第2部(4)隠された「不都合な真実」 電気料金2倍、10%上げでも九電「倒産」の危機去らず
「料金改定は最後の選択肢としてきたのですが、財務状況の厳しさ、原発再稼働のスケジュールがはっきりしないことから改定の幅や実施時期について具体的な検討を始めました。当社の置かれた状況に、何とぞご理解を得られるようお願いします」
九州電力の瓜生道明社長は、10月30日の平成24年度中間決算の発表に合わせた記者会見でこう語ると、テレビカメラに向かって深々と頭を下げた。かねてささやかれてきた料金値上げはこの瞬間、既定路線として動き出した。
九電は11月末にも一般家庭用電気料金の10%値上げを経済産業省に申請する方針だ。来年4月にはほぼ間違いなく電気代は1割上がることになる。
九電の窮状を考えると、ある程度の値上げは仕方がない。中間決算の最終損失は1495億円にのぼり、通期では4千億円もの巨額損失が見込まれるからだ。
なぜ九州随一の優良企業がこのような事態に陥ったのか。理由は一つしかない。昨年3月の福島第1原発事故後、民主党政権の菅直人前首相と野田佳彦首相が2代続けて原発再稼働の政治決断を先送りしたばかりに、九電の玄海、川内両原発の計6基が昨年12月からすべて停止してしまったからだ。
発電原価25%アップ
電力会社の収益構造は極めてシンプルだ。家庭用電気料金は総括原価方式で決めることが法律で定められており、燃料費や人件費など発電コストに一定の利益を上乗せして算出される。
九電が原発により発電コストを下げ続け、北陸電力に次いで全国で2番目に安い電気料金を実現したのは平成20年9月。この時の発電原価は、電力1キロワット時当たり14.68円だった。
これが原発が次々と停止していった23年度は18.38円と25%も上昇した。原油や液化天然ガス(LNG)の高騰により火力発電用の燃料費は5202億円、他の電力会社に融通してもらった電力の購入費は2060億円に上る。停止したままの原発の維持費や、フル稼働させている火力発電所の施設修繕費などもかさむ。いくらボーナスカットなどで人件費や経費を削ったり、不動産などの資産を売却しても、とても追いつく数字ではない。
全原発が停止したままの24年度の発電原価はこれを上回るのは確実。単純計算すると、九電の経営をギリギリで維持するには2割以上の値上げは避けられない。それを無理やり10%に抑えたわけだが、今後も原発を1基も再稼働できない状態が続けば、九電は26年度の早い時期に債務超過、つまり「倒産状態」に陥る。そうなると資金調達コストはますますかさみ、電気料金はさらに跳ね上がることになる。
「原発ゼロ」リスク
わずかでも危険性があるならば原発は全廃すべきだ-。こんな論理がまかり通る裏側で、隠されている「不都合な真実」がある。
支持率低迷にあえぐ野田首相は9月、「脱原発」による支持率回復を狙い、2030年代の原発ゼロシナリオ「革新的エネルギー・環境戦略」をあわや閣議決定しそうになった。
実はこの動きに伴って、9月4日の政府のエネルギー・環境戦略会議に提出された経済産業相名の資料「エネルギー・環境戦略策定に当たっての検討事項について」には重大な事実が記されている。
「原発ゼロを完全に実施するならば、家庭の電気料金は平成22年の平均月9900円から最大で2万712円に跳ね上がる」という試算である。にもかかわらず、政府は「原発ゼロ=電気料金2倍」という不都合な真実を積極的に説明しようとはしない。
算出根拠示せず
しかもゼロシナリオの試算はあまりにも不確定要素が多い。火力や太陽光、風力など電源ごとの発電コストを算出し、再生可能エネルギーを原発に置き換えるとしているが、算出根拠ははっきりしない。
例えば、脱原発の主役として期待される風力発電の場合、1キロワット時当たりの発電コストは8.6円~23.1円と弾く。量産効果により8.6円を達成できれば、原発の8.9円に比肩しうる水準だが、風力発電に欠かせない数兆円規模の送電線整備費用などは一切含まれていない。
加えて原油やLNGを安価で大量購入できる保証はない。原油などの国際市場は「生き馬の目を抜く」世界だ。もし日本が原発を失えば、中東をはじめ石油産出国に対する価格交渉力は著しく低下する。現状でも瓜生氏が「完全に足元を見られている」と嘆くほど高値をふっかけられているが、原発ゼロとなるとさらに価格をつり上げられる公算が大きい。
不安定要素はまだある。ペルシャ湾-インド洋-マラッカ海峡を結ぶシーレーンは周辺に政情不安定な国が多く安全保障上のリスクは絶えない。これに伴い、石油備蓄や資源権益確保などエネルギーセキュリティーにも莫大(ばくだい)なコストがかかるが、これらも試算から除かれている。
そう考えると電気料金の値上げは2倍で済まない。おそらく大手製造業は生産拠点の大半を国外に移し、中小企業は死滅するだろう。失業者であふれる「真空化社会」で「原発ゼロを達成できた」と喜ぶ人が一体何人いるのだろうか。
気になるのは、
TVコマーシャルなのですが、オール電化の宣伝を関西電力のグループ会社である関電不動産(株)名でCMをしている事です。
憶測すると、利益が少なくなり社員のボーナスも自粛。
出資者にはいい顔をしなければならず、売り上げ増進には家庭のオール電化を増やし、電気代の収入を増やさなくてはならない。
一方、TV局のマスコミは反原発の報道ばかり流されて困っている。
しかし、CM料を払って宣伝をしてあげないと益々、反原発の報道の手を緩めない。
マスコミ対策には、少しでもCM料を払ってガス抜きをしてTV局の圧力を緩めさせる必要に迫られる。
結果、別の子会社名でCMを流さなければならない苦しい立場に追い込まれる。
なんだか暴力団のコメカミ料と似ていませんか?
やはり政府が「見ザル 聞かザル 言わザル」で逃げているからでしょうね。
まあ、総理のお手当にはなんの責任関係も発生しませんからね。