つれづれなるままに弁護士(ネクスト法律事務所)

それは、普段なかなか聞けない、弁護士の本音の独り言

TODAY < TOMORROW

2020-05-04 22:40:00 | 日記
今日の7BCはお休み。

先日、ウチの近くの(と言っても車で15分くらいの距離だが)とんかつ屋さんのご主人が自ら命を絶たれた。
そのお店は、今から37年前、私が愛知の片田舎から東京に出てきて新聞配達をしながら暮らしていた商店街のはずれにある。
お店は亡くなったご主人で3代目。50年近く続いた老舗だった。
なので、もしかしたら、私も貧乏専門学生時代に一度や二度はとんかつを食べに伺っていたかもしれぬ。

緊急事態宣言発令後は東京都の要請に従って店を閉めておられたという。
遺書はなかったが、亡くなる直前は将来を悲観するような言動が多かったらしく、周囲の人たちが心配していた矢先の自死だった。

私は亡くなったご主人とは面識はないが、マラソン好きだったというご主人は年齢も私と1つしか違わない。
苦学して慶應を出た、というのも私と同じ。
そしてお店は私が最初に東京生活を踏み出した地にある。
ニュースを読んでいたたまれなくなり、せめてもの供養にと花を供えに行ってきた。
私以外にも多くの方が花を手向けておられた。


先の見えない新型コロナと緊急事態宣言。
営業自粛を(事実上)強制してくるのに、たいした補償もしてくれない行政。
日々、発生する家賃などの固定費の支払い。
家族を養っていくために夏の日差しの下の氷のように溶けていく蓄え。
3代続いた老舗を自分の代で畳まなければならないかもしれないというプレッシャーと先代、先々代への申し訳なさ。

弁護士とはいえ、私もまたスタッフを雇い、彼らと自分と、そしてその家族の生活を背負って必死に小さな事務所を経営している身だから、追い詰められたご主人が死を選んでしまった気持ちは痛いほどわかる。

痛いほどわかるけど、それでも、死んじゃだめだ。
死んで欲しくなかった。

新型コロナはいつか必ずおさまる。
緊急事態宣言は未来永劫、続くわけじゃない。
行政の対応はいつも後手後手だけど、もらえるものは全部もらって、借りれるものは片っ端から借りて、その後のことは世の中が落ち着いて客足が戻って来たらゆっくり考えればいい。
考えて考えて、頑張って頑張って、それでも借金を返せなかったら、その時はその時だ。方法はある。そのために、われわれ弁護士がいる。
人生には袋小路も行き止まりもない。
もうダメだと思っても、そこには絶対に抜け道も迂回路もある。
苦学して慶應を出て、今も42.195kmを走り抜く体力と精神力があるのに、何故、そんなことがわからなかったか。

ご主人を追い詰めたのは、後手後手の対策しか打ち出せない政府や東京都だけではない。
「感染防止」という錦の御旗のもと、「外出自粛」「営業自粛」を叫び続けて、それに従わない人たちを容赦なく糾弾してきた圧倒的多数の正義の味方たちだ。

店と家族の生活の両方を守ろうと一人で踏ん張っていたご主人の耳には、「外出自粛」「営業自粛」は自分に対する死刑判決にしか聞こえなかっただろう。
「外食を控えてください」とバカの一つ覚えのフレーズを繰り返すのではなく、「少しの間だけ外食は控える。そのかわり、緊急事態宣言が解除されたら、この店に来て、腹がはち切れるほど食べて飲んでお金を使う。国がくれるという10万円はそのために使う。必ず戻って来る。だから、それまでなんとか耐えてほしい。俺たちが絶対にお店は潰させない。」と言ってあげられなかったか。

ご主人を追い詰めた圧倒的多数の正義の味方の一人は、間違いなく私だ。
薄っぺらな正義はいつだって世の中のいちばん弱い命を踏みつけにして前に進む。

でも。
いつだったか、このブログに書いた。
しつこいと思われようと、もう一度書く。
自ら命を絶つ奴がいなくなるまで、何度でも書く。

悲観は気分、楽観は意思だ。

自らの命を絶たなければならないほどの不幸なんて人生には存在しない。
落ち込んだ気分で下を向いていたら、足元に転がってる悲惨な今日しか目に入らない。
辛いときに下を向いてため息つくのは猿でもできる。

顔を上げて前を見よう。
顎を上げて上を向こう。
今日で世界が終わるわけじゃない。
明日がある。
今日より明日。
TODAY < TOMORROW

明日は今日よりいい日になる。
絶対だ。
俺が保証する。

だから、誰も死ぬな!










最新の画像もっと見る

コメントを投稿