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「練馬区まちづくり条例」に基づく意見書提出について

2020-09-25 20:40:02 | としまえん問題

昨日、「練馬区まちづくり条例」に基づく意見書の準備をTwitterで呼びかけたところ、多くの方々からご質問を頂いたので、こちらで説明しておこうと思う(Twitterでは文字数制限があり、私の文章力ではとても説明しきれなさそうなので)。

難しい法律用語はできるかぎり平易な言葉に置き換えた。

なので、もしかしたらその過程で誤解を招くような説明になってしまったかもしれない。

しかし、まずは法律の専門家ではない地域住民の方々や「自分も意見書を出したい!」とお考えの方々に興味も持ってもらい、かつ、手続きの概要を理解して頂くことが目的なので、詳しい内容については別途、直接、私にお問い合わせいただくか、「としまえん問題」で精力的に活動しておられる各議員、池尻さんや高口さん、とやさん、野村さんのブログやツィートをお読み頂ければと思う。

さて。

練馬区には「まちづくり条例」という条例がある(練馬区のHPで確認できる)。

大きな建物なんかを建てようとする事業者は、近隣住民への説明会をはじめとして色々な手続きを取らなければならないことになっている。

今回、としまえん跡地に建てられようとしている「ハリーポッター・スタジオ・ツアー」施設(以下「ハリポタ施設」)は、この「まちづくり条例」の適用を受ける建物だ。

 

「まちづくり条例」で事業者や練馬区が義務付けられている手続きは以下のとおり。

(  )内は「まちづくり条例」の条文だ。

 

(1)まず、事業者は練馬区が定めている事項を練馬区長に届け出る(52条1項)。

この届出の概要は、みんなが閲覧できるように公開されることになっている(52条3項)。

(2)届け出を受けた練馬区長は事業者に、説明会の開催方法とか説明会に呼ばなきゃいけない近隣住民の範囲なんかを教えてくれる(52条2項)。

(3)さらに事業者は所定の事項を記載した標識を工事現場に設置して、練馬区長にも「ちゃんと標識設置しました」と届け出なければならない。設置期間はすごく複雑なので省略。

この標識は、としまえん跡地のバリケードにちゃんと掲示されていた(53条1項2項)。

(4)事業者は標識を設置したら、設置の日から15日以内に近隣住民の方々を対象とした説明会を開催しなければならない。これが今月7日8日に開かれた説明会だ(54条1項)。

ここでいう「近隣住民の方々」っていうのは、としまえん跡地の境界線(要するにとしまえん外周を囲っていたフェンス)から100m以内に住んでる方々だ(52条1項(2)号)。

自己所有の家やマンションを持っていなくても、「住んで」さえいればいいので賃貸アパートやマンションに住んでてもOK。ある議員さんの説明では「事業を営んでてもOK」らしい。

(5)説明会の開催日が決まったら、事業者は説明会の7日前までに近隣住民の方々と区長に開催通知を送らなければならない(54条3項)。これもちゃんと通知されていたはずだ。

(6)説明会は9月7日8日に行われた。

「まちづくり条例」では説明会で近隣住民との「協議」を事業者に命じているが(54条4項)、事業者の説明⇒説明会参加者からの質問⇒事業者の回答という一連の流れで「協議をした」ことにされてしまっているのが実情だ。

日本語常識からかけ離れてるように思うが、今ここではその点を議論しても仕方ない。

 

【ハリポタ施設の建設手続は今この段階】

 

(7)事業者は説明会(の協議)が終わると、練馬区長宛に「協議申請書」というやつを提出しなければならない(55条1項)。

説明会でのやり取り(とその他の事項)を練馬区長に書面で報告しろ、ということ。

ただ、本日現在の情報ではまだこの書面は提出されてないようだ。

(8)区長は事業者から「協議申請書」を受け取ったら、書面を受け取った日から3日以内(土日祝日を除く)に書面の概要を公表しなければならない(55条2項)。

一応、「まちづくり条例」の規定では、事業者と区長は公表するまでに何か不備があれば協議するような建付けになってるけど、ほとんどこんな協議は行われたことがないようだ。

で、こっからが超重要。

(9)近隣住民は区長が「協議申請の書面」の概要を公開した日から7日以内(ここは土日祝日が除かれない!)に意見書を事業者に提出することができる!(区長にも写しを送り付けることになっている)(56条1項2項)

事業者の宛先は説明会資料にある「イム都市設計」さんだろう。

意見書の提出期間はたった7日間しかない。土日祝日含めてだ。

意見書が提出できるようになったら、下記練馬区のHPで案内されるらしいが↓

https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/machi/oshirase/02917319120111013140.html

