーンの4エリア中、一番広くて平坦なエリアにはハリポタ施設が(原則)30年間建つことになる。

そもそもハリポタ施設の話は上記資料の9頁の左半分にサラッと申し訳程度に、一瞬、触れられているだけで、その他の頁にはハリポタ施設の「ハ」の字もない。

12頁とか13頁は、もはや「これが同じ公園のことを説明した図か?」とさえ思う。

こんな子供だましの資料まで作って、東京都さんは何がしたかったんだ?

それとも、建てられる巨大なハリポタ施設は、この資料通り、いざ災害が発生したら、「防災用照明や震災対応のトイレ等を備えた、災害時の活動の拠点ともなる避難広場と防災施設」に転用ができるものになるのか?

本当か?

信じていいのか?

その約束を記した書面1通存在しないのに?

 

なるほど。世界で2番目のハリポタ施設ができれば、中国や韓国、台湾やその他の周辺諸国からは観光客が押し寄せるだろう。

インバウンド効果で沢山のお金が落ちるだろう。

紙っぺら1枚でそれと引き換えに捨てられたのは、僕らの、そして僕らの子どもたちの命の安全と、思い出の詰まった場所だ。

 

インバウンド効果に依存した業態が、新型コロナ感染などで外国人観光客が激減したらどれほど脆いものか、つい数か月前に僕らは確認したばかりじゃないか。

「お金が入ってくる、お金が入ってくる」って、東日本大震災の地震で、津波で、火災で、放射能で、大切な家や故郷を失くした人たちは、どれほど国や地方自治体からお金を貰ってもちっとも幸せな暮らしに戻れない、ということを、僕らは3万人近い命と引き換えに学んだばかりじゃないか。

だからこそ、「としまえんを諦めても、広域防災拠点を」という発想になったんじゃないのか?

それは「ハリポタ」とか「としまえん」とかじゃなくて。

西武さんとか世界のワーナーさんとか総合商社伊藤忠さんとかでもなくて。

僕らが選ぼうとした生き方に関することじゃないのか。


先日のブログに書いた。

僕らは生まれ方と死に方は選べないけど、生き方だけは選ぶことができる、と。

僕らが選んだ、あるいは選ぼうとした生き方を利用して、小細工を弄して、大切な場所や思い出を「安全」じゃなく「金」に代える。

これが小池都知事の言う「ワイズ・スペンディング」か?

 

はっきり言う。

「としまえん」の解体工事と、ハリポタ施設の建設工事は、少なくともこれまで述べてきたような疑問点を議員さんたちや住民の代表が真剣に話し合って、理解できる着地点を見つけるまで一旦、中止すべきだ。

このままでは「としまえん」は死に損、「ハリーポッター」にはその素晴らしい作品に拭い去ることのできない汚点をつけてしまう。

 

「としまえん問題」に興味を示して、いつもこのブログを読みに来てくれる方々。

ごめん。

一度だけ、自分で決めた「としまえん行動規範」を破る。

東京都。お前、いい加減にしろ!

 

もし、今の計画のまま突っ走って、震災時に老人や小さな子どもが一人でも「ちゃんとした避難場所が確保できなかったり、広域防災拠点が機能しなかったために」死んだりしたら、東京都も、ハリポタ施設計画を進めてきた議員も官僚も、俺は絶対に許さないぞ。

 



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1 コメント

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Unknown (はと)
2020-09-23 18:10:03
こんにちは。
私は、東京都民です。
としまえんは、幼い時からずっと利用して来ました。
夏は、昼はプールで遊び、夜は花火を見ました。
とても、楽しい思い出です。
今まで、ありがとうございます、と言いたいです。
そして、従業員の方々にもお疲れ様でした。

しかし、今回の東京都及び西武の対応には、
納得は出来ませんね。
私としては、一部リニューアルして、再開してほしいと思います。

最後に、一つ言いたいのは、
人の総意が踏みにじられた時は、
自然からの天変地異によって衰退すると、
何時の時代にも共通しての認識として
肝に銘じなければいけないと
思っています。

羽田空港付近の、鳥居撤去の問題と
同じにならなければいいのですが...
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