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練馬城址公園の整備計画についてのパブリックコメント

2021-02-27 13:30:33 | としまえん問題

【意見】

1)公園審議会を始めとして東京都や練馬区のご担当者が10年近くにわたって作り上げてきた「広域防災拠点機能を有する練馬城址公園の整備計画」は、土地所有者の西武鉄道株式会社が、直前に「整備計画対象地の約北半分を事業用定期借地として貸し出し、そこにハリー・ポッター・スタジオツアーという巨大なアミューズメント施設(以下「スタジオツアー施設」)を作る」(以下「スタジオツアー計画」)という方針に転換したため、大きく後退を余儀なくされました。

「私有財産の自由利用」という建前に依拠し、公園整備計画に関わってこられたすべての方のみならず、練馬城址公園の広域防災拠点機能に生命・身体の安全を委ねる立場にあるすべての都民・区民を愚弄するかのような今回の西武鉄道株式会社の判断に対し、公園審議会、東京都、練馬区から断固たる異議の申し立てをしていただきたいです(ここで行政が毅然たる態度を示さなければ、西武鉄道株式会社あるいは他の企業によって同様のことが将来にわたって繰り返されるでしょう。)。

2)既に進み始めているスタジオツアー計画は、ワーナーブラザース等の外国企業も深く関与しており、かつ、旧としまえんの樹木の多くが伐採され、アトラクションの全てが解体撤去されてしまった現状、白紙撤回は困難だと思います。

但し、練馬城址公園の本来の整備計画対象エリア内に建てられるスタジオツアー施設が建築基準法その他の関係法令を遵守した適法な建物であるか否かの判断については、その許認可権者である東京都がすべての情報を公開すべきです。

すなわち、スタジオツアー施設は「博物館その他これに類するもの」として建設されようとしているところですが、対象地が第二種住居地域に指定されていることとの関係から、関係法令、先例、通達、指針等に照らして、

①スタジオツアー施設を「博物館その他これに類するもの」と認めることが本当にできるのか?

②スタジオツアー施設が「博物館その他これに類するもの」として認められたとして、それは第二種住居地域に建設可能な内容のものといえるのか(なお、建設省の昭和46年8月10日住街発第966号をご参照)?

についての東京都の検討・検証結果はすべての都民・区民に公開されるべきです。

3)練馬城址公園の整備とスタジオツアー計画の関係については、関係5者によって「令和2年6月12日付都市計画練馬城址公園の整備にかかる覚書」が締結されていますが、同覚書6条2項においてスタジオツアー施設の運営者等は「練馬城址公園の機能の実現の一翼を担うことに配慮する」義務を負っています。ほとんど倫理規定・努力規定のような条項ではありますが、少なくとも東京都としては、この条項を根拠としてスタジオツアー施設に広域防災拠点の機能を実現させるべく、西武鉄道、ワーナーブラザースジャパン合同会社、伊藤忠商事株式会社に対し、あらゆる配慮を強く申し入れるべきです。

具体的には、

①緊急時における避難住民や自衛隊、消防隊員、ボランティア等の救助スタッフに対する建物の無料開放、通信設備等のインフラの無料利用

②建物の耐震強度を少なくとも震度7以上の地震に耐えうる防火建築とすること

③建物屋上のヘリポート利用

④建物内に緊急時の食料・水・衣服等の備蓄スペースを確保

が最低限の希望です。

先般、東京都が実施されたオープンハウスにおいて、東京都の担当者から広域防災拠点についてのご説明をいただきましたが、その際、「要するに人が避難できる十分な解放スペースがあればいいんですよ」というご発言がありました。

東京都の担当者レベルにおいてすら「避難場所」と「広域防災拠点」の区別ができていない、という現実に唖然とせざるを得ませんが、少なくとも公園審議会が「練馬城址公園に広域防災拠点機能を持たせる」という決定をされた以上、総務省消防庁が平成15年3月に作成した「広域防災拠点が果たすべき消防防災機能のあり方に関する調査検討会報告書」及び国土交通省が公開している広域防災拠点に関する参考資料(基幹的広域防災拠点の必要性等について詳しく検討したもの)に準拠した機能を練馬城址公園及びスタジオツアー施設に具備させてください。

4)上述のとおり、西武鉄道株式会社はとしまえん閉園を惜しみ、敷地内の樹木やアトラクションの一部保存を切望する近隣住民の声を無視して樹木伐採、アトラクション撤去を進めてしまいました。

しかしながら、西武鉄道株式会社もまた、上記覚書6条2項に基づき、練馬城址公園の「にぎわい機能」(地域との連携により多様な交流活動が行われ活気をもたらす空間の創出、来園者が憩うことの出来る便益施設の整備)の実現の一翼を担うことに配慮すべき義務を負っています。

「地域との連携」を全く無視した今回の西武鉄道株式会社のスタジオツアー計画の進め方に対しては覚書6条2項違反を強く問責するとともに、練馬城址公園の地にかつて94年にわたって多くの利用者から愛され続けてきた「としまえん」が存在したことを後世に伝えるため、「としまえん」にあったアトラクションの一部(具体的には機械遺産に指定されているカルーセル・エルドラド及び旧木馬の会事務所に使用されていた古城)を移設・存置してください。

 



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