たった7日だ。ボーっとしてたら意見書を受け付けてもらえなくなってしまう。

チコちゃんに叱られるだけじゃ済まない。

一応、練馬区議の高口議員さんが練馬区に対して「協議申請書が提出されたら教えて」とお願いしてくれてるらしいし、なるべく毎日、練馬区のHPもチェックしてくれるらしいので、高口議員さんのツィートは要チェックだ。先ほど挙げた池尻さんや野村さん、とやさんもツィートで教えてくれる可能性大。

もちろん、近隣住民以外の住民の人も「意見書」を出すことはできる。

ただ、そうした意見書は「まちづくり条例」に基づく意見書ではなく、事実上のお手紙・要望書の域を出ない。事業者が見解書で回答して来なかったとしても、少なくとも「まちづくり条例」上は手続き違反でもなんでもない。

ここは近隣住民の人たちが総力を結集して、史上最高の遊園地だったとしまえんのために、史上最強の意見書をバンバン事業者さんに送るしかない。

 

(10)これと並行して、練馬区長は「協議申請の書面の概要」を公表後10日以内(ここでは土日祝日は除かれている)に「ハリポタ施設の建設についての練馬区としての意見」を、必要があれば書面で公表することになっている(57条)。

でも、あくまでも「必要があれば」だ。期待はしない方がいい。

(11)事業者は近隣住民から意見書を出されたら、それに対する回答・反論の書面(見解書という)を意見書を出した近隣住民と練馬区長に提出しなければならない(58条1項2項)。

この事業者の見解書は練馬区長によって公表されることになっているから(58条3項)、誰でも意見書と見解書を通じたやり取りを見ることができる。。

(12)事業者と練馬区長が行うことになっている協議(上記(7))の期間は「まちづくり条例」では特に定められていないけれど、55条に続いて近隣住民と事業者の意見書や見解書のやり取りやその公開が定められている以上、意見書・見解書をまったく無視して事業者との協議を練馬区長が進めるとはちょっと考え難い。

もちろん、これまでの事業者と東京都・練馬区との蜜月関係を考えるとそのおそれもあるけれど、それでも

「時の練馬区長は練馬区民の意見をまったく無視して、事業者と名ばかりの協議をして、ハリポタ施設建設に突き進んだ」

という事実は残る。政治家としては悶絶死するほどの汚名だろう(こういう汚名を屁とも思わない政治屋さんも多いようだけれど)。

(13)練馬区長と事業者の協議が成立したときは、協議内容を記載した協定書を締結するになっている(59条1項)。

そして、協定書を締結できたか否かに関わらず、協議が終了したときは、練馬区長は「協議終了通知書」というのを事業者に渡して、その内容を区民にも公表するのだけれど、事業者はこの「協議終了通知書」を練馬区長から受け取った後でないと、建築基準法なんかの関係法令に関する申請や届出ができないことになっているのだ(59条3項)。

 

大急ぎでバーッと調べた内容なのでもしかしたら、小さなところに間違いがあるかもしれないけれど、とにかく重要なのは(9)だ。

説明会では時間も制限され、緊張してうまく聞けなかった疑問点や意見も書面にすることで整理できるし、ゆっくり自分の言葉で事業者に届けられる。

そして事業者はこの質問や意見には答える義務がある(もちろん、「木で鼻括ったような」回答の場合もある。)。

 

提出期間はわずか7日。練馬区のHPを毎日チェックしていても、高口議員さんがツィートで知らせてくれても、普段、文章を書くことに慣れていない人が7日間で「ハリポタ施設の建設に関する意見」を論理的に、説得的に意見書としてまとめることは不可能に近い。

今から準備しておくしかない。

だから、昨日のツィートで「意見書の準備を!」と呼びかけた次第である。

 

(追加)「としまえんの未来を考える会」というグループでは、まちづくり条例に基づく意見書以外にも、住民の意見・疑問・質問を事業者へ文書で届け、文書回答をもらう活動を行っている。

事業者に意見を届けたいならこちらのチャネルも利用すべきだ。

(説明会当日、事業者側もそうした住民の質問・意見には今後も対応する旨を回答してたらしい。黙殺はできないだろう。しかもここまで住民運動が広がりを見せている状況下ならなおさらだ。)

(追加2)「まちづくり条例」の手続きが終了すると次は「東京都紛争予防条例」の手続きが始まる。

こちらはまた池尻議員さんや高口議員さん、野村議員さん、とや議員さんがブログやツィートで情報を発信してくれるはず。チェックを!



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